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子育てには二通りあると言われています。

躾重視の厳しい管理主義、そして自由に育てる放任主義。
 厳しく育てれば「良い子」が育ち、自由に育てれば「個性的な子」が育つといわれています。あなたはど ちらが良いと思いますか?
 周りの家庭を見て「何々ちゃんのママぐらい、厳しくしないとダメなのかなぁ?」とか、「何々ちゃんち ぐらい放って置いても大丈夫なんだ。」とか、周りと比べてみては、「ああでもない、こうでもない」とフ ラフラ方針が変わってしまうのは、私だけでしょうか?

 最近、ピータークラインという人の本を読んでハッとしました。その本は良い会社組織をつくるという テーマなのですが、そこに「鬼の指導は、確かに効果的。ところが仏の指導はもっといい。一番ダメな会社 は、何もマネジメントがないところだね。」とあったのです。

 三人の子供を持つ親として、私はこの時思いました。「しっかりしなきゃ。」って。自分の考えを持たな いでフラフラしてたら、それに子供が惑わされてしまう、だから親として一本の筋を持たなきゃなって思い ました。

 植木屋の私が、冒頭になんでこんなお話しをしたかというと、庭にも同じようなことがあるんです。皆さ んは剪定(枝切り)の仕方にも色々あるのをご存じでしょうか?「枝を切るのは皆一緒」ではないんです ね。プロの目からみて大きく2つの方法があります。

  一つは鬼の剪定(!)一つは仏の剪定(!)です。鬼の剪定とは、形を重んじ、主人に従うことを第一と します。仏の剪定とは、個性を引き出し、樹木自身を活かすことを第一をします。
 さて、あなたはどちらのやりかたですか?また、あなたのお庭の木々たちはどちらで剪定してもらうこと を望んでいますか?

 「一番ダメな会社は、何もマネジメントがないところだね。」つまり、
 「一番ダメな庭は、何の方針もないところだね。」と言い換えることが出来ます。

 ただ、なんとなく過ごすより、一本の「筋」があるほうが、楽しいお庭づきあいが出来ます。実際わたし は、一つの考え方をもって、お客様のお庭と接しています。

 これから、そんな「お庭づきあい」の方法をお話ししたいと思います。

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一、管理主義か?放任主義か?

何の木か分かりますか?

 庭には色々な木があるのに、ちょっと遠くから見ると何がなんだか区別が出来ない。そんな風になってい ませんか?それでは違う種類の木を植えた意味がありません。
  外側の輪郭だけをそろえる刈り込み剪定で、丸くしたりローソク状にしたり、玉を散らした仕立て木風に してあったり。そんな庭でしょうか?

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マツのある和風庭園ですか?

 一般によく見られる剪定方法は、マツやモッコクなど、古くから日本庭園にある樹種に有効なもので、雑 木、外来種の木、コニファー、には適しません。
 その理由は成長速度の違いにあります。庭は限られたスペースにあるものですから、必ずある一定の大き さに木を維持しなければいけません。マツなどは非常に成長が遅く、狭い場所に植えるには最高の木です。
 ですから細かい枝先の手入れだけで大きさを維持出来ますし、庭のバランスも崩れません。しかし、外来 種の木や成長の早いコニファーなどの多い庭では、全く違った剪定の仕方をしないといけません。
あなたのの庭は、マツや和風の仕立物の多い和風庭園ですか?

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輪郭をきれいに刈り込む、形重視の剪定は、管理主義派の剪定です。実際、この方法はとても多いです。 日本庭園でも多用される方法ですし、イングリッシュガーデンでも、カチッと四角や丸に刈り込んだ庭園は 良くご存じでしょう。部分的には確かに必要なことです。
 なぜ私がそれを管理主義派と表現するのでしょうか?その理由は、「人」の意志が優先されるからです。 家人や庭師などの意志を優先にして、型に当てはめるため、木自身の個性は大切にされません。
  それと、管理主義派にはいくつかの弱点があります。親の理想を押しつけたために、思春期の子供がある 時突然反抗するのと似ているかもしれません。

