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きょうの社説 2010年11月11日
◎尖閣映像流出事件 問われる海保の情報管理
 
 中国漁船衝突の映像流出事件は、内部からの流出の疑いが強まっていたとはいえ、法の
秩序を守り、執行する立場の海上保安官の行為と分かれば、やはり衝撃的な展開である。動機や入手経路など詳細は分かっていないが、事件捜査に関与していない神戸海保の保 安官がなぜ映像を入手できたのか。組織の危機管理、情報管理体制に甘さがあったことは間違いなく、海保トップの責任が問われる事態である。 流出した映像は、海保と検察に保管されていた。検察が内部調査で流出を明確に否定す る一方、海保は自力での解明を断念し、検察、警察に告発して捜査を委ねた。海保は警察などと同様、国の治安を担う機関だが、それにふさわしい危機管理体制が備わっているのかという疑問が生じている。 海保に関しては、国土交通省の外局でいいかという議論もある。日本を取り巻く海洋環 境の変化をみても、領海警備の比重は確実に高まっている。再発防止策とともに、組織の在り方に踏み込んだ根本的な議論が求められよう。 映像流出については「真実が分かった」などと肯定する声も相次いでいる。尖閣諸島付 近での衝突事件発生後、政府は腰の定まらない対応を続けた。流出の背景には、映像の公開がなされなかったことがある。一連の対応に現場で不満が募ってもおかしくない。 だが、映像公開の是非と資料流出は別次元の問題である。政府が非公開とした重要資料 が一公務員の手で容易に公開されたことは、国家の危機管理という点で大きな問題をはらむ。今回の場合、どんな理由であれ、その行為を正当化することはできない。流出映像が国家公務員法の「秘密」に当たるかという法的な論点はあるとしても、安易に英雄視するムードには違和感がある。 動画サイトへの映像投稿は、神戸市内のネットカフェで行われていたことが判明した。 匿名性が高い場所であり、本人が告白しなければ捜査は難航する可能性があった。警視庁作成とみられる国際テロ関連文書の流出も深刻な事態に陥っている。捜査機関にとってネット社会の進展に合わせた情報管理体制の構築は急務である。 
 
 
 
◎納税の報奨金廃止 徴収率向上の努力さらに
 
 税金を1年分まとめて前納した人を優遇する「前納報奨金制度」を廃止する自治体が県
内で相次ぎ、継続しているのは3市町だけとなった。徴税コスト削減などのため、納税組合への報奨金を廃止・縮減する市町も続いている。行政のコスト削減努力は当然ながら、税の徴収率引き上げ効果のある取り組みにも力を入れて、はじめて合理的な税務の行財政改革となる。前納報奨金制度廃止の理由の一つに挙げられる口座振替制度の普及は、自治体によって ばらつきが大きく、例えば、金沢市の市税の口座振替率は30%台、県の自動車税の口座振替率はまだ10%台にとどまっている。徴税コスト削減と徴税率アップの両方に効果のある同制度の拡大、定着に各自治体はさらに努めてもらいたい。 市町・県民税や固定資産税などを一括納入した場合に、一定の報奨金を支給(同額を差 し引いて納税)する前納報奨金制度は、戦後の混乱期の昭和20年代に創設された。税収の早期確保や自主納税意識の高揚などが目的である。 しかし現在では、税の徴収率が90%を超えており、同制度を利用できない給与所得者 らの不公平感も強まっている。制度の所期の目的は一通り達成され、時代の役割をほぼ終えたといえよう。 前納報奨金制度とほぼ同時期にスタートした納税組合制度も、歴史的な役割は低下して おり、納税に関する個人情報保護の観点から問題視する意見も強まっている。このため、最近では小松市や七尾市で納税組合が廃止された。 ただ、徴税率は大幅に高まったとはいえ、個人住民税などの滞納額は近年、増加傾向を たどっている。2009年度の県税収入決算では、滞納税額が前年度比6%増の約44億7400万円に上るという。国から地方への税源移譲に伴い、個人県民税の滞納額の増加が目立っている。 個人県民税の徴収業務も行っている市町は、前納報奨金制度や納税組合制度の廃止をカ バーするため、口座振替による納税を奨励しているが、取り組みに温度差があるのが実情である。 
 
 
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