東大医科研、がんワクチン、そして朝日新聞

 スタンス 2010.11.6 22:00:00

 がん医療の時事問題

 健康/美容 » 医療


「東大医科研 がんワクチン 臨床試験で出血伝えず」の、朝日新聞記事を評価しています

朝日新聞の一連の記事は、幾つもの問題提議を行っています。考えさせられるものばかりだと思います。

朝日の取材が始まって以来、東大医科研内とか、其の関係者、或いは厚生労働省などが「あわただしく動きながら、その対策」を施しています。今は、朝日新聞の記事を、全面的に否定することに焦点を置いて、幅広い社会の各層からの関係者が、「横の連携」も取っているのでしょうか、寄って集って、あれやこれやの動きを行っています。その批判、非難の活動には、「患者のため、臨床試験のため、名誉のため」等の大義が掲げられていますが、少々異様なものを感じます。

東京大学医科学研究所長、同付属病院院長が、連名で、「2010年10月15日付朝日新聞に掲載された『臨床試験中のがん治療ワクチン』に関する記事について ~患者さまへのご説明~」(以下「声明」)と題する声明文を発表しました。所長の清水元治氏を初めとする医科研の方々、共同臨床試験施設の皆さん、更にはがん患者団体関係者も、患者自身も、色々とその見解を発表しています。そのほとんどが、朝日記事への批判、バッシングの類のものです。中には、見苦しい、聞き苦しいという類の「見解」も紛れ込んでいます。

2010/10/29には、Captivation Network臨床共同研究施設が、医科研からの「ペプチド供給」や「お金支援」を断たれると研究できなくなる「共同研究者」、その中にいるかもしれない「朝日新聞への協力者探し」を行い、その結果の「潔白心証」をもって「記事」の「ねつ造」推定をして、「抗議文」への署名活動を行い、当日抗議文を提出する、という事態に至っています。名誉棄損とか虚偽報道とかでの、告訴も取りざたしているようです。11/4、医科研が、弁護士を代理に「抗議と謝罪要求」を提出しました。

株式市場でも小波乱が起きています。オンコセラピー・サイエンス社の株価がストップ安を付けたり、投資家の掲示板では、あれやこれやの書き込み合戦が、今なお続けられています。

朝日記事に対する批判の大半に疑念を持っています。異常な盛り上がりと、医療関係者のマスコミ批判の激しさには、異様なものを感じています。

この中で、記事を積極的に評価している者としての見解をまとめてみます。記事は、ある側面では、全く突っ込み不足になっています。朝日新聞、取材記者には、さらに問題を掘り下げていただきたいとさえ思っています。

① 医科研は、がんペプチドワクチン療法の開発を、早い段階から株式投機の世界に投げ込んでいます。

記事は、その金額(約38億円)も示さず持ち株数(21,750株)の「一言」だけの言及に留めるという「抑制的」な姿勢で、中村祐輔氏の私的な経済的利害の関係性に触れています。しかし事態はそれほど軽微なものではありません。産官学連携という背景のもと、関係者の皆さんは、がんペプチドワクチンの研究開発を、マネー・ゲーム、投機の世界に投げ込んでいます。治療薬の効果的な実用化手段論等でもって、主観性、私利性をいくら否定しようとも、その研究開発者が、株式投機の世界から、強い影響を受ける構図を作り上げています。投機の世界の住人にもなり、其の世界から研究開発を行っている臨床試験者の存在も視野に入れなければならないのです。

がんペプチドワクチン療法は、絶対に成功させなければならない、という経済的な圧力下にあることを、念頭に置かなくてはならないのです。すでにオンコセラピー社が設立(2001/4)されてから、10年が経過しています。長期の開発期間を要するという商品化特性を考慮しても、10年という期間から来る圧力には強いものがあるはずです。上場初値700,000~800,000、現在は175,000前後。この間に投資者、投機者は、フラストレーションをため続けているようです。経営者が、攻撃の標的にされるという状況も出てきている様です。関心を持って観察されている関係者もおられることと思います。

インサイダー情報の類ではないと思われますが、医科研職員の方が、この11月には、オンコセラピー社だと思われます、治験中のペプチドワクチン療法(OTS102 ?)について、「中間解析の結果」を発表すると伝えています。しかし、未だ「中間」なわけです。市場は、既に流布されていたであろうこの情報には反応していないようですが、疲れているのでしょうか。手ぐすね引いて待っているのかもしれません。

がんペプチドワクチンは未だ商品化されていないにかかわらず、「大学発ベンチャー…で、東京大学全体で最も成功した事例といわれています」と、紹介する医科研職員もおられます。医科研内では、あるいは東大内では、かかる評価がなされているのでしょう。考えてみれば奇妙な評価のように思われます。出資の点からみれば、どうも「東大が出資したベンチャー」ではないようなのです。東大発ベンチャーという認識は、どこから来ているのでしょうか。その根拠はあるはずで、その実態は何でしょうか。しかも、何を以て「成功」と評価しているのでしょうか。上場でしょうか、株価でしょうか、商品化に成功していないにかかわらず好業績のためでしょうか。「ペプチドワクチンの事業化の成功のため」でないことだけは確かなのです。

