〈11月8日、午後に3時間半ほど、新しい日記を公開した。
しかし、内容が、誤解を招くおそれがあるので、午後4時半頃に削除した。
改めて書き直す。〉
11月1日から、今年二度目の禁酒月間に入った。(9月か10月も禁酒月間にしよう思ったが、人と会うことが多く守れなかった)
11月一杯は酒を飲まない。
ところが、11月5日に、「日本全県味巡り」の和歌山県篇の時にお世話になった、和歌山県庁の仲さんが、我が家に来られた。(仲さんには単行本103巻の「和歌山県篇」の冒頭で、活躍していただいているので、どんな人柄かお知りになりたかったら、その頁をご覧下さい)
横須賀のデパートで、和歌山県の物産展を開いていて、その関係で横須賀まで出張して来られたので、ついでに私の家によって下さった言う訳だ。
仲さんが来られたからには、酒を飲まないわけにはいかない。
そこで、5日だけ禁をといた。
仲さんは高校野球の名門和歌山智辯高校の野球部出身である。
実に、溌剌とした愉快な人格で、酒も強い。楽しくわいわいと騒いで酒を飲んだ。
その代わり、禁酒月間は、11月一杯ではなく、1日延ばして12月1日までにする。
私は意志が弱いので、週に4日飲んで3日休む、などと言うことが出来ない。
飲まないのなら、丸1ヶ月か2ヶ月飲まないと設定しないと駄目なのだ。
酒を飲まないからと言って仕事が進むわけではないが、「ああ、だらだら酒を飲んで、みっともないな」と言う自己嫌悪からは逃れることが出来る。
それにしても、禁酒月間を年に2回も作るのは問題かなあ(問題って、どう言う問題なんだろうね)
ところで、先日以来、尖閣諸島での中国漁船と海上保安庁の巡視船との衝突後、引き起こされた日中の問題について色々考えてきた。
南京虐殺、全部で2000万人とも言われる中国人を殺戮したこと、731部隊の非人道的行為、その他、日本が過去に中国に侵略して犯したさまざまな犯罪的行為について、日本政府がきちんと謝罪し、被害を受けた人々に対する補償をすることが、真の日中友好関係を築くための最初の一歩である。
日本と中国は、真の友人同士にならないといけない。
そう考えて行動している日本人は、少なからずいる。
直接的な行動や、言論活動などに参加しなくとも、そのように考えている人は少なくない。
私もその一人である。
そのような考えを抱いている人達も、最近の尖閣諸島周辺海域での中国漁船と日本の海上保安庁の巡視船との衝突事件があって以来、日中友好を声高に言えなくなっているのではないか。
しかし、このような状況だからこそ、私は、周囲の声に逆らって、敢えて、中国の人々との友好を深めようと強く言いたいのだ。
中国との友好関係をきちんと築かずに、日本の過去と現在と未来もあった物ではない。
過去とは、中国から輸入した文化が今の日本文化の基礎の大きな部分を構成していると言う事実。文化の根幹である文字も中国から伝わった物だ。(もっとも、文字もそうだが、中国の文化は朝鮮を経て伝わってきた物が多いのだが)
未来とは、中国に限らないが、世界中の国と平和で豊かな関係を結ばなければ日本という国は生きて行けないという事実。
特に、隣の、朝鮮・韓国、中国とは世界中のどこの国よりも日本が一番親しい国でなければならない。
この事実を忘れて、一時の揉め事で、全てを破壊するような愚かなことをしてはならない。
中国嫌いの人々、あるいは、戦前の皇国日本の姿を有り難く思い、その時代の日本に戻りたいと願っている人間にとって、今度の中国との揉め事は願ってもない絶好の機会だろう。
中国の悪口をどんなに言っても、全く反発なく受け入れられるのだから。
私達の子供、孫の世代の日本と中国が良い関係であるためには、今の揉め事を無闇に大きく深刻にとらえて、中国に対する反発心を引き起こすべきではない。
11月5日号の週刊朝日には、「米空母を購入して対抗せよ!」などと言う記事が載っている。
言っているのは警察庁のOBである。
OBと言うからには50歳を超えた大人だろうが、言うことは、知性も洞察力も欠いた、幼稚なたわごとである。(OBとは『大馬鹿』の略か)
その中に「米空母を2隻、手持の米国債で購入する用意がある、と密かに米に打診してみるのも手でしょう」とあるのには、驚き呆れた。
「手持の米国債で空母を2隻購入する」、と言うのはアメリカに「米国債」という借金のかたに、空母2隻をよこせというのと同じことだろう。
日本とアメリカの、この緊張した経済関係の中で、「借金のかたに空母を寄越せ」などといったら、どうなるか。しかも、空母はアメリカの兵器の中で最先端の技術のつまった物で、それをどうして他国に渡すはずがあろうか。
こう言う人間は、今更勉強し直せと言っても無理だから、頭を丸ごと、交換するしかない。デパートのマネキンの頭でも、今の頭よりましだから、是非交換するように勧めたい。
と、この記事に驚いていたら、11月19日号には「胡錦涛主席の仰天発言!?」として「日本を植民地にする!」という記事を載せた。
