人力車を引いて日本一周の旅に挑んでいる東京都出身の山田祥平さん(32)が22日、2年半の歳月を経て、出発点の三重県伊勢市に戻ってくる。旅路で知り合った中川水帆さん(28)が出迎え、2人はこの日に挙式する予定だ。「夢を持つことで人はもっと自分らしく輝ける」。旅ではこんな思いを大勢の人に伝えてきた。山田さんは「人力車は僕を僕らしくさせてくれた。人力車を引いて多くの人と触れ合う夢が実現できた」とゴールを目前に目を輝かせた。
山田さんは京大在学中、アルバイトで人力車を引いてから、そのとりこになった。人生に思い悩んでいた時期で、人力車は「人の役に立つ喜びを実感でき、人と人との心を近づける手段」だったという。3年間休学して人力車を引き続けた。
07年に大学卒業後、会社勤めをしたが「もっと多くの人と触れ合いたい」と4カ月で退職。「自分らしく生きることを教えてくれた人力車を引き、多くの人に自分らしく生きようと訴えたい」。伊勢市の真珠店に展示されていた人力車を借り、08年5月、日本一周をスタートさせた。
都内で知人から中川さんを紹介されたのは出発の翌月。山田さんは6日後、中川さんを人力車に乗せながら求婚した。
同年7月、栃木県内でトラックと接触し、人力車が壊れた。修理のため旅は中断したが09年3月、人力車に2人分の荷物を載せ、中川さんと2人で再出発した。出会った人は約2000人。中川さんは今年6月、結婚式の準備へ。2人は「11月22日、伊勢で再会しよう」と呼び掛けており、人前式を予定している。山田さんは「出会いが旅の意義だった。受けた恩を、前に進む力に変えられた」と触れ合った人々に感謝する。ゴール後、伊勢で新婚生活を始め、新たなスタートを切る。【木村文彦】
毎日新聞 2010年11月10日 14時19分(最終更新 11月10日 17時32分)