 次の章からその弱点について、具体的にお話ししたいと思います。

 
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二、「理想押しつけ剪定」の弱点

ここでいう「理想押しつけ剪定」とは、木を、人が思う型に当てはめていく剪定方法です。輪郭と形優先 に、外側を刈り込みます。刈り込みバサミで苅りそろえるのは、もちろんですが、剪定バサミで枝を切ると きも外側の枝を輪郭を合わせるように切っていきます。
 この方法は「床屋さん」と似ています。男性の髪の毛を、きれいな輪郭で苅りそろえていく、そんなイ メージで以下の項目を読んでみてください。

 

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すぐに伸びる気がする。

 外側の輪郭だけ苅りそろえる剪定では、枝葉が成長すると、輪郭がすぐに崩れ、その分目立ちます。カ チッと形を仕上げた髪型はちょっと乱れただけで、とても気になるのと一緒です。カチッとすればするほ ど、マメに切りたくなります。これを突き詰めると、1ヶ月に1、2回はチョコチョコ枝先を切らなければ ならなくなります。私のお客様からこんな話をよく聞きます。「お隣のご主人は、いつも庭に出て手入れし ているから、植木がいつもきれいなのよねぇ。私なんか何もしないから全然ダメだわ。」確かにそうかもし れません。でも考えようによっては、そのご主人は気になって気になって仕方ないかも知れません。だから 庭に出てチョコチョコやらざるを得ないのです。

 
 

 

風通しが悪くなり、日当たりが悪くなり、枯れ枝が増える。

 この3つは植木にとって、良いことはひとつもありません。木の生理、生態を知ればハッキリ分かること です。木の生長を「一家の家計簿」に例えてみます。家計には「収入」「支出」「貯蓄」の3つがありま す。木でいう「収入」とは太陽の光、「支出」は吐き出す酸素と二酸化炭素、「貯蓄」は根に貯める栄養で す。

 ですから、どれだけ昼間の太陽の光を受けられるか、が貯蓄を増やす(元気になる)カギなのです。収入 が少なくなれば、なかなか減らせない支出に圧迫されて、貯蓄は後回しになってしまいますよね?でも太陽 の光さえ当ててあげれば、木にとっての収入が増えるのですから、すぐに生活が楽になり元気になります。
  木の家計は先ず、日当たりから始まっています。肥料でも水でもなく、一番重要なのは日当たりです。そ れがゼロならば、全く収入が無いわけですから、いずれ借金で首が回らなくなり結果は大体の所、想像がつくでしょう。
  ですから、人間が先ず手入れとして、してあげなければならないことは、光を木全体の葉に当ててあげる ことです。
  何年も刈り込み剪定をした木の枝の中を、手で開いて見てみると、沢山の枯れ枝に驚くと思います。風通し が悪く、日が当たらない枝は枯れ、その枯れ枝自体が日陰をつくりさらに枯れ枝をつくる原因になります。 一番外側の葉にしか光が当たらないことが、如何に不健康か分かるはずです。

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良くて現状維持、油断するとすぐに大きくなる。

 毎年枝葉が五センチ伸びたとします。それをピッタリ五センチ苅れば去年と同じに維持できます。しか し、四センチだったらどうなるでしょう?一センチ大きくなります。それが十年続くとどうなるでしょう? 十センチ大きくなります。十センチなら大したことないかもしれません。しかし、一年で三センチ刈りが甘 かったとしたら、十年で三十センチになってしまいます。
  では毎年少しずつ小さく出来ないのでしょうか?簡単そうに思えますが、実はそれが刈り込み剪定では難 しいのです。なぜなら同じところで刈り込まれた枝はコブが出来て肥大化するからです。そうすると今まで より太くなった場所を切らなければならず、倍以上の手間とコストがかかってしまうのです。

 
 

 

常に同じ所で切るため、そこがコブになり奇形化する。

 コブが出来て大きな手のこぶしのような枝になったサルスベリをよく見かけます。そして、それが正しい 剪定方法のように思っている方も多いです。しかし、私にはそれが「奇形」に見えて仕方ありません。しか もサルスベリ自身の意志ではなく、人の勝手によるものなのですから迷惑な話です。

 サルスベリの本来の姿をご存じでしょうか?神代植物公園の一番奥にあるサルスベリ園には素晴らしいサ ルスベリが沢山ありますので、ご存じ無い方は是非一度行ってみて下さい。

 

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三、お手入れ5つの大原則!