中国から亡命した反体制作家の
「胡錦涛氏は、日本を含むかつての列強を、中国の植民地にするつもりです」
と言う意見を無批判に掲載している。
この反体制作家は今でも中国にさまざまな情報源を持っているそうで、その作家によれば、胡錦涛氏は「北京郊外の地下深くにある軍事基地」で、「かつての列強を植民地に変えていく」という演説をしたという。
「地下深くにある軍事基地」ときたら、もう、まるで、アメリカ製のCIAなどの絡む、「政治的陰謀・活劇ドラマ」の世界だ。
そう言えば、アメリカの諜報部と中国が陰謀を闘わせるテレビドラマがあったな。
この亡命作家は、アメリカのテレビ映画会社にこの筋書きを売ったらどうか。
あまりに、ばかばかしくて、三流の映画会社でも、そんな筋書きは買ってくれないだろうけれど。
それにしても、こう言う記事を載せるとは、「週刊朝日」も、「駄週刊誌に」に堕してしまったということか。実に嘆かわしい。
出版社系の某駄週刊誌、某某駄週刊誌は、日本シドニーの往復の際に機内で、ちらと眺めるだけでその内容の品性の下劣さに胸が悪くなるが、「週刊朝日」もその「駄週刊誌」の仲間入りか。
30年以上も定期購読しているが、もう止めにしようかと真剣に思う。
こんな、与太くず記事を載せて、一冊380円も取るとは図々しい。
月にすれば1520円だ。シドニーに送ってもらっているからこれに送料がつく。馬鹿げた値段だ。
その、警察庁OBよりものすごいことを言う人もいる。
日本も核兵器を持て、とか、自衛隊の艦船を沖縄の尖閣諸島に近い辺りに常駐させろ、とか、今度の揉め事を奇貨として中国に対する敵意を煽り立てようとする人々がいる。それも、国立大学の元教授、現教授、という如何にも偉そうな肩書きを持った人が言うのだから呆れる。
このような立派な人間を教授や元教授に持つ国立大学を卒業した人間がそこらをうろうろしているのだから、日本という国がおかしくなる訳だ。
いったいこのような人々はどうして歴史から、何も学ばなかったのか。
1945年に、日本の敗北で終わった戦争で、日本は中国やアジア各国に多大な被害を与えただけでなく、日本自身も破滅的な打撃を被った。
武力での争いは、日本にも中国にも、何ひとつ利益をもたらさない。
憎しみを掻き立てて将来に禍根を残すだけである。
そのような争いを、どうして再び引き起こすような扇動をするのだろう。
このような人間に物を書かせる雑誌や新聞がまず問題なんだな。
そこに、11月5日に、正体不明の人間によって、尖閣諸島周辺海域で、中国漁船が日本の巡視船に衝突した現場のビデオが5日に、YouTubeにアップロードされた。
それを見て、一番印象に残ったのは、船長と目される人間の姿である。
操舵室から出て来たその男は、上半身裸で、片手に煙草を持っている。
実にだらしのない、緊張感を欠いた樣子である。
香港や広東など気温の高い土地でよく見かける中国人男性の姿だ。
最後に洗濯したのは何日前なのか分からないような汚れた下着だけしか着ていない男は、香港や広東の裏通りに行けば普通に目にする。
この船長らしい男は、下着すら着ていない。ズボンもだらしない。
この男の姿を見て、今度の衝突事故が、日本の一部の人が言うような中国の工作員による意図的な物ではないと私は確信した。
中国の工作員だったら、如何に何でも、上半身裸で、煙草を片手に、だらしない姿で、日本の巡視船をぼんやり眺めたりするわけがない。
他の船員たちも、矢張り裸で、まるで緊張感がない。
あの事件は、だらしのない中国人船長が、日本の巡視船に追われて、いらだって「一丁やってやるか」という、「中年暴走族」的な思慮を欠いた行動に出たものに違いない。
全く偶発的な事件だったと私は思う。
中国政府が意図的にやらせた物ではない。
大体、巡視船がすぐ近くにいるのにのんびり網を上げている。
日本の主張通り、尖閣諸島とその周辺海域が日本領だとすると(尖閣諸島とその周辺海域が日本領か、中国領か、その議論はここではする余裕がないから別にする)、日本から見れば日本の領海で中国人が漁をする事は違法である。
しかし、中国政府はあの領海は中国領だと主張しているので、船長は「自分の海で魚を獲って何が悪い」と頭から思っているのだろう。
あの海域に行くと日本の海上保安庁の船がつきまとって厄介だと聞いていても、魚が獲れる海域に行く、と言うのは漁師の本能である。
尖閣諸島とその周辺の海域は中国領であると常に中国は主張しているが、そのための示威行動を、APECを間近に控えている時期に、中国政府が意図的に行うはずがない。しかも、船長が逮捕されてしまうと言うような不様な形で。
領有を主張するための示威行動なら、時期を選んで計画的に行うはずだ。
ところが、そこに思わぬ事態が勃発したので、中国政府も、慌てたのだろう。
このビデオを見てつくづく思ったのは日本政府の外交能力のなさだ。
