──21世紀の子どもたちに見せるアトムにするために、いろいろとアレンジが加わっていると思いますが、悩まれたことがあったら教えてください。
監督:今回は、アトムの年齢が12~13歳と、みなさんが知っているアトムよりも、ちょっと高い設定になっています。というのも、このくらいの年齢は、自分のアイデンティティや居場所を探し始めたり、将来何をやりたいのかを考え始める年頃だと思うんですね。8~9歳だと、そうはいかないので、少し年齢を上にしたのですが、その分、デザイン的に苦労しました。今、手塚さんも仰ったように、日本人が知っているアトムの「カワイイ」ところをキープしつつ、どうやって年齢を少しあげたらいいのか? そこが苦労したところです。
手塚:逆に、アトムの機能面では、胸がパカッと開くなど、原作マンガにすごく合わせてくれています。一番驚いたのは、お尻からマシンガンが出てくるところ。昔のアトムの懐かしい場面なんですけど、まさかそれをやるとは思っていなかったので、逆に大丈夫ですかと心配になるくらい。
──映画化に際して、アトムのイメージを守るために、どんな手段を講じたのでしょう?
手塚:契約の段階でイマジ社とは「キャラクターのデザイン」と「ストーリー」に関して、必ず手塚プロが監修をし、そのOKをもとに進めるという条項を設けました。それをもとに、彼らが作ってきたものを見て、最低限ここはおかしい、ここは日本のお客様は納得しないというところだけを返すようにしたんです。それ以外のところはフレキシブルに考え、柔軟性をもって彼らのアイデアを受け止めようと。
監督:すごく、いい関係を築けたと思っています。なぜなら、私たちが同じものを求めていたから。それが何かというと、世界中で受け入れられる最高のアトム映画を作るということでした。
──これだけ長きに渡ってアトムが、世界中から愛されている理由はどこにあると思いますか?
監督:まずはキャラクターの素晴らしさ。また、原作マンガが文学に匹敵することも大きいでしょう。シェイクスピアと同じなんです。だからこそ読者が、キャラクターやストーリーを好きになってくれ、これだけの長い間、いろいろな国で愛されてきたのではないでしょうか。
手塚:監督の仰るとおりで、まずはストーリーが普遍的で、いつの時代に読んでも面白いことですね。それとキャラクターの魅力。アトムはロボットなのでスーパーパワーを持っていますが、見た目はピュアな子どもの格好をしています。誰にでも愛されるような格好をしていながら、それだけの力を持っていることも人気の秘密ではないでしょうか。