きょうの社説 2010年11月12日

◎自治体の不正経理 再発を防ぐ仕組みが必要
 会計検査院の2009年度決算検査報告で、石川、富山県内の市を含む多くの自治体で 、補助金、交付金に絡む不正経理などが指摘された。07、08年度検査ですべての都道府県で不正が報告されたが、会計処理のずさんさは市など他の自治体も変わらず、補助金の目的外使用や、補助金、交付金の二重取りなど「認識の食い違い」「手続きミス」では済まされない事例もあった。

 これらの背景には、補助金の使い勝手の悪さや予算使い切り主義など構造的な要因があ るとしても、不正経理を正当化する理由にはならない。たとえ業務上必要な支出であっても、ルールに反する処理が意図的に行われていれば行政の信頼を損ねることになる。

 検査のたびに不正があぶり出される状況が続けば、自治体で公金がいい加減に扱われ、 監視機能が備わっていないことを印象づけるだけである。会計検査院に指摘される前に、内部でチェックできる仕組みがいる。悪質な処理については責任の所在を明らかにし、厳正に処分してほしい。

 不正経理では、金沢、輪島市で補助対象にならない用途への支出があったほか、能美市 はコミュニティーバス事業で補助金と特別交付税の二重取り、富山市でも地図情報システムで国の補助金を活用しながら特別交付税も受給するミスがあった。小松、七尾市などでも補助金に絡む処理が指摘を受けた。

 自治体の台所事情が苦しいのは分かるが、補助金の目的外使用などは制度の根幹を揺る がす行為である。こうした処理まで予算のやり繰りとみなす空気があるとすれば、早急に職員の意識改革に取り組まねばならない。

 国からの分権の受け皿として、行政能力の向上がさらに求められるときである。裏金の 捻出や姑息な会計処理は時代に逆行し、権限や財源移譲論議にも水を差しかねないことを認識する必要がある。

 今回の検査対象は08年度分までで、補助事業は国土交通省、農林水産省が中心である 。自治体は他にも不正経理がないか内部調査を徹底する必要がある。指摘を受けなかった自治体も傍観せず、今回の事例を教訓にしてほしい。

◎経済連携の基本方針 自由化を生き抜く農業に
 政府が「平成の開国」と位置づける「経済連携の基本方針」を閣議決定した。アジア太 平洋経済協力会議(APEC)の焦点でもある環太平洋連携協定(TPP)については、関係国と協議に入ると明記された。農産物の関税を撤廃する経済連携協定に農業団体などは強く反対しているが、貿易自由化を前提に農業の存続、強化を図る道を歩むほかないのではないか。

 民主党政権が打ち出した農家の戸別所得補償制度は、もともと農産物の自由化とセット であったはずだ。現実化している世界的な食料危機に対応できるように国内農業の基盤を守ることは、まさに国の大本といえるが、関税撤廃や新たな通商のルールづくりという大きな流れから取り残されては、日本経済を維持することもできない。財政による所得補償制度で農家を支えながら、自由化に耐え得る強い農業をめざす覚悟が求められていると考えたい。

 経済連携の基本方針では、首相を議長とする農業構造改革推進本部を設置し、来年6月 をめどに基本方針を決め、その後、行動計画を策定する予定である。そこでまず望みたいのは、確かなデータに基づく冷静な議論である。

 農林水産省は先に、TPPで農産物の関税を全面撤廃した場合、日本の農業生産額は4 ・1兆円減少するとの試算をまとめている。コメの生産額だけで2兆円は減るという。安い輸入品の増加で、日本農業が打撃を受けるのは確かとしても、農水省の試算は根拠があいまいで、現実的ではないという声が政府内からも出ている。

 また、自由化推進の側では「コメ農家栄えて国滅ぶ」などといった言い方もなされてい るが、表現やデータに誇張があっては、議論がゆがむ恐れがある。

 家族経営が伝統の日本農業の体質強化は戦後農政の一貫したテーマであり、中核農家の 育成、農地の集約化、株式会社の農業参入などが進められてきた。ただ、いずれも中途半端な状態である。財政に頼るばかりでなく、農業の生産性、競争力を高めるこれらの政策を徹底する必要があろう。