12月18日
結局僕は、金村のおばさんの手紙の続きが気になって眠れませんでした。8月の暑い日、、何があったのでしょうか?僕は陽子さんの事も含めて、解答の出ない悶々とした日々を過ごしているのです。でも、そんな事を言っている暇はないのです。今日、夜叉のメンバーが揃いも揃って「Amwayを辞める」と言い出したのです!!松村先輩は硬直していましたが、そこは青年教学3級の正義の松村先輩。理利整然と夜叉のメンバーに説いたのです。
「お前等な、アムウエイはあくまで手段なんやで!手段や!!何の手段やか解るか! それはな「夢」や!夢を実現する為の手段なんや!!お前等な、アムウエイの事勘違いしとんねん。アムウエイで得られたもん考えてみい!アムウエイに出遭ったお陰で素晴らしい成功者と知り合うこと出来たやろ!人の繋がりは大切なんやで!人は一人では生きていけへんねん。そやから手と手をつないでネットワークを組まなあかんねん!!そら、最初は辛いわな。リスクもあるねん。でもな、リスクなくて成功は無いんやで。池田先生も言うとったやろ、「美しいモノは共有するものです」ゆうててん。聖教新聞にも載ったやろ!アムウエイで作られる人間関係は美しいものや!そやから俺等はネットワークを組んでその美しいものを育てていかなあかんねん。そして大きく育った時に、みんな成功して夢を実現出来るんや!!」
僕は感激して涙が出ました。もう、目が潤んで松村先輩の顔がはっきり見えないのです。僕はこんなに素晴らしい松村先輩と一緒に暮らしている事を本当に誇りに思いました!!!陽子さんのパンチラなんて小さな物なんです!(でもしっかり頭の中に焼き付けていつでも再生出来ます)。夜叉のメンバーも感激していました。
「そうじゃ、そうじゃ!金がなけりゃー、セルシオ買えんけーのう」
あのアムウエイを最初に辞めたいといった信吾さんが、そう言いました。さすがは松村先輩です。アムウエイという素晴らしいネットワークビジネスの絆をより一層強固なものにしたのです。僕たちは成功が約束されているのです。たとえ横槍を刺されても、僕らは固いネットワークで結ばれているのです。
僕らはこの誓いを確かめる為に太華山に登りました。僕らは美しい志を胸に太華山から徳山湾を見下ろしました。でも、雨が降っていて見えませんでした。しかし、雨なんて関係ないのです。ココロなのです。
「成功を祈る強い正義の心が勝利を呼ぶんだーーー!!頑張るぞーーー!!」
ちょっと池田先生を真似て、僕は太華山の頂上で叫びました。松村先輩も、「おれたちは絶対に成功するんだーーー!!」と叫びました。夜叉の皆も思い思いの夢を叫びました!!(放送禁止用語も入っているのでここでは恥ずかしくて書けません)
太華山の誓い。これが新たな夜叉のスタートとなり、アムウエイの成功の始まりとなるのです。この日は僕は一生忘れません!!いろいろな僕の悩みもこれで吹っ切れました!!僕は松村先輩を信じて頑張って成功するのです!!!
