人口が減り、少子高齢化が進む日本。映画人口もこれから、徐々に減っていくと目されている。現状を見る限り、映画界の未来は決して明るいとは言い切れない状態だ。そうした中、太田氏が掲げるテーマが“映画ファンの創造”。これを実現させるためには2つの使命を果たす必要があると話す。
『南極料理人』 テアトル新宿ほかにて全国公開中(C)2009 『南極料理人』製作委員会 |
「1つは、現状の映画ファンを引きつけて止まないような企画を送り続けることです。推計になりますが、映画人口は約3000万人。そのうち、シネフィルと呼ばれるようなコアな映画ファンは約1000万人と考えています。つまり、コアな映画ファン1000万人と、たまに映画を見に行く2000万人で支えられているのが映画界の構造なんですね。我々としては、この1000万人の映画ファンを確実に維持できるような編成戦略をしていきたいと考えています。
スタッフにはよく、作品の連続性、企画の連続性という話をするのですが、映画の場合、今、見ている人が、実は次の顧客に一番近い顧客なんです。そこで重要になってくるのが予告編戦略や、一貫性のある作品選び。同じ観客に何回もリピートしていただき、映画館のファンを増やしていくわけです。また、時には特集上映などを開催し、過去の名作に触れてもらう機会を作って、ファンを開拓していくことも大切です」
2つ目の使命として上げたのが“作家の創造”だ。
「作家性の高い作品は、多少数字が悪くても、続けて後押ししていきたいと思っています。映画作家をきちんと育成できる構造がないと、映画ファンも育っていかなくなってしまいますから」
では今後、単館映画や、それに関わる企業は生き残っていけるのであろうか?
「観客は今、作品の質で選ぶようになってきているので、どんなに宣伝費をかけても、面白そうだと思わない作品には足を運ばなくなってきている。つまり、映画のヒットは宣伝の量で決まるのではなく、作品の質と、その質をしっかりと伝える宣伝にかかっているわけです。そういう良質な作品を配給したり製作している会社は、この先も、生き残っていくと思いますよ」
(文:安部偲 MOVIE Collection[ムビコレ])