耳かきエステ店員ら2人が殺害された事件で殺人罪などに問われ、検察側が裁判員裁判で初の死刑求刑をした無職、林貢二(こうじ)被告(42)に対し無期懲役を言い渡した東京地裁判決(1日)について、検察側は10日、控訴断念の方向で検討を始めた。裁判官のみで審理する控訴審で判断を覆すのは極めて困難とみている模様だ。弁護側は既に控訴しない方針を決めており、15日までの控訴期間を経過すれば無期懲役判決が確定する見通し。
判決によると、林被告は09年8月3日、東京都港区西新橋の耳かきエステ店員、江尻美保さん(当時21歳)方に侵入。1階で祖母の鈴木芳江さん(同78歳)の首をナイフで刺すなどして殺害し、2階で江尻さんの首を別のナイフで突き刺し9月7日に死亡させた。
検察側は「一方的な好意を拒まれ、落ち度のない2人を殺害した」として死刑求刑したが、判決は▽うつ状態で思い悩んで起こした▽鈴木さん殺害は計画性がない▽被告は前科がなく反省している--などとして死刑を回避していた。
法廷で極刑を求めた被害者遺族は、検察側に控訴するよう要請していた。しかし検察側は、控訴審で新たな証拠の提出が原則認められていないことなどから、死刑判決を得るのは困難との見方を強めているとみられる。
裁判員裁判の控訴審について最高裁司法研修所は09年3月、「極めて重要な事情を見落とした場合などを除き、1審の判断を尊重すべきだ」との考え方を示す一方、死刑か無期懲役かが争われた事件については「なお検討を要する」とした。
毎日新聞 2010年11月11日 2時30分(最終更新 11月11日 9時56分)