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平等院の国宝本尊から金糸の絹織物発見
平等院鳳凰堂(京都府宇治市)の本尊・阿弥陀如来坐像(国宝)の台座の中から、金糸(きんし)を使った平安時代後期(11世紀ごろ)の豪華な絹織物の断片が見つかり、同寺が11日、発表した。金糸は両面箔糸(はくし)という珍しい糸で、中国からの輸入品と考えられる。染織史の専門家らは、平安時代の作品「枕草子」や「栄華物語」などに登場しながら、その姿が謎に包まれている中国伝来の絹織物「唐織(からおり)」を解明する資料になるとしている。
発見された断片は計12点で、うち比較的大きな断片は2点(長さ7.4センチ、幅1.4センチと長さ8センチ、幅1センチ)。平成16年に見つかり今年調査された。
両面箔糸は、細長い紙の両面に金箔(きんぱく)を貼った糸で、幅は0.5〜0.8ミリ。修禅寺(静岡県)の本尊内から見つかった鎌倉時代の絹織物にも見られるが、今回の発見例が国内最古という。
調査では金糸以外に紫、黄、緑、白茶の計4つの色糸(緯糸=よこいと)が確認され、経糸(たていと)も紫と考えられることから、少なくとも5色の糸を使った織物とわかった。経、緯1本ずつ糸を絡ませるのではなく、それぞれ5本の糸をとばして6本目の糸に絡ませる「経緯6枚」の技法で、丸い文様などを細かく織りだしている。
清涼寺(京都市)の本尊内から見つかった同じ技法の絹織物は宋代の織物とされ、糸の特徴が似ていることから、今回の織物も宋代の可能性があるという。
唐織については、枕草子に「めでたき物、唐錦、かざり太刀」、また「栄華物語」には「藤壺の御方、八重紅梅を織りたり。表層は皆唐綾也」などとあり、平安時代の女性たちの間で人気を集めていた様子がわかる。
小笠原小枝・日本女子大教授(東洋染織史)の話 「正倉院の錦ほど緻密(ちみつ)ではないが、特別な人が着るための高価な織物と考えられる。平安時代の唐織を解明する糸口になる」