是枝:映画を愛しているかどうかは分からないですね(笑)、映画の現場は好きですけど。ただ、「映画って何だろう」という関心は強く持っていて、いつも撮りながら、「映画ってこういうことなんだろうか?」「こういうことが可能なんだろうか?」と問いかけ続けています。それを愛と呼ぶならば愛なんでしょうけど。
──この作品の見どころについて教えてください。
ARATA:セリフにならない「行間」が、すごく多い作品。その間(ま)が、この作品をより深くしています。見た人たちには、そんな間を、それぞれで埋めてもらえるといいな、と。見終わった後には必ず、心を潤す何かを感じてもらえると思います。
是枝:見どころはいろいろあるんですけど……岩松了さんが演じるレンタルビデオ店店長のイヤらしいところとか(笑)。
ペ・ドゥナさんという韓国の女優さんが演じる人形が主人公なんですけど、自分の中に孤独だったり空虚さだったりを感じている人々を描いた作品です。初めて正面からラブストーリーを描いてみました。……泣けます(笑)。ただ悲しいだけではなくて、見終わると、清々しさも含めた複雑な感情がわき上がるんじゃないかと思います。
(C)2009業田良家 / 小学館 / 『空気人形』製作委員会 写真 瀧本幹也 |
『空気人形』
●2009年9月26日よりシネマライズほかにて全国順次公開
[監督・脚本・編集]是枝裕和
[原作]業田良家
[出演]ペ・ドゥナ、ARATA、板尾創路、高橋昌也、余貴美子、岩松了、星野真里、丸山智己、奈良木未羽、柄本佑、寺島進、オダギリジョー、富司純子
[DATA]2009年/日本/アスミック・エース/116分/R-15
[見どころ]
『誰も知らない』『歩いても 歩いても』など心に染み入る作品を作ってきた是枝裕和監督が、業田良家の短編コミック「ゴーダ哲学堂 空気人形」を映画化。心を持ってしまった「空気人形」という難しい役に挑戦したのは、韓国の人気女優ペ・ドゥナ。持ち前のとらえどころのないチャーミングさを活かした演技が、動き出した「空気人形」をリアルに感じさせる。ARATA、板尾創路、オダギリジョーら個性派俳優たちが脇を固める。2009年カンヌ国際映画祭「ある視点」部門正式出品作。