その夜、僕は陽子さんの夢を見て、夢精しました。
12月19日
奈良の哲さんから手紙が届きました。
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ディストリビューターの皆様へ
拝啓
いつもお世話になっております。
皆様のご協力と絆の成果もありまして、来月はいよいよダイレクトディストリ
ビューターへ昇進出来そうです。しかし、その結果、大量の不動在庫を抱
えてしまいました。でも、これは私のダイレクトディストリビューター昇進祝い
と致しまして、Amway製品の数々をディストリビューター価格の半額で大
バーゲン致したく思います。バーゲン価格につきボーナスポイントは加算
されませんが、この機会をお見逃し無く。
これからも宜しくお願い致します。
敬具
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これでいよいよ僕らの上になる哲さんがダイレクトディストリビューターになって、僕らのグループは独立するのです!!哲さんは凄い人なのです。哲さんの精力的なAmwayの活動は、奈良県のみならず、新木場公園のハッテンバにまで至り、その活動と人望は誰もが認めるものなのです。
松村先輩は言いました。
「こうやって上の人間が頑張ると、エエ刺激になるわな!なぁ春樹!俺等もがんばらなあかんで!」
しかし、なぜ哲さんが素晴らしいAmwayの100%還元保証を利用して返品しないのか、僕には疑問に残りました。そういえば、兄も「目先の利益に目の眩んだ奴が、、」云々と言ってた事を思い出しました。でも、アムウエイの素晴らしい製品が半額で買えるなんてチャンスはありません!!僕はトリプルXを3箱(15000円ですよ!!!安い!!!)買い、病床のお母さんに届けたいと思います。
でも、僕は誰一人アムウエイの素晴らしさを伝える事が出来ません。僕にはやっぱりアムウエイビジネスは向いていないのでしょうか。僕はそう思いながら、パリパリになったパンツを揉み洗いしました。
そういえば、片岡君の言っていた、まっすぐ上に飛んでいく飛行機の事、気になります。一体、片岡君が見たモノは何なんでしょうか。もしかしたら、兄の言っていた暴力装置と関係があるのかもしれません。
12月20日
松村先輩が「財務」にお金を12万円振り込みました。今年1年の松村先輩の躍進は素晴らしいものがあり、Amwayディストリビューターとしてのネットワークも構築されつつあるのです。松村先輩はその自分の成功と自分自身の人間革命という意味を込めて、素晴らしい結果を財務として収めるのです。素晴らしい事なのです。
12月21日
今日、僕はトンデモない事実を知ってしまったのです。皆さん、週刊少年マガジンを読んでいますか??(敵である週刊新潮ではありませんよ!!)そのマガジンにMMRという連載モノがあるのですが、僕はそのMMRを読んで、片岡くんが言っていた「まっすぐ上に飛んでいく謎の飛行物体」の正体にピンと来たのです!!
そうです、その飛行物体とはUFO、、、、そう、UFOなのです!!
ずっと前にKRYの木曜の夜7時から木曜スペシャルでやっていました。米軍がウンモ星人と結託して新しい飛行物体の開発をやっている事。マジスティック12とも言ってましたね。きっとそうなのです。あれはUFOなのです!!そして、べいていの正体=UFOなのです!!。岩国は極東の重要な戦略をしめる場所ですし、治外法権の日本では核開発はもとよりUFO開発も行ないやすいでしょう。きっと日本の悪い厚生省の人たちもUFOの開発に関わっているのです。ウシの内臓が取られた猟奇事件がその動かぬ証拠となっているではないですか!!しかし、これは大変な事です。僕に脳天チョップをした黒いベースの人も実はいい人だったので、岩国のベースの人たち全員がべいていという事ではないのかもしれませんが、つまりです。日蓮大聖人の教えを正しく実践する学会員と、曲解して学会を嫉妬する僧の集まりである宗門があるように、岩国のベースの中にもべいてい(宇宙人)に力を貸す絶対悪でありサタンの使いである人たちがいるのです。
ということは、兄はやっぱり、べいていと戦っていたのです。兄は大学時代にべいていと戦っていたが、その背後にある巨大な組織に拉致・監禁・洗脳・折伏され、いまの俗物を作られてしまったのです。しかし、兄も信念を貫く男です。その程度の事で気が変る訳がありません。ですから、べいていは陽子さんを兄の監視につけ、兄に多額のお金を与え、兄の信念をごまかし続けていたのです。そして、日夜兄はべいていに監視されつづけていたのです。間違いありません!!兄は間違いなく洗脳されているのです!!
僕はこの世の中には洗脳というものは無いものだと思っていたのですが、兄はべいていに洗脳されてしまったのです。
そういえば、僕は最近、涙もろくなってきました。これは一体何なのでしょう。もしかして、べいていは既に僕に目をつけ「メソメソ電波」を僕に投げかけてきているのでしょうか??、、そうですね、岩国から光市までの距離なら十分に電波は届くでしょう。間違いありません…。しかし、僕のこの半年の人生は、何かの小説のあらすじの様にすすんでいます。これもオカシナ事だと思うのです。僕の思う事すべてが何かのあらすじにそって動いているような、、そんなレールの上をすすんでいるのです。これも、きっとべいていの仕業??