出資者が、個人名義の東大ではなく、「私」そのものの個人であり、株式に関する利益が、全て当該個人のものに所属している不可解さ、にも関心が集まっています。関係者の株式取得資金の問題もあります。更に東大医研は共同臨床研究施設に対して、ペプチド供給を行っているとしています。そのペプチドはどこから来ているのか。オンコセラピー サイエンス社と東大医科研なり附属病院との「商取引」がどうなっているか。両者間の人的結合関係、東大ノウハウのオンコ社への流出の有無など、経済的・経営的視点からの分析は、欠かすことができません。

オンコ社は、「社外の協力者」と表現していますが、その「協力者」にストック・オプションを与えたり、無償で新株引受権を付与したりして、手厚いもてなしをしています。「社外協力者」が医科研内にもいることでしょう。ともかく、がんペプチドワクチン療法の開発、臨床試験は、経済的利害からの影響を考慮することなく、見守ることはできないのです。

② 記事の批判には欠陥が目立ちます。

関係者による朝日新聞記事の「ねつ造」「事実誤認」「誤り」などの非難・批判には、具体性なく、問題のすり替えとか、牽強付会的な解釈、更には「聞き苦しい、見苦しい」傍系的な論評までも紛れ込ませるなど、多数の非論理的指摘を列挙しているきらいがあります。

朝日新聞の反論、「記事は確かに取材に基づくものです」を崩すことはとてもできていません。

「厳密」に読めば「そのようには記載されていない」にもかかわらず、だから、「当時の」「政府倫理指針」における「厳密に定義された義務」に違反している「かのような」記事になっているとして、しかし、「事実誤認」として(にすり替えて)、声高に批判していることには、違和感を覚えます。

当時の「ヘルシンキ宣言 人間を対象とする医学研究の倫理的原則」ではなく、当時の政府倫理指針で、知の一つの本山でもある東京大学、医科学研究所が、「自己防衛」をしても、社会的な共感、了解を集めるには、限界があると思います。

「臨床研究」でさえ、被験者患者に対する『先端的な治療法』であるかのように「伝えている」節のある人達が、臨床研究さえ、「将来の患者」ではなく、現に被験者になっている自分への「先端的な治療」であって欲しいと願う患者の「戸惑い」を引き合いに出しています。患者の為に「臨床試験」を行っている、患者を混乱に陥れている、臨床試験にダメージを与えている、と主張しても、それほどの説得力があるようには思えません。

③ 「医科研の全部の臨床試験の中止」という、最も重要な問題への言及が皆無である、という異常性があります。

報告義務への「違反」問題以上の重要性を持っていると考え手います。「医科研は、臨床試験をすべて中止した」という、記事の内容に対しては、関係者すべてが「意図的に無視」しているかのように、触れるところがありません。皆無なのです。朝日の記事自体も、この点を前面には押し出していません。

記事は、批判者が主張する「報告義務違反」と同じ、或いは「アウシュビッツ」と同じような「印象」を与える構図をとっています。すなわち、「出血」が「あたかも」「すべての臨床試験中止の原因」であるかのように記しているのです。それにもかかわらず、「すべての臨床試験中止」の記事を、「誤り」「虚偽」「ねつ造」と、批判したり、非難したりする、人達、組織は、全く見当たりません。これでは、「出血が原因」で東大医科研は、すべての臨床試験を中止したことに「なってしまいます」。

しっかりとした根拠はあるのだろうと思いますが、医科研は「中止」したに係わらず、和歌山医大では、試験を継続していると「声明」は伝えています。この「違い」は、気になるところです。和歌山医大の対象がん種は、医科研・中村祐輔研究室がHPで公開している「がんペプチドワクチン療法臨床研究実施施設リスト」(2010/07/01作成)からすれば、「腎がん」あるいは「食道がん」を対象としているかのようです。「膵がん」の研究施設として掲載していません。しかし、オンコセラピー社からの受託試験機関という立場で、膵がんのOTS102をかった臨床試験を行っています。和歌山医大は、継続判断、東大医科研は、朝日新聞が明るみに出した通りなら、「中止」判断。情報共有化されていたならば、このようなことになったのでしょうか。

ともあれ、共同臨床研究施設さえ、医科研病院は「すべての臨床試験を中止した」ことに、いかなる関心を示しているのか不明です。異常なことと思われます。患者会の有志の人たちでさえ問題視している様子がありません。

記事のメインテーマの一つは、この問題ではないのでしょうか。

≪追記≫
11/4 東大医科研が、代理弁護士名で「記者記事に対する抗議及び訂正請求書」を朝日新聞に提出していますが、その「別紙」の中で、『やっと』「臨床中止の理由の取り扱い」という項目で出てきています。しかし、「経費の負担が重い」ことも、すでに勧誘に応じた被験者もいたのであろう中で、中止理由になるのか、と驚いています。医科研には、何かおかしいところがあります。

④ 医科研は、がんワクチン療法の臨床試験に係わる組織とかシステムを、複雑にし、関係性を不明確にしています。

東大医科研のがんワクチン療法にいては、その研究、各段階の臨床試験、治験について、その組織体制が大変入り込んでいて、「部外者」にとって、大変複雑になっています。東大医科研、中村祐輔研究室を始めとする諸部門、付属病院、がんペプチド臨床研究ネットワーク、がんペプチドワクチン療法臨床研究実施施設リスト掲載の諸施設、文部科学省、厚生労働省等の政府機関、そしてオンコセラピー・サイエンス社、その国内外の子会社、更にはオンコセラピー社の提携民間企業等、多数の組織が関係しています。しかも、「個の医療」に近いこともあってか、臨床試験の種類も沢山あり、研究的臨床試験、各フューズ、治験としての臨床試験、がん種、HLA型、標的機序等、錯綜しています。素人には、全体像の把握が困難になっています。

