『20世紀少年』の企画が進行していたのは、ちょうどこの時期だ。「大きく当たる作品と、手堅く成功する作品がうまく回り始めた頃で、その大きな作品の第1弾が『20世紀少年』でした」と奥田氏。だが、大作ゆえに、超えなければならないハードルも数多かった。
「まずは、僕らが3部作にしたいと言っても、会社がOKしなければ始まらない。そこで、社内の映画決定機関をクリアすることが必要だったし、ほかにも、どういう体制で作っていくのか? 配給はどうするのか? 公開の時期はどうするのか? どんな脚本にし、監督は誰で、製作プロダクションをどこにお願いするかなど、やらなければいけないことは山ほどありました」
『カイジ 人生逆転ゲーム』 監督:佐藤東弥/出演:藤原竜也/配給:東宝/10月10日より全国東宝系にて公開(C)福本伸行・講談社/2009「カイジ」製作委員会 |
最終的に監督が堤幸彦氏、製作プロダクションがシネバザールとオフィスクレッシェンドの2社に決まったのは2006年のことだ。さらにキャスティングが、原作のイメージに近い人というコンセプトのもとに進められていく。このキャスティングで、最後まで残ったのがカンナ役だった。
「カンナ役はオーディションで選んだのですが、本当にガチンコで。最終的に決まったのが平愛梨さん。僕も審査員をしていたから、よく覚えているけど、彼女は長い髪を切って、原作のまんまのスタイルでやってきたんです。このオーディションに受からなかったら芸能界を辞めようと決意していたんですね。その思いや、『カンナ役を全身全霊をかけて演じたい』という強い気持ちが、審査員みんなにひしひしと伝わってきました。一緒に審査員をしていた(原作の)浦沢直樹さんは、彼女がオーディション会場に入ってきた瞬間「カンナが来た!」と思ったそうです。演技がうまい人ならほかにもいたけど、彼女がカンナ役に真っ直ぐに挑んでくるのを見て、彼女しかいないというのが、全員一致の見解でした」
失敗から学び、
人の輪を築き上げて成功をつかむ
こうして誕生した『20世紀少年』が大ヒットしたのは、前述の通り。だが、ここ数年の日本テレビは、NOMO企画以降の自社幹事作品が功を奏してか、『20世紀少年』のみならず、他の実写映画でも絶好調だ。
まずは興収32.3億円を上げた『ALWAYS 三丁目の夕日』と、45.6億円で2007年公開の邦画3位を記録した『ALWAYS 続・三丁目の夕日』。『デスノート』も、『前編』が28.5億円、後編の『the Last name』が52億円と大ヒット。スピンオフ(番外編)として作られた『L change the WorLd』も31億円を記録するなど、メガヒットを連発している。興収10億円がヒットの目安、20億円で大ヒットといわれる全国公開映画の中で、この成績は見事の一言。今年も『ヤッターマン』や『ごくせん THE MOVIE』など、すでに3作品が興収30億円を超えている。こうしたヒット作を生み出す秘訣として、奥田氏が口にしたのが「人の輪」の大切さだ。