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耳かき店員殺害:裁判員裁判、死刑を回避…地裁が無期判決

耳かき店員ら殺害事件の裁判員裁判で東京地裁に入る検察官ら=東京・霞が関で2010年11月1日午後3時6分、森田剛史撮影
耳かき店員ら殺害事件の裁判員裁判で東京地裁に入る検察官ら=東京・霞が関で2010年11月1日午後3時6分、森田剛史撮影

 東京都港区で09年、耳かきエステ店員の江尻美保さん(当時21歳)と祖母の鈴木芳江さん(同78歳)を殺害したとして、殺人罪などに問われた常連客の無職、林貢二(こうじ)被告(42)の裁判員裁判で、東京地裁(若園敦雄裁判長)は1日、無期懲役判決を言い渡した。検察側は裁判員裁判で初の死刑を求刑したが、判決は「一方的に江尻さんへの思いを募らせ悩んだ末の犯行。深く後悔しており人生の最後の瞬間まで内省を深めることを期待すべきだ」と死刑を回避した。

 東京地検幹部は判決後、控訴するかどうかについて「遺族の意向を踏まえ対応を決める」と話した。

 判決はまず「落ち度のない2人を身勝手な動機で殺害した責任は極めて重大で有期懲役を選択する余地はない。遺族が極刑を望むのも当然」と指摘した。そのうえで、最高裁が83年に示した死刑選択の基準「永山基準」に基づき、死刑と無期懲役のどちらを選択するか検討。江尻さん殺害の動機については「強い好意を抱いていたが、来店拒否で抑うつ状態になり、愛情が憎しみに変わって殺害を決意した」と認め、「極刑に値するほど悪質な動機とは言えない」との判断を示した。

 鈴木さんを執拗(しつよう)に刺して殺害したことは「江尻さん殺害に心がとらわれている中、顔を合わせたのは想定外で激しく動揺した結果」と指摘し、必然的結果とした検察側主張を退けた。「前科がなく、まじめに生活してきた」との弁護側主張は「酌むべき要素」と述べた。

 林被告が「恋愛感情はなかった」と繰り返したことには、「遺族が怒りを覚えるのは当然で本当の意味での反省を深めているとは認められない」とする一方、人格の未熟さやプライドの高さが原因として「遺族の声を聞いて態度に変化が見られる。被告なりの反省の態度は相応に考慮すべきだ」と結論づけた。【伊藤直孝】

永山基準に対する検察側、弁護側の主張と判決の認定
永山基準に対する検察側、弁護側の主張と判決の認定

 ▽大鶴基成・東京地検次席検事の話 判決内容を十分検討し適切に対応したい。

 ▽林被告の弁護人の話 当方の主張が認められ、裁判所及び裁判員の真摯(しんし)な判断に敬意を表する。

毎日新聞 2010年11月1日 21時19分(最終更新 11月2日 0時24分)

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