12月7日
朝の10時にJR京都駅から新幹線に乗った僕と松村先輩と哲さんは東京にはお昼過ぎに到着しました。今回は僕等は皆、別行動を取り、夜は新宿からちょっと電車を乗り継いだ、参宮橋というところに借りたホテルに皆で集合することにしました。哲さんは京葉線に乗って、舞浜の東京ディズニーランドに行き、松村先輩は信濃町へ行ってそれから原宿の工藤静香のタレントショップに行くそうです。僕は八重洲口から外に出て母に教えて貰った電話番号を頼りに兄の所に携帯電話で電話をしました。
呼出音がなる毎に心臓が「どっくんどっくん」と高鳴ります。兄とは言ってももう十年以上会ってなく,考えようによっては松村先輩の方が余程,身近に感じられるのですから。
「はい,金村ですが」
?と思ったのですが、兄は旧姓を名乗っていました。しかし、電話の向こうではまるで,鈴がなるような美しい声の女性がテレビの中でしか聞いた事の無い東京弁で話しているのです。アレドナリンが頭の中で暴れまくっています。兄はたしか独身だった筈なのですが、、、。間違ってしまったのでしょうか。
「あにょー,あにょー。ウエロと申しますん。」
僕は緊張の余り,ろれつまで回らなくなってしまいました。
「あにょー,あにょー,ああああ,兄,重雄さんいらいらっしゃいますか?」
「ウエロさんですね。少々,お待ち下さい。」
電話番号は正しかったみたいです。安心しました。「少々、お待ち下さい。」と言う事は兄はちゃんと在宅しているみたいなのですね!!そして、兄が出てきました。
「もしもし,ウエロさんですか?どちらのウエロさんでしょうか?ご融資の件ですか?」
ご融資?
僕はたじろいでしまいましたが、そうなのです、兄はちょっと勘違いしているのかもしれません。僕は思い切って切り出しました。
「はる,春樹です!山口からこっちへきました。兄さん!」
「。。。。。。。。。。。」
この時,兄が何故沈黙したかは解りません。しかし兄はすぐに話始めました。
「春か?春なんだな?積もる話しも一杯あるが兄ちゃん今,手が話せないんだ。まぁ今夜は空いているからな。これから春樹はどうするんだ?夜に家に遊びにこないか?」
兄は浮かないような口調で言いましたが、僕も同じ様に,浮かない気持ちを抱えながらも色んな兄への疑問を解消する為に「うん、行くけー。兄ちゃん」と答えました。すると兄は
「じゃあ。秘書の陽子を迎えに行かせるから,陽子と待ち合わせの場所と時間を決めてくれ。」
秘書の陽子さんは今から僕を八重洲口まで迎えに来てくれるそうです。車はBMW850iという車なのです。哲さんもベームベーに乗っていますが、陽子さんは「ビーエムの850」と呼んでいました。陽子さんは兄の手があく夕方まで僕を東京見物してくれるそうです。しかし秘書の陽子は僕に気があるのでしょうか?とても親切な東京弁で待ち合わせの場所と時間を決めてくれるのです。気が無いとここまで優しくはしてくれないでしょう?