 なぜ枝を切るのでしょうか?実は、ただ伸びたから切るのではない、大事な目的が3つがあります。
  1、健康に育つこと。
  2、常に若がえること。
  3、まわりと共存すること。
です。
  「健康に育つ」とは、全ての葉に光を当てる為に枝を間引いたりたり、風通しを良くしたり、枯れ枝を除 いたり、です。
  「常に若返る」とは、一本の木の中で、世代交代させる事です。そうすれば、常に木は若いまま、幹も太 く成長していきます。
  「まわりと共存すること」とは、程良い日陰をつくったり、ぶつかり合う枝を落としたり、庭の中で「お 互い様」の関係をつくることです。主役があり、脇役がある。皆仲良く舞台を演じてもらうための関係作り をします。
  これらの大きな目的の後に4番目として「形を整える」があります。誤解されている方が多いのはここで す。1番ではありません。4番目なのです。木のことを思いやると「形」は4番目になります。自分の子供 を育てるとき、最初に思うことはなんでしょうか?産まれて出てくるとき、「元気な赤ちゃんであればい い」と思うのではないでしょうか?いきなり「美人でありますように。」とは思いませんよね?健康でい て、元気でいることは一番重要です。そして、子供が大きくなって学校に入ったら、どう思うでしょ う?「友達沢山出来るといいな。」と思うのではないでしょうか?いきなり「成績がトップになりますよう に。」とは思いませんよね?社会に出て、まわりと共存することは大変重要です。 なんだか生き物を相手にすることは、みんな共通することがあるような気がします。相手が植物だった り、子供だったり、家族だったり、仕事の仲間だったり、それぞれ違う状況でも、基本は同じなのではない でしょうか?

 

 
 

 

先ずは日当たり。

 なにより大切なのは日当たりです。前述の通り、日が当たらない葉は自らを枯らしていきます。全ての葉 に日を当ててあげれば、枯れ枝が出来ることはありません。幹にまで直射日光がガンガン当たるのではな く、優しい木もれ日が当たる程度で良いのです。
  それが木が健康でいる第一条件です。

 

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風通し。

 私は以前、お手入れが終わって、お客様からこんな事を言われました。「風が流れるようになったわ ね。」「え?」「今、風が吹いたわけじゃ無いんだけど、庭全体をゆっくり風が流れてるような気がするの よ。」
  その言葉は、私にとって最高の褒め言葉でした。枝を切ってきれいにすることで、風を感じることが出来 るなんて不思議に思うかもしれませんが、その時、清々しい「風」を感じることが、木にも人にも気持ちい いことを実感しました。

 
 

 

枯れ枝から学ぶ。

 木は言葉をしゃべりませんが、メッセージは発信します。それが枯れ枝です。木に相対する時、枯れ枝の 意味するメッセージを聞きましょう。
  枯れ枝には必ず意味があります。必要ない枝だから木自身が自ら枯らすのです。「他の枝の邪魔だか ら」「日が当たらないから」「他の枝を伸ばすため」などです。枯れ枝を取り除く、そして再び枯れ枝が出 ないようにする。
  単純なようですが、「枯れ枝」は最大のメッセージであり、最高の教材です。

 
 

 

枝先切りをせず、常に若返らせる。

 いつでも新人(若い新芽)を育て、会社(木)の老化を防ごう!とある会社の社訓にあるとか、ないと か?!。
  伸びた分を切りつめるのではなく、若い枝を大事に育てて、古い枝と交代させます。切って小さくする、 ではなくて、育てて世代交代させるのです。
  常に世代交代が行われて木が若返っていれば、年に一回の剪定だけでも、毎年花が咲くのを楽しめます。 優秀な社長は、いつ自分がいなくなっても良いように、常に人材を育てて、いつまでも会社に花を咲かせます。