医科研・中村祐輔研究室が公開している「がんペプチドワクチン療法臨床研究実施施設リスト」では、膵がんの施設として和歌山医大は掲載していません。医科研の「声明」は、和歌山医大の「出血事例」は、「膵がん対象のVEGFR1標的のワクチン療法」であるかのような「印象」を与えています。「抗議と謝罪要求」が記している、「11ではなく7つの大学病院」に和歌山医大は含まれているのでしょうか。含まれていないはずです。朝日新聞は、「『同種』のペプチドワクチンを使う臨床研究が少なくとも11の大学病院で行われ…」としていることに対して、「事実誤認」とかみつき、「同種のペプチド(VEGFR1-A02)を使う臨床研究は、11ではなく7」と訂正要求をしています。「同種のペプチド(VEGFR1-A02)」は、「同一のペプチド(VEGFR1-A02)」の誤りではないのでしょうか。「同種」を「同一」にすり替えて、あるいは分類基準を変えて、事実誤認と主張しているように思われます。VEGFR1もVEGFR2も同種であれば、「商売上選定して採用したHLA型」(文部科学省「がんTR事業」関係文章参照)、A02も、A24も、同種です。11か7かに付け加えて、医科研職員の方が、「59大学を中心としたがんペプチドワクチン臨床研究ネットワーク・・・」とおっしゃっています。

ところで、「同一」のペプチド(VEGFR1ターゲット?)を使う臨床研究を、7つの大学病院で行っているとのこと、医科研病院の「単独試験」との関係性はどうなっているでしょうか。そのペプチドは、医科研が供給しているのでしょうか。何故医科研病院は、共同しないで単独なのでしょうか。

和歌山医大のHPを確認してみますと、膵がんに関する臨床試験(正確には、治験であり、過去2年間の、その審査会議事録からの情報です)としては、「オンコセラピー サイエンス株式会社の依頼による膵癌に対するOTS102の第Ⅱ/Ⅲ相臨床試験」が出てきます。OTS102は、VEGFR2をターゲットとした膵がんワクチンで、オンコ社の薬剤記号です。「重篤な有害事象」としての「出血」事例が、この臨床試験で発生したと推測できます。

この2年間の和歌山医大、治験審査会議事録を見る限り、その内容は判りませんが、数々発生している「重篤な有害事象」について、審査を繰り返しています。何回も治験実施計画書、治験薬概要書、同意説明文章に変更も加えられているようです。このようにして治験は進行しています。「声明」は、この臨床試験のことを言っているのでしょう。

「ペプチドワクチン臨床研究ネットワーク」に参加しているのであろう、和歌山医大が、参加していない私企業、オンコセラピー社から臨床試験を、恐らく商取引として、受託しています。臨床試験の委託受託関係とは別に、それと連携して「試験ネットワークを形成」するのは、臨床試験体制として、普通のことのようです。ただ、商取引としての受託臨床試験であれば、和歌山医大は、試験で発生した事象を、勝手に外部に漏らしはならない義務を負っている可能性があります。関係性は、入り組んでいます。

ネットワーク参加者に、中村教授が、薬剤費用のサポートをしていると医科研職員が述べています。何かお金にまつわる問題もありそうです。受託なら、薬剤は無償提供されていると考えられます。「がんペプチドワクチン療法臨床研究実施施設リスト」に記載されている6つの膵がん研究施設では、そこにリストアップされていない和歌山医大病院と比べて、どのような形態の臨床試験を行っているのでしょうか。全て使用している薬剤は、オンコセラピー社製のOTS102と思われます。

医科研病院が使用した、VEGFR1ターゲットのワクチンは、誰が製造したものなのでしようか。被験者に投与する薬剤です、十分な研究が重ねられ、GMP基準を満たした施設で製造されているはずです。臨床試験は、薬剤を開発した組織が、自ら、あるいは委託して実施するものとすれば、医科研でしようか、オンコセラピー社なのでしょうか。両者、GMP基準満たすだけの製造技術、品質管理システムを備えているのでしょうか。

医科研とは異なる医科研病院は、「全て中止した」とするVEGFR1を標的にした幾種類かのがんに対する臨床試験を、登録をしていないようです。「国立がん研究情報センター」が提供している、代表的な登録機関を網羅的した「臨床試験」のリストには、医科研病院の臨床試験はなにもありません。医科研病院の、非公開性の証なのでしょうか、臨床試験を開示しない理由はどこにあるのでしょうか。

医科研の治験審査委員会の「議事要旨(案)」を参照(http://www.ims.u-tokyo.ac.jp/dctsm/IRBmo.html)しても、治験審査会で承認されて、2008/4に開始したされています。当時の議事要旨(案)は、公開されていません。「全て中止」に関する臨床試験の審査「議事要旨(案)」は、公開されています。中身は大変貧弱です。それでも「何かあった」様子が記されています。

医科研の朝日新聞への「抗議と謝罪要求」の「別氏」(2010/11/4)には、「被験者保護のため免疫反応の比較検討を優先することが主たる理由ですが、適応基準を満たす被験者のリクルート率の低さもあり円滑な遂行を妨げていたこと、他の施設のプロトコルと違ってペプチドを週2回投与するため、アジュバンド等の経費の負担が大きい臨床試験であったことも含め、これらの要因を総合的に判断して終了」したとあります。しかし、「議事要旨(案)」には、同様の内容が記録されているわけではありません。