とりあえず僕はその場で陽子さんを待ちました。そして僕は、何を期待したのか未だに解らないのですがこの日の為に準備した新しいパンツを東京駅のトイレで履き替えたのでした。
陽子さんは10分遅れで八重洲口にやってきました。陽子さんは車から降りて僕のところに現れて
「春樹さんですね。秘書の陽子と申します。」
と僕に言い、「どちらに行きますか?」ってにっこりと微笑んで言ってくれたのです。陽子さんは色白で目だちのはっきりした凄い美人でした。まるでテレビ番組から飛び出してきたような美人なのです。僕は興奮しました。なぜか下半身に熱い血潮が流れていく事を感じ取りました。
僕は緊張して、
「あ、あにょーー、ぼ、ぼく解りませんです、、ど、どど、っかいーところに連れてってください、、、あ、あああ、そ、そのゲ、ゲームセンターがいいです、、」
というのが精いっぱいでした。僕はBMWに乗り込み(左ハンドルなんですね!)陽子さんはサングラスをかけてBMWを走らせました。
「ジョイポリスでいいかしら?」
と言った迄は覚えています。陽子さんはものすごい加速をしながら一気に首都高速に乗り一気になんだか大きな橋を渡って変なところに連れていかされました。よくは覚えていないのですが、東京テレポートなんとかっていう駅に降ろされて、僕に現金2万円を手渡し
「駐車場が満車なので、私は別のところに駐車してきます。あとで携帯電話を鳴らしますので、、」と言ってまたロケットみたいな加速をして見えなくなってしまいました。僕は陽子さんに教えてもらった東京ジョイポリスっていうゲームセンターに入りました。入場料がいっぱい取られましたが中にいろいろアトラクションがあるそうなのです。でもどのアトラクションも人が多く最低1時間は待たないと駄目みたいです。僕は結局バーチャファイター3をやっていたのですが、陽子さんも一緒にいてくれたら嬉しかったのに、、、。結局、陽子さんは車を駐車するために、隣の駅前にある駐車場に車を停めたそうですがNECが何かイベントをやっていてそこも車が沢山あったそうです。
ジョイポリスでは若い女の人が沢山いました。制服らしい服を着ていたのできっと高校生なのかもしれませんが、僕より大人っぽく、もしかしたらブルセラショップで買ってきた人が多くいるのか、もしくはコスプレパーティーをやっていたのでしょうか。みんな眉毛が「への字」になっていて、寸胴の靴下をはいていました。もしかしたらこれがよく深夜番組でやっている「コギャル」と呼ばれる人たちなのでしょうか?僕にはさっぱり解りません。ただ、一つ言えることは、僕がジョイポリスの階段の隙間から彼女達のパンツを目撃出来た事実は良かったと言う事です。松村先輩に自慢出来ます。
結局僕はジョイポリスでハンバーガーを食べて東京湾を眺めているだけで時間が過ぎてしまい、5時前頃に陽子さんがBMWで僕を迎えにきてれて僕らは、兄の住む家に行く事になりました。
僕は兄がどこに住んでいるか解りません。ただ覚えているのが「東京タワー」が奇麗に見えた事と、首都高速の天現寺というインターチェンジを降りたことだけでした。僕は夜景と人に見とれてよく覚えていなかったのです。
車の中でBMWの事を陽子さんに聞きました。するとこのBMWは兄の所有する車の1台だということで、主に陽子さんが使っているそうです。兄は羽振りがよくBMWに乗っています。もしかしら兄もアムウエイをやっていて成功したのかもしれません。その時僕はそう思いました。
僕は陽子さんに連れられ、エレベーターにのりました。一緒にエレベータに乗っていた別のグループの人は何故か金髪でした。瞳が青かったので外人さんなのです。でも東京の人は男の人も女の人も同じ髪型をしてなおかつ黒い髪ではないのです。だけど僕の周りの夜叉のメンバーも金髪なので僕には抵抗なんてないんですけどね。
そして僕は兄と感動の対面をしたのです。
「春、春か、よくきたな。オムニは元気にしてるか?まぁ座れよ。 おい陽子!コーヒーをもってこい!」
僕は久しぶりに兄と再会したのですが、何故か感激はありませんでした。しかし眼の前にいる兄は、大学時代の面影も無く、すっかり落ち着いていたのです。すると、部屋にチンピラ風の二人がやってきて言ったのです。
「社長、誰です?このションベン臭い田舎モンは?なんだ、おまえ、社長に何の用なんだよ。ガキの来るところじゃねぇんだよ」
と僕に凄んできました。
その瞬間です。兄が手にとったは灰皿がチンピラ風の男の眉間に跳んだのです!!
ゴツン!
鈍い音がしました。その瞬間、そのチンピラ風の男は眉間から血が流れ出し、その場にぐったり倒れました。そして兄は
「なんだ、コラァ! 弟が来てんだよ!!解んネェのかよ!!お前ら!!」
「ひぃぃぃぃ、す、スミマセン、しゃ社長!!」
もう一人のチンピラが倒れたチンピラを抱えて部屋を出て行きました。兄は追い討ちをかけるように
「解ってンだろうなぁ、アァン?」
と言いました。僕にその一部始終がさっぱり解りませんでした。
しかし、ここから僕は変わり果てた兄の姿を目の当たりにしたのでした。そして、僕は何も信じられなくなってしまったのです。
つづく