発信箱

文字サイズ変更
はてなブックマークに登録
Yahoo!ブックマークに登録
Buzzurlブックマークに登録
livedoor Clipに登録
この記事を印刷

発信箱:菅首相の強運=倉重篤郎(論説室)

 ビデオ流出問題はさておいて、菅直人首相は三つの意味で強運だ。

 第一に、TPP(環太平洋パートナーシップ協定)黒船化に成功した。平成の安眠を許さぬ貿易戦争の到来が新しい開国論争をもたらし、通商立国ニッポンの再生という本義に目覚めさせつつある。農業保護・強化との調整はあるにせよ、日本経済の失われた20年からの離陸に期待が集まっている。

 安全保障面では、図らずも中国の黒船的プレゼンスを国民に実感させた。「弱腰」批判はあっても、それを上回るナショナリズムが徐々に政権の求心力につながろう。

 第二に、自民党との政策連携の芽が出てきた。同党がこの国会に提出した財政健全化責任法案は、10年後に基礎的財政収支の黒字化を目指すために抜本的な税制・社会保障制度改革を求めるもので、民主党が6月に打ち出した財政運営戦略とほぼ同じ内容だ。自民の狙いは、来年度予算のタガをはめ子ども手当などマニフェスト項目を断念させることにあるが、その趣旨を丸のみする逆襲もある。両党を中心に国会で円卓会議を開き、持続可能な財政・社会保障制度を短期集中的に議論する好機になる。

 第三に、小沢一郎氏の国会招致カードを温存したままで補正予算成立のメドが立った。首相の煮え切らない答弁の数々に支持率は急落したが、慎重に慎重を重ねねじれ国会をくぐり抜けた。若葉マークとしては結果オーライの安全運転だろう。

 菅氏の強運は来年も続く。ポスト菅候補たちは自らの準備期間を長くしたい構えで、当面菅おろしは起きにくい。来年2月国勢調査速報値が出ると衆院の定数是正問題が、解散・総選挙のネックになる。かくて2年後の代表選まで波乱要因は少ない。ものは考えよう。かじりつくべきは石ではなく政策断行の意思である。

毎日新聞 2010年11月11日 0時05分

PR情報

発信箱 アーカイブ一覧

 
共同購入型クーポンサイト「毎ポン」

おすすめ情報

注目ブランド