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共存する環境をつくる。

  庭の中に「お互い様」の環境をつくります。木一本がきれいに仕上がっても、それが周りと「仲良し」で ないと良い庭ではありません。下草のために程良い日陰をつくったり、隣同士ぶつかり合う枝を落とした り、それぞれを仲良し同士にしましょう。
  庭には主役があり、脇役があります。大きな木があるかと思えば、小さな草花もあります。皆仲良く舞台 を演じてもらうための関係作りが必要です。広い目で見た全体のお手入れで、庭をまとめることが必要で す。

 
 

 以上の5つは基本中の基本で、植物の絶対普遍の法則です。これを判断材料にして、それぞれのお庭の方 針を考えれば、決して間違えることはありません。自分の庭のお手入れで迷ったら、思い出して下さい。

  5つの大原則は、あなたに決して嘘はつきません。

 
 

 

 

四、具体的に私はどうしているのか?

 私は様々なお客様のお庭で、お仕事をさせて頂いていますが、人それぞれ感じることは違います。マツの 枝ぶりを眺めるのが好きな人、ホースで水をまくのが一番好きな人、成った実を食べるのが楽しみな人、ま さに様々です。

 そんな中、私は何に一番感動するか?

 それはズバリ、
  「素直に育った小枝が、ゆっくり揺れる姿を眺めること」です。

 その時、「自分がつくったもの」という気持ちではなく、その木が生長するのを助けてあげた、という気 持ちです。私と庭の木々は主従関係ではありません。お互いが掛け替えのないパートナーです。私は木の成 長を助け、木は私に安らぎをくれる、そんなパートナーシップを感じるときが一番好きな時間、感動する瞬 間です。
  では、そんな瞬間を迎えるために、私がしていることを具体的に説明していきたいと思います。

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一、先ずは完成をイメージする。

 焦点を「点」にしないで両目のピントを離して全体を見ます。少しぼやけるくらいにして意識的に客観的 に見るようにします。部分を見ないで全体を大きく見ます。そして、どれくらいの大きさに仕上げたらいい のか、どれくらいの明るさが欲しいのか考えます。
  「大工は家を二回つくる」という言葉をご存じでしょうか?大工は家を実際につくり始める前に、頭のな かで(もちろん図面を書いたりもしますが)一度家を完成させます。つまり、イメージでは大工の頭の中に 完成しているのです。そのイメージが出来てこそ、実際の工事に取りかかれます。そして、実際に竣工する のが二回目の完成です。

 このようなことを私達もしています。頭の中にイメージをつくってから脚立にに登り、実際に枝を切り始 める。ワケが分からないうちにハサミを忙しく動かしても良い仕事は出来ません。 ですから最初のソフトフォーカスの目線で木全体を見極め、イメージを完成させることが重要です。

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二、個性を尊重する。

 全部の木に対して同じ切り方はしません。それぞれの木の個性を伸ばすような剪定をします。枝の伸び方 や葉の形、それぞれの特色を活かしたお手入れをします。私は木の個性を感じるために、木の声を聞くよう にしています。「木がしゃべるわけないじゃないか!」と思われるかも知れませんが、このやりかたは、私 の先輩から教えてもらったことなのです。
  その先輩の仕事ぶりを見て「どうしたらそんなに上手に枝が切れるようになれますか?」と質問したんで す。もうかなり前のことです。すると先輩は「忌み枝とか基本的な順番はあるけど、それ以上は理屈じゃな いんだよね。俺には木が「ここを切ってくれ。」って言ってる気がするんだよ。会話するっていうか何て言 うか、変だけど本当なんだ。だから俺って、たまに独り言いってるでしょ?」
  私は最初、「そんなワケの分からないことを言って、大事なことは人には教えないのか!」と思いまし た。
  だって木と会話できるはずないでしょう?。
  でも今になると、なんとなく分かるんです。確かに理屈じゃなくて、自分を無にして真剣に木に問いかけ ると答えが返って来ます。昔は先輩の言葉が全く理解できませんでした。でも今、木の「声」を聞いて個性 を尊重することがどれだけ大事か分かってきたつもりです。日本造園組合理事長の豊田英次さんは著書のな かでこう言っています。
  「耳で聞くのは、なにもお施主さんの要望だけではない。木の気持ち、土の心もよく聞かないといけない。 音はお施主さんの声であり、また、木の声、土のこころでもある。ともかく職人は、いい耳をもたなくては 駄目だ。納得いくまで何遍も何遍も聞いて、よしと決まってから、本腰を入れて仕事にかかる。」
  これを読んで私は「聞く」とこが如何に大事かを確信しました。
  木の個性を尊重するには、心で聞く気持ちが必要です。

