また、『劒岳 点の記』では、少子高齢化が進む中で、中高年をターゲットにした映画作りに挑戦した。
「うちはF1(女性20~34歳)、F2(女性35~49歳)層には強いのですが、F3(女性50歳以上)になると、民放でビリ。だから、この作品は、フジテレビが一番苦手なターゲットに挑戦した映画なんです」
生誕100年を迎えた太宰治原作の『ヴィヨンの妻 ~桜桃とタンポポ~』では、キャスティングに工夫を凝らした。
『ヴィヨンの妻~桜桃とタンポポ~』 監督:根岸吉太郎/出演:松たか子、浅野忠信/配給:東宝/全国東宝系にて公開中 (C) 2009 フジテレビジョン パパドゥ 新潮社 日本映画衛星放送 |
「『ヴィヨンの妻』はどちらかというと、フジテレビが手を出すような映画ではないんですね。だったら、キャスティングは全部“This is フジテレビ”といったノリにしようと。太宰治の世界観を、月9の出演者と言ってもいいようなキャストで映画化したらどうなるか? それも1つのチャレンジでした」
とはいえ、意欲的な試みゆえの代償もある。『アマルフィ』や『劒岳』のように大ヒット作品もあるものの、興行収入だけを見れば、今年はこれまでのような成績を残せそうにないからだ。その代わりに、強力作が揃っているのが来年のラインナップ。人気ドラマを前後編に渡って映画化する『のだめカンタービレ 最終楽章』、『踊る大捜査線』の第3弾、前作『LIMIT OF LOVE 海猿』が興収71.5億円を記録した『海猿』シリーズ第3弾と、フジテレビの年間興行記録を塗り替えそうな作品が揃っている。
「今年は種まきをしているところなので、当たるも八卦、当たらぬも八卦みたいなところもあって、苦しいことは苦しい。でも、だからと言って、来年は楽をしましょうというわけではなく、ラインナップを組んでいたらこうなった(笑)。もちろん、過去の実績からヒットすると信じていますが、シリーズ映画の続編と言うこともあり、寝た子を起こさないといけない。決して楽ではないですよ」
そう気を引き締める亀山氏は、一方で、今年のラインナップには将来性を感じているとも話す。
「少しでも芽が出たら、その手があったのかと思うし、今、興収15億円の作品でも、次にこの路線でトライすれば25億円は取れるという手応えを感じています。そうした作品がちょろちょろあったのが収穫。それを、これから作る映画に反映させていきたいですね」