2009/5/28開催の治験審査員会では、提出された「終了報告」(2009/5/8付)に、委員から「書き直し」を指示され、それを条件に「了承」した、と記しています。そこには、「MS氏の症例中止報告書において、中止の場合の理由を「5.基礎疾患・合併症の悪化」に修正すること。」と記されています。何かから「出血」理由に変更しなさいとの指示なのでしょう。試験担当医の「講師」は、中止理由をなんと考えて、「症例中止報告書」に記していたのでしょうか。なぜ修正させられたのでしょうか。

さらに、「経費の負担が大きい臨床試験」との記載はありませんが、「なお、以上2件の終了報告(HLA-A2拘束性とHLA-A24拘束性)について、目標症例数に達していない段階で本臨床試験を終了する理由が妥当でない、きちんとした評価をすべきであるとの意見があった。」と、記されています。この「意見」は、なにを意味しているのでしょうか、見当が付きません。

2009/5/28の「書き直し指示審査委員会」の審査会の、審議も含めての会議時間は、20分と記録しています。審査項目は、多数記されています。その中の項目の言葉を使えば、「迅速審査」そのものと思われます。「書き直し指示に至った審査」討論は、いかなるものだったのでしょうか。時間の短さには、唖然とします。

2009/6/25の審査会では、進行胃がん 1件、進行食道がん 2件、進行大腸がん 2件、進行乳がん 2件、都合7件の、VEGFR1ターゲットを含んだ「自主臨床試験」の「終了報告」が行われて、了承となっています。ここでも、「目標症例数に達していない段階で本臨床試験を終了する理由が妥当でない、きちんとした評価をすべきであるとの議論があった」と記されています。なにがあったのでしょうか。何故そんなに急いで、「自主臨床試験」を終わらせなければならなかったのでしょうか。この委員会の会議時間は、30分と記されています。そのほかも含めて、審査対象項目は、多数記されています。

朝日新聞の記事では、2009/5-11のあいだに「中止」されたと記しています。しかし、「議事要旨(案)」には、この2回の審査委員会以降では、VEGFR1ターゲット絡みの臨床試験「終了報告」とその了承審査の記録が掲載されていません。

重箱の隅をつつく類のことですが、案外重要かもしれません。VEGFR1ターゲットの「自主臨床試験」、その「終了報告」審査の「議事要旨(案)」だけ、「ファイル名」が異なっています。IRB0905、IRB0906と名付けています。そのほかのファイルは、すべて21-5,21-7,21-8…と命名しています。IRB0905は、2009年5月を、21-5は、平成21年度の第5回の委員会を意味しているようです。なぜ、IRB0905とか、IRB0906という特別のファイル名が付いているのでしょうか。

21-2、21-3と名付けるのが、正規のルールと推測出来ます。順番からして、IRB0905とIRB0906を挟むファイルは、21-1と21-4と名付けられているはずです。確かにそのように名付けられた「議事要旨(案)」があります。

ところで、HPにある「平成21年4月」と「平成21年5月」の「議事要旨(案)」は、文書へのリンクが外されていて、参照不能になっています。21-1.pdf、21-2.pdfと名付けられるべき、「議事要旨(案)」です。グーグルで検索してみると、21-2.pdfは、IRB0905と名付けられて、http://www.ims.u-tokyo.ac.jp/dctsmに、21-1.pdfは、21-1.pdfの名称で、http://www.ims.u-tokyo.ac.jp/dctsm21-1.pdf にアクセスすれば、少なくとも11/6現在、参照できます。

不自然な「審査議事録」のため、検察による村木さんのねつ造事件ではありませんが、これらのファイル作成日を覗いてみたところ、ほぼ間違いなく「工作」したと推定できる日付が見えてきました。すなわち、IRB0905の作成日は、2009/08/07,IRB0906の作成日は、2009/08/06となっております。5月開催と、6月開催の審査会の「議事要旨(案)」の作成日が、8/7と8/6になっているのです。ともにVEGFR1ターゲットの臨床試験を「中止」した審査会です。どのような「工作」を行ったのでしょうか。

取り上げるのを憚っていたのですが、上記の不自然な情報を見つけましたので、その真偽は不明ですが、付け加えておきます。

閲覧可能な医科研の内部文書がネット上で見られます。「人を対象とした研究の倫理審査と同意取得に関する内部調査報告書」と題されています。日付は、2008/09/09、医科研の「ヒト検体の取り扱いに関する緊急対策検討会」の報告書のようです。少なくとも、2010/11/6現在、アクセス可能です。http://www.ims.u-tokyo.ac.jp/imsut/jp/files/080926-1.txt 覗いてみて下さい。この中で、「『すべての患者は、ヘルシンキ宣言に則り、情報を与えられた上で同意をした。』との記載があったが、これらは事実と異なっていることが明らかとなった。…緊急対策委員会としては、これらは意図的な虚偽とはいえないものの、責任著者の研究倫理に対する認識が極めて低く、研究を開始するために必要な倫理面の手続きを軽視した結果によるものと判断した。また、緊急対策委員会では、医科学研究所での、人を対象とした研究の倫理に関する教育研修や倫理審査体制の周知の不足、事前相談受入体制の不足、指針等への遵守状況の監督体制の未構築もその遠因となっていると判断した。」と記されています。VEGFR1ターゲットの臨床試験は、2008/04から始まっています。同時期の「事件」であったわけです。この「事件」は、「外部通報者」の通報によって明らかになったと記されています。朝日新聞の記事について、私は、「事情をよく知る内部通報者」の通報によって取材が進められていると推定しています。医科研の「被験者患者に対する姿勢の一端」を窺わせる資料です。