 
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三、人の手を感じさせない、超ナチュラル仕上げ。

  木は自分の意志で生きています。ですからそれを人の手で矯正するのは間違っています。
  画家は風景をデフォルメしてキャンバスの上に芸術をつくり、その画家の作品が出来ます。ピカソやゴッホの絵は私も大好きです。
  しかし、それを剪定でしてはいけません。どういう事かというと、1本の木を剪定して「庭師、斉藤の作 品」としてはいけない、ということです。
  例えば桜の木を、人間国宝といわれる庭師が剪定し、その桜の木の下に「人間国宝ナニガシが剪定した作 品」と札を立てたら滑稽ですよね?
  切った「人」を感じさせるより、その「木自身」を際だたせるほうが重要です。すると当然、その木らし さを活かした自然風の剪定方法になるのです。

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四、大きな枝から抜いていく

 私は手間のかかり過ぎをなくし、細かすぎる仕事をしません。具体的には、細かい枝先を、手数を多くパ チパチと切ることはしません。その前に、遠くから木を全体で見て、大きく捉えるようにします。そして、 いらないと思われる枝を大きい順、太い順に切り落としていきます。そうすれば無駄が無く効率も良いので す。
  しかし、これは初心者には特に難しい技術です。その理由は木と枝に対する視線の使い方を区別しなけれ ばいけないからです。初心者は視線の使い方が1つしか出来ません。それで「大きく捉える」ことと「接近 して捉える」ことが区別できないのです。私も昔、よく言われました。「全体を見てから仕事にかかれ。」 と。全体を見ることはつまり、大きく捉えることです。その時、視線の使い方を変えます。しかし最初は 「木の全体を良く見ろ!」と言われれば言われるほど、葉の一枚一枚を見ながら視線を早く動かし、目玉を キョロキョロさせてしまうのです。これでは全体は見えません。
  先ず、大きく全体で捉えて、大きな枝から切っていきます。

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五、大枝透かし

  まず、ノコギリで切る、決定的にいらない太い枝を見極めます。これは一本の木の中で、何本もありませ ん。多くて五本ぐらい、少なければ、一本あるかないか、それくらいです。
  太い枝を切ると、樹型が大きく変わってしまう場合もあります。ですから最も神経を集中すべきですし、 最も難しいかもしれません。プロでも、この段階で悩んだり、迷ったりすることがあります。すこしでも切 らない方がいいかな?と思ったら、その枝は切らないことです。切ってから元に戻すことは出来ません。で も後からその枝を切ることはいつでも出来るのですから、「迷ったら切らない」が原則です。

 
 

 

六、中枝透かし

 剪定バサミで切る、世代交代枝を見極めます。人間で言うと、自分が退いて後を任せたいという人物を見 極めます。この時、世代交代枝はしっかり育っていないといけません。まだヒョコッと出たばかりの新芽や 若い枝では、全てを任せるのは不安でしょう。木の輪郭の一番外側に出ても、しっかりその木らしさを担っ ていける程度に成長していなければなりません。逆に言えば、実力のある働き盛りの枝をさがして表舞台に 立たせてあげる、そういう見極めです。