僕が今、ここに立ち止まっていると、松村先輩や夜叉のメンバーに迷惑をかけてしまう、、、、。どうしたらいいんでしょう。べいていとの戦いは松村先輩には関係のない事ですし、僕と兄の問題で解決しなければいけないのです。
松村先輩に迷惑をかけるわけにはいきません。
12月23日
僕が光市にいては、松村先輩に迷惑をかけてしまう…。。
僕は荷物をまとめ、田布施の実家に帰ります。
松村先輩には簡単な置き手紙を置いて。
ただ一言。
「追わないで下さい。理由は聞かないで下さい。 春樹」
御免なさい。松村先輩。しかし、こうするしか方法は無かったのです。松村先輩に迷惑をかけるわけにはいきません。ゴメンなさい。
12月24日
田布施の実家に戻った僕はすぐに片岡君に事実を知らせる為に電話をしました。僕は片岡くんに「まっすぐ上にあがる謎の飛行物体はUFOだ!」と告げたのです。すると片岡君は大笑いをしながら、
「あれは垂直離着陸戦闘機ハリアーのことなんよ」
と言ったのです。何なのでしょうか?そのハリアーという物体は?その昔、ゲームセンターにスペースハリアーというゲームがあって僕はウイウイジャンボをやっつけた事があるのですが、あのゲームにはドムとバルキリーとバーバリアンは出ましたがハヤオウで出ませんでした。なにより、あくまであれはゲームの世界の話です。僕はなっとくがいかないので、片岡くんに会う事にしました。片岡くんは、
「今日はクリスマスじゃけぇ、山にいってハリアーでも見ようか」
と言いました。クリスマスと山の関係は良くわからないのですが、僕は山陽本線に乗って片岡くんの住む南岩国へといきました。
南岩国には、迷彩服を身に纏い、キャンプ道具を一式持った片岡くんが立っていました。ごていねいに僕の迷彩服まで持っていました。これでは僕の夜叉の特攻服の出番がありません。
12月25日
イブの夜、僕ら二人は山の中でキャンプをしました。片岡くんがスターライトスコープを僕に渡し、僕はそのスコープで岩国の基地を見ました!!
その時でした。基地にあった一機の飛行機が凄い轟音をあげて垂直に飛びたったのです!!まるでUFOのように!!僕は自分の目を疑いました。飛行機が垂直に飛んだのです!!
僕はすごく恥ずかしくなって赤面してしまいました。僕はべいていとの本格的な戦いを前に、皆さんに迷惑をかけないように家を飛び出したのですが、べいていと米軍は関係なかったのです。アメリカ兵の皆さんごめんなさい。僕の早とちりでした、、、、。 しかし、そうなるとますますべいていの謎は深まるのです。
そんな赤面している僕に片岡くんは
「誰にでも間違いはあるけぇ」
と言ってくれました。片岡くんは僕に真実を伝える為に、ここまでしてくれた素晴らしい人なのです。この人だったら絶対にAmwayで頑張って成功出来るはずなのにもったいないのです!!
そんな笑いの中、凄い轟音が聞こえてきました。ラッパの音もします。このエンジンの音は、、!そうです、XJ400です。空冷4気筒直管マフラーなのです!!夜叉のメンバーなのです!!そして、この連続音は間違いなくL型の音!!夜叉のメンバーが乗っているL型6気筒のR30ポールニューマンスカイライン竹ヤリデッパの音なのです!!
山のふもとでその音がとまり、かわりに、太鼓の音と法華経のお題目が聞こえてきました!!どんどん近づいてくるのです。太鼓とお経の音が暗闇の中、僕のほうに近づいてくるのです!!
そのお経はまわりからやってくるのです。僕の背後からも聞こえてきました!!僕らは完全に包囲されてしまったのです!!
「あぁぁん、ごめんなさい」
僕のそんな悲痛な叫びの中、お題目と太鼓の音の中から
「夜叉の鉄則 第8条!! 苦難は共につれづれなるままにあやしゅうこそ物乞いし!」
と聞こえました。あぁ、僕はどんな形であれ、自分一人で逃げ出した為に、怒られているのです。でもどうして僕がここにいる事がバレたのか?
