とはいえ、実際に動き出すためには、幾多ものハードルが待ち受けているのが映画界の常識だ。ましてや、今度の相手はハリウッド。契約書が何十センチも積み重なるという噂は、よく耳にする。
『サイドウェイズ』 監督:チェリン・グラック/出演:小日向文世、生瀬勝久、菊地凛子、鈴木京香/配給:20世紀フォックス/10月31日より全国公開 (C) 2009 Twentieth Century Fox and Fuji Television |
「正直、僕らも『サイドウェイ』をやらせてくださいと申し出た段階で、弁護士が間に入って、遅々として進まないケースを想定していました。ですが、元々の話がスタジオのトップクラスからだったので、直接、本社の責任者と話し、彼が原作のプロデューサーにも連絡してくれ、今回は、驚くほど、すんなりと話が進みました」
ゴーサインが出た後で、煮詰めていかなくてはならないのが物語だ。『サイドウェイズ』のような作品では、オリジナルにどれくらい近づき、どれくらい距離を取るかもポイントとなる。
「最初は、日本を舞台に、ワインツアーの代わりに焼酎ツアーにしようかと(笑)。でも、それだとオリジナルから離れすぎてしまうし、ワクワク感がない。だったら、オリジナルの設定をそのまま借りて、日本人4人が米国のナパバレーに行く話にしようと。普通なら、そうした変更に関して、いろいろと言われてもおかしくないところですが、今回は、直接スタジオ側の責任者と話ができていたおかげで、『日本人向けに作るのであれば、君たちが正しいと思った内容で構わない』と言われ、自由にやらせてもらえました」
キャスティングでも、最初は集客を意識し、オリジナルと違って二枚目を主人公にすることを考えた。
「やっぱり、40代で二枚目のキャストにしないと、お客さんが来ないんじゃないかと思って。でも、それで物語を作っていっても面白くないんですね。ショボくれてる主人公の現状設定に理由が必要になってくる。それじゃあ、『サイドウェイ』じゃないだろうと。なので考え方を変え、オリジナルに近い、情けない雰囲気を持った2人に戻したんです。それまでに、脚本を5~6回は書き換えていましたが、情けない男と決めた瞬間から脚本がブレずに作れるようになりました。色男でなくしたことで、オリジナルの持っていた良さを、どんどん盛り込めるようになったんです」
フジテレビの海外戦略
そんな『サイドウェイズ』のメガホンを取ったのは、米国人の父と日系米国人の母をもつチェリン・グラック監督だ。実は今年のフジテレビ映画では、『サイドウェイズ』以外にも、2月公開の『ヘブンズ・ドア』でマイケル・アリアス監督、6月公開の『アイ・カム・ウィズ・ザ・レイン』 でトラン・アン・ユン監督と、外国人監督が目立っている。