ところで、医科研病院で被験者となった患者は、公募されていたのでしょうか。それとも医科研病院の患者に限定して、被験者「勧誘」を行ったのでしょうか。臨床試験の公開登録を行っていない点とか、「目標症例数に達していない段階で本臨床試験を終了する理由が妥当でない、きちんとした評価をすべきである」との意見が出る様な「終了」(朝日新聞の記者の命名か(?)、「中止」との表現が実態に合っているようです)の仕方をしている点を合わせて想像するに、被験者の「人権への懸念」が感じられます。

文部科学省の「がんトランスレーショナル・リサーチ事業」が、2004年から2008年に掛けて実施されています。東大医科研のテーマ「ゲノム包括的探索等により同定した新規癌抗原エピトープ・ペプチドを用いたワクチン療法の臨床研究」が採用されています。2005年に報告された報告書から、問題の臨床試験絡みで、気付いた点を列挙しておきます。

● 「主要血管新生に係わる既知分子で抗原性が確認されたもの」は、VEGFR2と記されており、VEGFR1は、その中にはありません。
● VEGFR2ターゲットの工程表は、フューズⅠの臨床試験のみ行い、次いで、適正成熟化樹状細胞でのフューズⅠの臨床試験、そして両者を用いたフューズⅠの臨床試験を構想しています。第Ⅰ/Ⅱ相試験として実施している医科研病院のVEGFR1ターゲットの臨床試験に比べて、樹状細胞の介在をもプラスさせての、慎重な臨床試験と言えるのではないのでしょうか。
● 臨床試験に於いて、被験者に投ずる薬剤、ペプチドの製造、その品質について、「ペプチドの準備に関しましては、これはGMPグレードのものを海外で作成し、それを輸入するという形をとっております」と報告しています。医科研病院が被験者に投じた、VEGFR1に対するGMPグレードのペプチド製造も海外製でしょうか。ノウハウとの関係でも関心事です。

朝日新聞が、「疑惑の構図」を描くに十分な材料を、医科研は提供しているように思います。医科研の「抗議と謝罪要求」も、それはそれとして正当な点もあるように思います。しかし、これほどまでに激しい攻撃をしなければならない程の問題性ある問題とは思えません。逆に医科研に何かがあるのではないかの疑念をかき立てるヒートアップの仕方である、と首をかしげています。

⑤ 批判者は、「治療」と「臨床試験、臨床試験、治験の混同」を利用しています。

両社は、はっきり異なるもの思っています。東大医科研の関係者をはじめとする批判者の方々には、この両者を都合のよいように混同して「利用」しているかのような様子が、批判、非難記事などのあちこちに垣間見られます。被験者患者が、自らの「治療行為」で『も』あってほしいと願っている、将来の患者の為の「臨床研究、臨床試験、治験」を、「あなたの為の治療行為」であるかのように誘導している様子があちこちにうかがわれます。

また、「声明」が、「たとえ風邪をひいて入院期間が延長された場合でも・・・」の「でも」でもって、「重篤な有害事象」の重篤度を、軽減化するかのような指摘をしています。しかも、「風邪」で、です。免疫療法の一種でもあるワクチン療法に関する問題に、「風邪…でも」事例で、「重篤度の低さかげん」説明をするのには、違和感を覚えます。

混合診療扱いにも首をかしげます。治験前段階にして、共同事業の対象に出来ない臨床研究において、被験者患者に経済的負担を負わせること自体が、誤っていると思います。これを、患者の経済的負担の軽減、患者のため、で以て説明する関係者がおられますが、本末転倒と考えています。

⑥ 東大医科研と付属病院の「声明」にある「がんペプチドワクチンとは」の説明と、医科研会見(10/15の会見。日経メディカルオンラインが伝えた記事)における説明(VEGFR1、或いはVEGFR2をターゲットとするワクチン療法)が、喰い違っています。

「声明」は、ペプチドで活性化されたキラーT細胞が、がん細胞を直接に攻撃して、がん細胞そのものを攻撃すると説明しています。

VEGFRは、血管内皮細胞にある血管新生促進因子の受容体であって、分子標的治療薬の一つのターゲットになっていると承知しています。其の作用の機序は、内皮細胞が血管新生に働くのを阻害することにあると理解しています。内皮細胞自体への、キラーT細胞による攻撃作用を機序とするものではありません。「会見」は、医科研病院は、VEGFR1をターゲットにし、和歌山医大は、VEGFR2をターゲットにしたものと説明しています。

がん細胞が誘導してすでに作られた血管の内皮細胞、その増殖因子受容体を標的に、キラーT細胞が攻撃して破壊する、従って積極的ともいえる程度に「出血」させる危険性が高い療法である、と理解出来ます。また、新生血管内皮細胞自体が、HLAタイプのみならず、がんの種類によって異なるVEGFR1なりVEGFR2を発現している、と理解しなければ辻褄が合いません。新生血管が新生原因を刻印していなければ、すべての新生血管が、キラーT細胞の攻撃対象になってしまいます。この療法にとって、「出血」は、根本的な有効性に係わる事象であると、素人なりに考えるています。

