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ヒロシマ・アニメの映画化企画

 久々に汐文社の吉本会長から電話があった。こうの史代さんの漫画のアニメ映画化が持ち上がり準備に入ろうとしている。企画書を送るので読んで欲しいと企画書と漫画に監督の作品DVDなどが送られて来た。

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 こうの史代(42)は広島市西区出身の漫画家で‘04年に発表した「夕凪の街・桜の国」が代表作。戦争が市井の人々にもたらす悲しみと苦しみを描き、多くの受賞をし映画化もされて大きな評判を得た人気作家。

 今回、映画化の企画は‘07年から‘09年に『漫画アクション』に連載された「この世界の片隅に」で、戦時中の広島が舞台。漁村で育った少女が呉に嫁ぎ、見知らぬ土地で新しい生活を踏み出す。昭和18年12月から20年の12月までの戦時中の2年間の「日常」を一カ月単位で生活感たっぷりに判り易く広島弁を織り込んで描写している。

 従来の戦災ものとは全く違うアプローチで描かれている。むごたらしい被災シーンを見せ場にしたり、傷ついた人達の悲壮感を声高に訴えたりしない。戦時統制下の厳しい台所事情の中で、さまざまな生活の知恵を絞り、日々の暮らしを営む、ひたすらに淡々と日常を見据え続けることで、やがて戦争という理不尽な暴力を浮かび上がらせていく…。

 制作を手掛けるのは電通や博報堂にNTVなどが出資している「マッドハウス」。40年の歴史を持つテレビや映画のアニメ作品の大手制作会社。社長の丸山政雄さんは虫プロ出身で「はだしのゲン」や「かっ飛ばせドリーマーズ~カープ誕生物語」など作品の制作も手掛けて来た広島に関わりが深く、関心も強い人物だ。

 脚本・監督は「魔女の宅急便」の制作に関わり「名犬ラッシー」で監督デビューした片淵須直氏(50)で昭和30年代の山口県防府市を舞台にした高樹のぶ子の自伝小説「マイマイ新子と千年の魔法」(‘09年)を制作している。
 これを観れば「この世界の片隅に」のアニメ化の実現が原作以上の訴求力を発揮できる可能性を期待させる…監督のロマンが見えてくる…ように想う。

 西条の田舎暮らしであったが多少この時代の暮らしを体験している戦中派にとって、アニメでしか表現できない「アニメだから表現出来る」日常生活の描写が期待され。呉線の列車に乗り、呉が近づくと車掌がまわって列車の窓を木枠の遮蔽を下して海が、海に浮かぶ軍艦や造船所が見えないようにした…今では実在しない風景を再現出来るアニメの力を呼び起こす事が出来る。

 監督は「戦争と言う暴力」は「日々の暮らしを破壊するために襲いかかってくるもの」であり、生活者は「暮らし抜く」と言うことで対抗するものと位置付けている。

 戦争が我々の生活にどんな影響を与え、何を奪っていくのか。日々の暮らしを営む「普通の人々」の視点から、厳しい現実に目を背けず表現する…
 観終わった観客達が日々を共に暮らす人達の存在をいとおしく感じ、思わず抱きしめたくなるような気持になれる…作品創りを目指したいと抱負を語っている。
 観客の涙腺を刺激するような安易な感動作で無く、一人一人が物語の意味を噛みしめられる、本物の感動を届けたい…との思いを込めている。

 こうの史代作品の映画化第二弾は広島・呉から発信される。
 アニメだからこそ期待は大きい。(10月27日記)

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