 

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解説!刈り込み型樹形を最短で直す方法

 長い間、規則に縛られてきた人は、自由になりたい反面、いざ自分が自由になると、どうしていいか分からなくなります。木も同じで、本来の姿に戻るには、少し時間がかかります。
  まず1年間、枝を伸ばしっぱなしにします。そして、その自由に伸びた枝を見て、木の個性を見極めま す。それが出来たら、少し痛みが伴いますが、大枝透かしで大胆に改革を行います(小泉さん 風)。
  そして1年間さらに待ちます。丸2年経ったところで、中枝透かし、小枝透かし、と徐々に細かい所に手 を入れていきます。ですから、大体本来の姿に戻るまで丸3年かかると考えてください。
  しかし、その後は忙しく刈り込み剪定をする必要もなく、手数の少ない自然風剪定になり、「その木らし さ」を楽しめるようになるのですから、短い投資期間だと思います。

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七、小枝透かし

  木バサミで切る、こもれび調整枝を見極めます。これは木全体に光を当てる微調整の仕事です。もっとも 外側(枝先側)の細い枝を均一に間引いて仕上げていきます。最も時間がかかり、切る人の個性が出るとこ ろです。ここで細かく切りすぎないよう注意します。「剪定のための剪定」になってしまっては本末転倒で すので、飽くまでチラチラとした木もれ日を全体の葉に当てることが目的です。

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では、前述したサルスベリのこぶしの枝ですが、これを直すにはどうしたらいいでしょうか?その前に先 ず、次のようにあなたの気持ちを切り替えましょう。
  ●毎年切っても切ってもよく伸びるので困る。
  ↓いつも同じ所で切れば、同じだけ伸びます。ですから勢が落ち着くのを待つ気持ちに切り替えましょ う。
  ●まわりが皆こぶし作りの手入れなので、ウチだけ枝がだらしなく伸びているのは変だ。
  ↓木を人の手で矯正するのは間違っています。切った「人間」のシワザを感じさせない、本来の木の形を 知りましょう。
  あなたの気持ちが切り替わったところで、まず、先端のコブを全て切り落とします。一年経つと切り口か ら沢山の勢いのいい枝が出てきます。このうち方向性の良い枝を二本選び、残りは全て元から切ります。次 の芽吹きが出るまで(また一年くらい)ジッと待ちます。ここで去年残した二本の枝に注目します。この二 本は、また最初のように勢いよく伸びたでしょうか?おそらく伸び方は穏やかになったはずです。こうなっ てから、さっきお話しした中枝透かし、小枝透かしをしていきます。

  その木のもつ本来の姿を楽しみましょう。大きな公園や自然の森林に行った時は、よく観察してくださ い。

 
 

 

あとがき

植木屋さんはあなたを理解していますか?

「主役はプロであるワタクシ」になっている植木屋さんはいませんか? 人の話を聞くよりもまず自分の事を話そうとする。それがさらに進むと「私の言う事を聞いていれば間違 いないのだから黙って見てなさい。」となります。植木屋さんはあなたと同じ気持ちでお庭を見ています か?

 私の師匠はガンコ者ですが、新しいモノに興味を示し若者と話をする気持ちを持っています。しかし、技 術優先、自分優先のガンコ者はダメです。「これはこうするもんだ!」なんて言われたら「スイマセン!」 となりますよね?人に仕事を頼むのに、遠慮することは何もありません。植木屋さんになんでも相談できま すか?

 私は庭の専門家として誇りをもって仕事をしています。だからといって「私が偉い、それについてこ い!」とは思いません。お庭の木々、お客様、仕事のパートナー、皆が掛け替えのない存在ですし、それぞ れが対等だと思っています。ですから真剣に仕事をすればするほど愛情が湧いてきます。

 「愛すると言うことは、とても単純で簡単なことなんです。相手を見てニコッと笑って、優しいことを言う んです。それだけです」

  思いやりをもって庭木に話しかけてみて下さい。 きっと何かが返ってくるはずです。

 

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