やっぱり山陽本線に真紅の特攻服を着て岩国へ行ったから目立ってしまっただけなのでしょうか。
僕は夜叉のスカイラインに乗り、光市へ連行されてしまいました。
12月26日
「春樹よ、わしらの人間関係は美しいものなんやで!解るか!それは今更いわんでもわかるやろ!悩みあるんやったら何でゆうてくれへんねん。残された人間が心配するっちゅーこともあるやろ。」
僕は松村先輩にべいていの話なんて出来ません。だって、、、、。
僕は何も言えず、たた黙るばかり。これでは誤解されるだけなのです、、、。
でもそこは青年教学3級の正義を実践する松村先輩。やさしく
「まぁええわ。でもな、春樹。悩みは一人でかかえたらあかん。Amwayやってそうやろ。一人で頑張っても成功できへんねん。わかるか、美しい花はなかなか奇麗にそだたへん。農家のお米だってそうやろ。成功の花はみんなで育てていくもんや。信じる心が絶対善と池田先生もゆうとったしな。」
と言って、僕を許してくれました。
その夜、僕はこっそりと松村先輩の日記を目撃してしまったのです。
そこには
「春樹はアカン。ぜんぜん戦力にならへん。今を頑張れへん人間は、今後も頑張れへん。骨折り損や。まぁ、わしも順調にいっとるわけやから、アイツのかわりくらいなんとでもなるわな。」
と書いてあったのです。
12月27日
松村先輩は僕に一体何を期待していたのか、そして僕はどんな期待を裏切ったのか、僕には解りません。
でも、僕は悔しかった。なぜならば僕は本当に松村先輩を尊敬し、松村先輩を僕の尊敬する池田先生と同じくらい尊敬していました。
なのに、、、、。
僕は朝、荷物をまとめ再び家出を決心しました。松村先輩は股間部に手を突っ込んで揉み揉みしながら寝ています。
僕は朝の電車で光駅をたって、田布施へ向かうことにしました。もう、本当にこれがさよならです。
僕は歩いて光駅へ向かいました。駅前のお土産屋で意味もなく鳩子の海を買いました…田布施でも帰るのに。。切符を買い、上り電車を待つ僕。
思い出の回想。
松村先輩との生活。楽しかったです。
と、僕が思い出に浸っているとき、188号線の虹ケ浜海水浴場の交差点の方から爆音と共に真紅の特攻服に身を纏った夜叉のメンバーが現れたのです!!爆音とお題目と太鼓の音にあわせてやってくる一行は夜叉のみんなに違いないのです!!
駅前は空に向かってそびえるロケットカウルをつけたCBF400を筆頭にXJ400、GPZ400が現れたのです。そして後方からお正月仕様にスペシャルチューニングされたショッキングピンクのシャコタンソアラが!!
ソアラから一人の男が飛び降り、右手にラジカセに法華経。左手に小太鼓を持った松村先輩がこっちへ向かって走ってくるのです!!
南無妙法連華経、、、とお題目を唱えながら、松村先輩が歩道橋を渡り僕のいる1番ホームへと走ってくるのです!!
僕の前に、また現れたのです。
僕は思い切って言いました。
「松村先輩。僕はもう、用なしなんですか、、、。アムウエイに頑張れない僕は、負け犬なんですか、、」
「…………。」
「僕は駄目な男です。松村先輩の気持ちもわかります。だから、僕の変りを見つけて頑張ってください。僕はもうやっていけません。」
「………・・。」
松村先輩は何も言いません。沈黙が流れたのです。そして岩国行きの上り電車がやってきたのです。
「松村先輩、もう、これでおわかれです。いろいろとありがと、、、」
と言った瞬間、松村先輩は言ったのです。
「春樹よ。俺はお前の事をホンマ大切に思っていままでやってきたんや。そや、弟みたいなもんや。わかるか?お前にも昔話したやろ。わしにゃ二つ年下の弟がいてん。でもな、あいつが7つの時にな、下松の188号線沿いで交通事故にあってな、生きてたらお前と同い年やねん、、、、。俺はお前の事、本当に家族のように思っててんねんで。分かってくれや」
「!!」
僕は今まで松村先輩の過去の事はまったく知りませんでした。松村先輩はこんな僕を先輩後輩の仲ではなく家族として考えていてくれたのです。それなのに僕は松村先輩を、、、、
走り去る電車のホーム。
僕は思いっきり松村先輩の胸の中で泣きました。泣き崩れました。
涙で松村先輩の顔がはっきり見えないのです。