だからといって、日活との提携によりスクリーン数が増えた今、以前と同じように、同じ映画を東京の2?3館で上映することは考えていない。もっと大事なことを見つけたからだ。

 「編成スタッフには原点に帰れと言っています。我々の強みはやはり、単館系で丁寧に映画を売っていくこと。2館も3館も開けるから、いい映画をかけてくださいという考えではなく、例えば渋谷が他社の映画館、新宿がテアトル新宿という公開スタイルでも構わない。大事なのはそのときに、テアトル新宿の集客力が、他社の映画館に負けないことなんです」

インディペンデント系洋画が復活の兆し

 映画館にはそれぞれ、培ってきたカラーがある。テアトルの都内3館で言えば、銀座テアトルシネマはヨーロッパのアート系映画を中心に上映し、対象はシニア層。シネセゾン渋谷はF1層(20~34歳の女性)をターゲットにした作品。テアトル新宿なら邦画といった具合だ。単館拡大が主流となり、映画界全体が規模拡大に走る中、太田氏は原点に帰り、映画館1つひとつが持つ潜在的な力を高めることで、インディペンデントとしての力を発揮していこうと考えている。実際、最近になって単館系の洋画市場には、ある変化が訪れていると言う。

 「洋画がダメと言われる中で、しぶとく当てている映画が出始めているんです。銀座テアトルシネマで今年5月に公開となった『夏時間の庭』や、7月公開の『湖のほとりで』がそうですね。共通しているのは、あまり公開規模を広げていない点。いわゆる単館拡大という方法をとっていないんです」

『湖のほとりで』
銀座テアトルシネマほかにて全国公開中(C)2007 INDIGO FILMS

 『夏時間の庭』はフランス映画、『湖のほとりで』はイタリア映画だ。共に1館あたりの数字が3000万円を超える成績。150席規模の劇場でこの数字は、中々出せるものではない。「こうした傾向が出始めたのは、去年くらいから」と太田氏。「特に有楽町・銀座地区は、シニア層を対象にした映画館であることからこの傾向が強く、平日も足を運んでくれるのが強みです」。

 また、インディペンデント系の邦画にも変化が見られる。

 「ここ数年、邦画は、宣伝費を5000~6000万円つぎ込み、単館拡大していく作品が増えています。ですが、そうした映画が当たらないことがわかってきたので、最近では規模をもう少し限定しようという考え方が出てきています。先ほどお話しした洋画同様、今後は邦画でも公開規模を限定し、まずはメイン館でじっくりと数字を稼ぎ、あとからオファーを待つ方法で成績を残す作品が増えていくと思っています」

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