ニュース警視庁公安情報ネット流出は「情報テロ」 仕掛けたのは誰? (2/2)2010年11月08日 08時01分 更新
公安警察は、強固なピラミッド型の組織で情報は下から上へと吸い上げられ、断片的な現場の情報が幹部のところで一つのまとまった形になるとされる。幹部と同様、現場でも情報を共有する刑事警察とは事情が異なる。 今回、掲載された資料は内容が濃く幅の広いものだった。そのため、「現場の捜査員レベルが持てる内容ではない」(公安部OB)との見方が強い。 このため、幹部クラスのパソコンから流出した可能性もあるが、資料作成時期は約6年間の幅がある。1年から2年で異動することが多い幹部では、アクセス権限などからすべての資料を入手することは不可能という。 公安部ではPDF形式で資料の保管はしておらず、警視庁の専用サーバー内にある各課のファイルに保存。だが、114件の資料のうち108件はPDF形式のファイルだった。ファイルに残る記録では、大型連休中の5月2日から4日にかけてPDF化されていた。この時期に集中して、電子データから直接変換されたとみられ、入手時期も同時期の可能性が高い。 警視庁の専用パソコンから外部記憶媒体にデータを移すと暗号化処理され、別のパソコンには移動できないという。電子データで直接PDFに変換されていることから、警視庁のサーバー内から資料が抜き出された疑いが浮上している。 「サーバー内に侵入されたとすれば、他の資料も抜き出されても不思議ではない。第2、第3の“攻撃”をしかけてくることもあり得る」。警視庁幹部は「情報テロ」の脅威に警戒を強める。 青森中央学院大の大泉光一教授(国際テロリズム)も「管理の仕方がずさんどころではない。管理システムに問題がある。なぜ起きたのか、原因を究明することが大事。今後も同じような流出事件が起きる可能性が高い」と警鐘を鳴らす。 国民の生命脅かすインテリジェンスの危機「サードパーティールール」。情報の世界では、第三者に情報提供する場合は提供元の同意を得るというルールが存在する。 今回流出した資料の中には、このルールに基づいて海外の情報機関から提供されたものやFBIからの捜査要請も含まれていた。外事警察、とりわけ国際テロの取り締まりには海外機関の協力は不可欠。だが、今回の件で国際的な信用が地に落ちる可能性がある。 外交ジャーナリストの手嶋龍一氏は、テロ情報は一国では成り立たないと前置きした上で、「日本との情報交換が危険と他国からみなされる。おのおのが極秘の情報源で命をかけて情報収集している。良質な情報は提供してもらえなくなる」と今回の問題の深刻さを指摘する。 警視庁は「資料が内部資料であるか調査中のため内容についてはコメントできない」としている。資料が本物であると認めれば海外の信用を失い、認めなければ真相の究明はできないというジレンマを警視庁は抱えている。 「国として、きちんとしたインテリジェンスのセキュリティーが構築されていない。国をあげて横断的に情報を管理するシステムの構築を本気で考えなければならない」 日本大学法学部の福田充教授(情報危機管理)は、国家としてのインテリジェンスの重要性を見つめ直すべきだと主張する。 関連記事
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