このような理解でよいのでしょうか。医科研付属病院の田原秀晃氏の、「がんトランスリレーショナル・リサーチ事業成果報告会」レポート(2008/3/8付)が、あります。(http://www.ctrp.mext.go.jp/report/3rd_abstract.html)。そこには、「抗原特異的CTL(キラーT細胞)がリンパ系臓器や末梢血中に誘導できても、最終的な腫瘍細胞攻撃の出来ない機構が存在する。腫瘍細胞そのものではなく、腫瘍の生育に不可欠である腫瘍新生血管をターゲットとしたワクチン療法を開発する。」という、「別の療法」が記されています。

これからすれば、医科研の「声明」に記載している「がんペプチドワクチンとは」の説明は、問題になっている臨床試験の療法の説明としては、「誤っている」いることになります。医科研の臨床試験となった療法について、東大の医科研が、考えられない「誤った説明」を、しかも「声明」というオフィシャル文章の中でしていることになります。素人感覚からすれば、なんとも理解しがたいことです。「患者さま」向け説明マニュアルに従ったものでしょうか。大概がこのようなものなのでしょうか。同じワクチン療法と言えるにしても、ターゲットも機序も異なる療法です。

上の報告書では、「腫瘍血管新生に係わる既知分子で抗原性が確認されたもの」として、VEGFR2は記載されていますが、VEGFR1は記載されていません。和歌山医大がターゲットとしたのは、VEGFR2、東大医科研病院のそれは、VEGFR1、と記者会見の記事は伝えています。中止された臨床試験の段階は、和歌山医大の臨床試験に比べても、OTS102系統の臨床試験に比べても、未成熟段階の臨床試験のようでした。VEGFR1は、VEGFR2と同時期に、同程度の抗原性が確認されているのでしょうか。

なぜ医科研病院は、共同臨床試験施設のメンバーではないのでしょうか。先の報告書の作成者は、「東京大学医科学研究所 付属病院外科 先端医療研究センター臓器細胞工学分野」と自らの肩書きを記しています。医科研病院は、メンバーが報告する「重篤な有害事象」、私企業、オンコセラピー社の臨床試験の状況など、全ての情報を入手できる立場にあると考えられます。共同研究の成果は自由に入手できます。

一方、共同研究に参加すれば、自らの研究成果も報告しなければなりません。VEGFR1ターゲットの、どのような薬剤で誰が製造したものでしょうか、それを用いた臨床試験の状況を報告しなければならないことになります。しないでもいい、秘密にしておくことの出来るメリット、参加者からの制約を受けないで済むメリット、義務を負わないで済むメリット、参加しないメリットが大きいから参加していないのでしょうか。「共同」臨床試験をする意義はなく、単独試験をする意義の方が大きいから、参加しないのでしょうか。誰にとってでしょう。「患者さまやご家族」に、より役立つからでしょうか。参加しない理由を説明しなければならないでしょう。しかし、実態的としては、医科研病院が行う、がんペプチドワクチンの単独臨床試験は、成り立たない構造に、医科研自体がしているように思われます。証明は比較的簡単と思われます。単独だからの説明は、納得性に欠けます。

医科研病院は、医科研の中で「特殊」な任務を負っているのかもしれません。より基礎研究に近いところでの、研究としての臨床試験をするところとの印象を持ちます。そのための被験者患者を集めるところ、なのかもしれません。東大病院とは、その位置付け、患者の人権への配慮姿勢などに違いがありそうです。臨床試験に係わる医科研内の書類ではヘルシンキ宣言を多用しているようですが、今回の事案に対して、「当時の政府の倫理指針」を出してくるようでは、その「志」に疑問符が付きます。

新生血管を標的にした分子標的剤は、たとえばVEGFRの破壊ではなく、機能発現を阻害する機序の薬品です。血管破壊を目的にしていません。ペプチドワクチン療法は、「副作用」が少ないと、喧伝して、その「優位性」を主張しているかと思います。血管破壊は、危険な戦略と思えます。破壊対象の新生血管は、がんの種類、従って血管新生を促した「原因」を刻印した特異性をもつものなのでしょうか。胃がんの新生血管内皮細胞と大腸のそれ、乳がんのそれ、等々、全て異なっているのでしょうか。

それだけに、たとえ消化管からの「出血」であり、膵がん患者に「よくある既知の事象」としても、「重篤な有害事象」であり、和歌山医大が先鞭をつけた共同臨床研究施設の研究会への報告事例として、患者の為に「慎重」に扱うのが自然と思われます。「試験中止」につながった「重篤な有害事象」とすれば、なおさらのことでしょう。ヘルシンキ宣言ではなく、「当時」の政府の倫理指針で、「違反ではない」とする主張は、東大が行う類のものではない様に思います。

⑦ がんペプチドワクチン療法が実現される日を待ち望んでいます。しかし・・・

ほとんどの患者が理解しているがんペプチドワクチン療法は、「声明」で説明されているワクチン療法だと思います。がん患者に、VEGFR1/2をターゲットにした、血管を攻撃するワクチン療法の説明は、なされているのでしょうか。ワクチン療法等の免疫療法への期待は非常に高いと思います。しかし、血管傷害性のワクチン療法を詳細に知れば、この療法に関しては、腰を引く患者もいることと推測出来ます。

