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米原タンク殺人 「交際トラブル」検察側/「殺害動機ない」弁護側

延べ16人証人尋問へ

証言台の前に立ち、無罪を主張する森田繁成被告(右端)=イラスト・岡地浩
傍聴席の抽選券を求めて列を作る人たち(4日午前、地裁で)

 米原市の汚泥タンクで昨年6月、長浜市今川町の会社員小川典子さん(当時28歳)が殺害された事件で、地裁で4日に開かれた裁判員裁判の初公判。殺人罪に問われた米原市坂口、会社員森田繁成被告(41)は犯行を否認して全面的に争う姿勢を見せ、検察側は証人尋問を基に状況証拠を積み重ね、犯行を立証していく方針を明確にした。

■開  廷

 午前10時、森田被告が黒のスーツに青いネクタイ姿で出廷。緊張した表情の裁判員6人と補充裁判員4人が続いた。

 罪状認否で、坪井祐子裁判長の「公訴事実で、間違っているところはありますか」という問いかけに、森田被告は「公訴事実は違います。私は小川典子さんを殺していません」と否定した。

■冒頭陳述

 検察側は立証のポイントとして、2人の交際トラブルや森田被告の車の血痕、被告の車によく似た車両に関する目撃証言など、状況証拠を次々と挙げ、「犯人だからこそ、としか考えられないウソを捜査段階などについた」とも指摘した。

 これに対して、弁護側は「事件前、仕事のいざこざで不安定になっていた小川さんを、森田さんは励ました。殺害の動機がない」などと主張。裁判員らに向かって「森田さんを犯人とする証拠はありません。森田さんは無罪です」と訴えた。

 続いて、公判前整理手続きの結果がモニターに映し出され、坪井裁判長は「小川さんの殺害手段に争いはなく、争点は犯人が被告人かどうか」と説明。今後の審理日程について、被告の家族や会社の同僚ら延べ16人の証人の尋問と、4回の被告人質問なども示した。

■証人尋問

 午後からは、小川さんの遺体の司法解剖を行った医師の証人尋問が行われた。

 これに先立ち、小川さんの遺体の写真が裁判員らに示されると、女性裁判員の一人はじっと見つめた後、両目をしばらくの間、ぐっと強く閉じた。

 医師は、小川さんが殴られた回数を検察官から問われ、「頭は20回以上、(防ごうとした)左右の手(の傷)を含めると30回以上」と証言。遺体の状況から、小川さんが現場近くの草むら付近で殴られた後、タンクまで引きずられたと推察される、と明らかにした。

 午後4時6分、坪井裁判長が「それでは、今日の審理を終わります」と述べ、この日の公判が終わった。

 5日は、森田被告の家族や小川さんの遺族の証人尋問などが行われる。

■検察側冒頭陳述

 長浜市の工場で検査監督だった被告と、派遣社員として勤めていた被害者との間に起きた交際トラブルが事件の原因となった。

 2人は2007年頃までに交際を始めたが、被害者は09年6月頃には被告の“浮気”を疑うようになり、同月10日午前の被告の電話で、別の女性と会うため自分の居所を確認していると思って激怒。同日夜にJR高月駅(長浜市)で被害者に会った被告は、被害者をなだめようとしたが、何かのきっかけで怒りを爆発させ、強い殺意を抱きかねない状況になった。

 被告が犯人であることについて、以下の五つの事実で立証する。

 〈1〉2人は交際トラブルを抱えていた〈2〉被害者は殺害された時間帯に被告と会って以降、生存が確認されていない〈3〉被告の車に被害者の血痕が付着し、殺害現場近くで似た車両が目撃されている〈4〉携帯電話のメールデータをすべて削除し、被害者の血痕がついた車のマットを自宅に隠すなどした〈5〉「被害者ともめたことはなかった」と捜査段階で述べるなど、犯人としか考えられないうそをついた――。

■弁護側冒頭陳述

 被告は同じ工場で働く被害者と交際していたが、昨年5月下旬頃から、仕事上の問題を抱える被害者が被告に、感情をぶつけては仲直りするということが多くなった。

 被告は昨年6月10日、JR高月駅近くで被害者を見かけて車に乗せたが、被害者は急に運転席に座り直した後、一人で車で走り去った。車はその後、被告の元に戻ったが、被害者とは連絡が取れなくなり、被告は12日になって被害者が亡くなったことを知った。

 被告は被害者を殺害しておらず、無罪を主張する。被告が犯人ではないとする根拠は3点ある。

 〈1〉被告には被害者を殺す動機がない〈2〉被告は返り血を浴びていない。被害者とやり取りしたメールのデータを記録した携帯電話用のSDカードや、事件当日に着ていた衣服なども捨てていない。犯人であるとしたら、これらの事実はつじつまが合わない〈3〉(検察側が証拠としている)車内の血痕は、事件前に付着したもので、犯人とする決め手はない――。

2010年11月5日  読売新聞)
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