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【書評】『信念を貫く』松井秀喜著
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■さらに進化した思考法
スポーツ選手の著作はたくさん出版されています。しかし、知名度や好感度と部数が比例しているわけではないのが現状です。野村克也元監督による独自の野球理論は常に広い支持を集めていますが、実は珍しい事例と言えるでしょう。
そのため「スポーツと本は相性が悪い」「現役選手の本は難しい」といった「定説」も出版界には存在します。が、そんな定説を覆したのが2007年に発売された松井秀喜著『不動心』。ヤンキースで活躍中の松井選手が左手首を骨折、選手生命を脅かすほどの大けがをどう乗り越えたかに始まり、その人生哲学、思考法がふんだんに綴(つづ)られた一冊です。
コントロールできることとできないことを分ける、悔しさはあえて口に出さない、努力できることが才能である…数々の挫折を乗り越えてきた彼の思考法には、野球ファンならず多くの読者から反響がありました。「人生で悩んだときに読む本」とも紹介され、33万部を超えるベストセラーになったのです。
その後も松井選手には試練が待ち受けていました。相次ぐ故障で手術を余儀なくされ、守備のポジションを奪われます。これほど長期にわたって苦しんだ時期はないでしょう。
困難に直面したとき、迷いが生じたとき、何を考えどう乗り越えてきたか。本書にはさらなる進化を遂げた松井選手の考えが、余すことなく綴られています。
ワールドシリーズMVPを取るまでの布石、移籍の真相など、初公開エピソードも満載。前作を上回る感動を保証いたします。(新潮新書・714円)
(新潮社出版部 笠井麻衣)