医科研が開発しているがんペプチドワクチン療法には、今のところ二つの方法が考えられている。一つは、がん細胞そのものを直接破壊する方法、もう一つは、がん細胞が誘導して形成された新たな血管、その血管の内皮細胞に刻印されているがん細胞の印を標的にして、内皮細胞、従って新生血管を破壊し、栄養供給を絶つ方法、この二つの治療法を開発している。このような説明は、社会一般には届いていないように思います。医科研のワクチン療法とは、前者のものと理解されている、理解させていると思われます。医科研の「患者さまへのご説明」に添えられた、「がんペプチドワクチン療法とは」が、その典型例です。新生血管の排除療法の説明は、なにもありません。

VEGFR1をターゲットとした、医科研の臨床試験に参加された患者被験者の方々には、十分な説明が行われたことと思います。しかし、その説明を、被験者の方々が理解し、納得することは、容易なことではないように思われます。①新生血管が誘導される仕組み、がん細胞が誘導する新生血管と、通常のそれとの違い、新生血管の性質等々。② 血管そのものを積極的に破壊し、自覚症状のない「出血」を結果する可能性があること。③ しかも、破壊される新生血管は、がんが誘導した血管だけではないかもしれないこと。④ あるいは、がんが誘導して形成された新生血管、その内皮細胞に発現しているVEGFR1は、そのがんの印が刻印されており(?)、活性化したキラーT細胞は、その血管しか攻撃せず、他の部位に新生血管があったとしても、作用しないので安全であること。⑤ VEGFRに対する分子標的薬の治療法は、破壊ではなく、その作用の発現を阻害する方法であるが、VEGFR標的のワクチン療法は、それ以上の治療効果乃至はメリットがあること、その根拠は何か。⑥ 医科研のワクチンは、免疫系を活性化させるだけに、危険な側面もあるかと思われます。どのような有害事象が予想されるのか。例えば、その作用機序は、自己免疫疾患と類似していると思われますが、自己免疫疾患を誘発する危険はないこと等。⑨ 細胞、あるいは血管が破壊されると、修復系の免疫機構が発動されると思われる。キラー細胞の活性化を誘導した免疫系との相互作用において、障害発生の危険性はないこと。⑩ 低あるいは無酸素環境下でも、がん細胞のなかには、エネルギーを産生して生き残るものがあること。従って、この治療法の効果は、限定的であること。⑪ 使用する薬剤は、GMP基準もと、厳重な品質管理を行って製造された、品質保証付きの薬剤であること、等の説明が求められるかと思われます。被験者は、研究者が、試験者が解明しなければならないと考えている点を、被験者になっている理由を、知っておくべきと考えられます。ヘルシンキ宣言の、根幹に関わる課題と思います。

ヘルシンキ宣言の精神に則れば、患者被験者が質問したかどうかで、説明が異なることはあり得ないはずです。全ての被験者には、その質問力の違いに関係なく、同程度の説明と納得性が、保証されていると思います。理解と納得が得られない場合は、試験、実験の類である臨床試験、それも臨床研究段階ならば猶更、被験者にしてはならないことと思われます。患者が求めれば、臨床試験としてではなく、一か八かの治療として、例えばVEGFR1標的のワクチン治療を施すことは、現在でもできることと思います。医師には、背負いきれない程の過分の負担がかかることは目に見えています。「身勝手な患者」が求め、マンガなどで描かれる医師像は、このようなものと思います。「身勝手な患者」の思いを受け止めておられる医師が、沢山おられるのは間違いないと思っていますが、なかなかどなたか、が判りません。「患者さま」表現も含めてのことですが、「患者のため」を大義名分に据えたときには、「患者を利用」して、「思い込んで」で、何ごとかを言っている、という陥穽というものがあります。是非とも慎重であって欲しい、と思っています。

