テアトルの狙いの1つは、興行のシェア拡大だ。テアトルの映画館は全9館中、大阪にあるテアトル梅田を除くと、すべて関東圏にある。これに対し日活は、5館中3館が、梅田、神戸、博多と地方にある。

 「とりわけ関西地区は、シネリーブル梅田とシネリーブル神戸があるので強くなるなと思いました。関西地区が強くなれば、うちの番組編成力も強くなります。また、同時に配給事業の基盤を築きたいとの思いもありました。興行のシェアが拡大すれば、うちの配給部門にとってもメリットとなる。相乗効果を期待できるわけです。実際、関西地区の映画館もブッキングできるようになったことで、配給のオファーはすごく増えています」

 ここで簡単に「配給」について補足しておこう。「戦時中でもないのに、なぜ配給?」と思っている方もいるかもしれない。一般に映画配給会社の仕事は、映画を仕入れて(買付)、それを映画館に卸す(貸出)ことが中心だ。もちろん、映画をヒットさせるための(宣伝)も大切な仕事に含まれる。こう書くと、とてもシンプルな構図だが、実際には観客を呼べる上質な作品を確保するために、1つでも多くの映画館をブッキングする力が配給会社に求められる。

 話を戻そう。テアトルもかつて、“観客を呼べる”作品を求めて勝負に出たことがあった。それはシネコンが増加し、単館拡大という公開方法が登場した頃の話だ。

『色即ぜねれいしょん』
シネセゾン渋谷ほかにて全国公開中(C)2009『色即ぜねれいしょんズ』

 「単館拡大が増えると、ある規模のスクリーン数を確保していない限り、自社の映画館で上質な作品をかけられなくなるのではという危機感があった。それゆえに、当時番組編成を担当していたスタッフが、銀座、渋谷、新宿という都内3館を用意するので、代わりにいい作品をかけてくださいという戦略に打って出たんです。ところが、これがすべて失敗に終わり、多大な損失が出た」

 失敗の原因は作品力にあった。膨大な作品群の中で埋没しないためには、多額の宣伝費をかけられる映画、すなわち、メジャー系が大事だと考え、メジャーに話を持って行ったのだ。だが、現実は甘くなく、メジャーから出てきたのは、メジャーにとってはAロード(大規模作品)ではない作品であった。

 「ただ、これは正しい失敗だったと僕は思っています。作品が量産され、スクリーン数が増える中で、あの時点では正しい選択でした。今も我々としては、興行網を増やすことが競合に負けないためにも重要だと考えています」

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