医科研のがんペプチドワクチン療法の開発を中心的に担っておられると思われる、「Captivation Network臨床共同研究施設」があります。医科研病院が、「重篤な有害事象」を報告しなかったと、朝日新聞が指摘した、報告先と思います。この組織が、10/29付で、ネットワーク参加者に限定はしておりませんでしたが、署名活動の上で、連名にて「抗議文」を朝日新聞社に提出しています。幾度か指摘してきていますが、この「抗議文」の出来とか、ものの考え方には、驚いています。① ネットワーク参加者の中から、「記事」の伝える「発言者」探しを行っています。「犯人捜し」の部類では、との疑念があります。② 「発言者捜し」は、どなたが、どのような動機で行ったのでしょうか。記事への「怒り」を抱いて、ネットワークの中心におられる方が行ったと推定できるだけに、「犯人捜し」的な調査の類と、世間的には理解できます。③ 医科研の職員が、中村教授を讃える文脈の中で、中村教授の支援で、臨床試験のワクチンが無償で提供されていること、そのワクチンの製造費用がサポートされていることを、明らかにしています。臨床試験参加者には、医科研側からお金の支援、あるいは予算配分が、そして薬剤が、「独占的」にでしょうか、供給されていることが判ります。④ がんペプチドワクチンの開発に関心ある医師、研究者は、このネットワークに参加しなければ、その開発に関与することは実質不可能と推定されます。⑤ かかる立場の共同研究者への聞き取り調査は、自らの立場をわきまえておられる方なら、行いがたい行為と考えます。⑥「該当者なし」との調査結果から、「捏造論」を導き、朝日新聞に取消、謝罪要求を出しています。説得性に欠ける「やり方」と思います。⑦ 全ては、ヘルシンキ宣言に基づき、判断されるべき事柄と思います。「我々は・・・情報の提示を受ける立場にはありません。」と言っています。どちらを向いた発言でしょうか。⑧ 医科研病院がネットワークに参加していないならば、何故参加しないのか、と問い質す立場に参加者はおられます。なぜ、「共同」しないのかと、問い質すのが、なによりも「共同研究会」の姿勢と思われます。⑨ 非参加をもっともなことと、了解しているならば、何故かを、患者被験者は知りたいと思っていると、想像すべきでしょう。⑩ 医科研病院の職員でもある、参加組織、医科研から、ネットに加わっている方々も多数と思われます。ネットでの情報を一方的に取得するが、医科研病院の情報を提供する義務はない、とするのは、患者のためを掲げているのであろう研究会には、全く似つかわしくない理屈です。「知りたかった、何故報告してくれないのだろう」と発言するのが、自然です。⑪ 「出血」事例は、「我々」としていますが、がん治療を行う医師の中ではと広げておきます、「常識」と主張されています。⑫ 和歌山医大は、ネットの参加者と推定されます。VEGFR2ターゲットの臨床試験を行っている和歌山医大で生じた「出血」という「重篤な有害事象」は、同大学の治験審査会にかけられ、ワクチンによるものではなく、「常識」の事例と判断されたと推定されます。⑬ 「常識」を共有するネットワークの研究会で、この事例が検討の俎上に挙げられた、乃至は、少なくとも紹介されたとあります。それなりの理由あってのことと思われます。何故「我々」に報告したのか、が患者の関心事です。⑮ 和歌山医大の報告事例で、「情報共有が済んでいる」としている「情報」とは何か。「常識」情報ではない、とも考えられます。単なる言葉尻を捉えた不毛の疑問かもしれません。⑯ 問題は、「情報共有が済んでいる」から、どうなのか、もう報告の必要はないということなのか、ということです。研究会か、それとも誰が、「常識」の「出血」事例と判断するのでしょうか。まず、臨床試験の実施責任者、その治験審査会であることは間違いないとして、研究会も判断して、「研究」していこうとしているのでしょうか。⑰ 医科研病院の「出血」事例は、医科研病院が判断して、「常識」事例と言っているだけで、研究会の判断ではもちろんないわけです。研究会は、この療法の「出血」研究に関心がないのでしょうか。自ら確かめる共同研究者としての責任はないのでしょうか。⑱「この時点での共有は不要と考えます」との「遠慮」姿勢で、患者のため、被験者のためという名聞は成り立つとは思えません。どこから来る「遠慮」か、またしても医療者の「仲間内論理」かと、患者被験者を訝らせている文言です。⑲ マスコミ批判、警戒姿勢に共感できる点もあります。しかし、医科研に「迷惑をかけた」メンバーの「不祥事」を、「不祥事」と認識するその厳密な姿勢を、ヘルシンキ宣言に向けて頂く方が、社会的な説得力があります。垣間見れる「遠慮」がなせる技か、抗議文も、その延長線上のものか、心配になります。

で、VEGFR2の臨床試験は進行中として、VEGFR1を標的にしたワクチン療法は、今のところ、「成り立たない」という結論になっているのでしょうか。朝日新聞が取り上げる以前の2010/10/06、東京女子医大が、膵臓がん、肝細胞がんを対象に、VEGFR1に対するペプチドをも用いた第Ⅰ相臨床試験を、医科研ゲノム解析センターとの共同実施で、登録されています。医科研病院のそれとは、プロトコルが異なっているようですが、VEGFR1を一つのターゲットにしています。医科研病院の全面中止の遺産を引き継いだ試験計画が立てられているのでしょうか。単独臨床試験であったから、ということの影響を引きずっているのでしょうか。

⑧ 朝日新聞の記事は、それでも突っ込み不足と思います。

オフィシャルに明らかにしている取材開始は、2010/5/25としています。そこから数えても記事発表まで、すでに半年近くの取材活動となっています。そこに行き着くまでの、下調べ等の準備期間も相当あったのでは、と思います。「内部通報」が契機になっての取材開始ではとの推測も成り立つでしょう。収集した情報、資料の類は膨大な数に上っているものと思います。分析に従事した職員の数も、多数に上るかもしれません。外部「識者」の応援も推測出来ます。把握した「事実」「情報」のすべてが記事にされている訳はないと思われます。事実誤認などの諸課題もあるかと思いますが、それらはマイナーな問題と思っています。それより大切なことは、ほぼすべての問題提議はできているのかもしれませんが、焦点の合わせ方を含め、記事自体の突っ込みは不十分なものと考えています。

「臨床試験に対する妨害記事」とする批判の類は、取材過程の状況から事前に予想していたと思われます。患者会代表有志の方々の声明文から、記事批判を臭わす部分を抜いて、その「見解」を伝えるという手法を弄しています。「スクープ記事」の信用を落とすだけの行為です。問題指摘が、患者の利益になるという程度に、記事は練られ、掘り下げられ、完成度の高いものに仕上げられているとは、言えないのではないでしょうか。がん患者の利益に届く程度に、今後、もっと深く掘り下げていくことが、期待されます。積極的に評価できる視点を「ひとそろえ」、まずは提示したというところでしょうか。

最新のエントリー
最新のコメント
最新のトラックバック
最新のリンク
カレンダー
2010年11月
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30
« 前の月 | 次の月 »
アーカイブ
カテゴリー
検索


コントロールパネル
BROACHのアカウントをお持ちの場合、こちらからログインして下さい

プロフィール
スタンス
カウンター
合計 : 2799
本日 : 10
昨日 : 19
ブックマーク
RSS



Powered By