この場合、普通の外交能力を持った人間なら、まず、中国人船長を逮捕する。
そして、直ちに、強制送還する。
さらに、その時のビデオの存在は一切秘匿する。
しかし、船長送還と同時にそのビデオを、中国政府に送る。
そうすれば、中国政府も事実関係を理解し、事を荒立てずにすませた日本政府の配慮を評価するだろう。(常識のある国家なら)
要するに、この衝突ビデオは外交の際の有力な切り札になる物だった。
それが、こんな形で表に出てしまえば、切り札にも何にもならない。
返って中国政府の不信感を買い、日本政府の信用が失せるだけである。
先に述べたようにしておけば、中国政府も、別の対応を取ったはずだ。
それを、日本政府は、船長をあくまでも裁判にかけると言い張る。
それでは、中国政府は困る。
日本人が意外に考慮しないことだが、中国の指導部は一枚岩ではない。
現在の国家主席は胡錦涛であるが、2002年に胡錦涛にその座を譲った前国家主席の江沢民は今でも強い影響力を持っているという。
胡錦涛も1989年にチベットを強力に弾圧して、鄧小平に認められて出世したという強硬派で、しかも両親が日本軍のためにひどい目に遭ったことから、胡錦涛自身、日本に対して良い感情を抱いていないと言う説もある。
胡錦涛派と江沢民派は厳しい勢力争いを繰返していて、最近江沢民の地元で行われた上海万博の開会式に江沢民が姿を現さなかったことで、胡錦涛と江沢民の勝負はついたのではないという見方もある。
中国政府の指導者は、権力欲、金力欲まんまんの人間達である。
彼らの権力争いは熾烈である。
その渦中で、胡錦涛政府は外国に弱みを見せてはならない。
特に、日本には絶対に強硬姿勢で立ち向かわないと、反対派に攻撃される。
今回の場合、船長が逮捕されたと分かったとたん、胡錦涛指導部は、強硬派からの突き上げを食らったか、食らうことが容易に予期されたのだろう。
突き上げをかわすために、あわてふためいて日本に対して強硬な態度を取ったのだ。
事件以来中国政府の取った行動は理性を欠いていた。
衝突事件以後の中国政府の行いを振り返ってみようか。
- まず、いきなり、テレビや新聞で日本政府を非難し、中国人船長を釈放しろと要求した。
- 深夜、中日日本大使を呼び出して、船長の釈放と謝罪を要求した。(非常識で礼を失した態度である。)
- 旧日本軍の残した化学兵器の始末に当たっていた日本企業の社員四人をスパイ容疑で拘束した。(化学兵器の始末の邪魔をしてどうする)
- 日本政府が中国政府の強腰に怯えて、中国人船長を釈放した後も、中国政府は日本人社員を釈放せず、数日経ってやっと三人釈放し、残りの一人は更に拘束を続け最後に、金を取って釈放した。(こう言う時に、金を取るかね)
- 中国政府は、日本に対するレアーアースの輸出を禁止した。(レアーアースを使った日本製の部品がなかったら、中国の工場も製品を作れないでしょう)
- 釈放された中国人船長を「英雄」として扱い、大々的に中国人の間に反日感情を煽り立てた。
- 普段は、ちょっとでも中国政府に対して都合の悪い文言がインターネットや携帯電話で流れると中国の極めて強力なサイバーポリスが直ちに削除するにも拘わらず、中国全土で反日デモの呼びかけが行われるのを放置し、結果的に中国各地で反日デモ、反日暴動が頻発している。
日本企業の建物を破壊したり、日本製品のボイコットを呼びかけるデモが行われたことで、中国政府の目的は達成されたとしたのだろう。
私が、中国政府に対し「あわてふためいて」とか「理性を欠いていた」とか言うのは、以下のような事態を、中国政府はまるで予想していなかったようだからである。
- 反日デモをする人々の中に「官僚腐敗の批判」など、反政府的なスローガンを掲げる人が出て来た。
反日デモが人々にデモ行動を起こすきっかけを作り、それが、反政府デモに広がるおそれが出て来たので、政府は、反日デモを押さえる方向に動き出さざるを得なくなった。 - 中国は南シナ海でも、周辺の国、ベトナムなどに圧力をかけ、脅威を与えている。それらの国々が、尖閣諸島問題での中国の日本に対する態度を見て、中国に反感を募らせた。
- 日本に対して、レア・アースの禁輸をしたことで、欧米諸国から、「中国は政治と経済は別にすると言ったが、やはり、政治第一主義だ。国際貿易の原則に反している」と言う批判を買った。
以上三点を考慮すると、中国政府は今回のことで、尖閣諸島とその周辺の海域の領有権を確保することも出来ず、返って国際的な反発を招くという損失を被った。中国が得た物は何も無い。
これが、私が、今回のことは中国政府が計画的に行った物ではないという理由の一つである。
外交能力に長けた中国政府が、こんな負の結果を招くような計画を立てるわけがない。
もう一つ、中国政府が計画的に行った物ではないと私が言う理由は、先ほど言及したAPECである。
APEC開催まで、大して日数のない時点で、尖閣諸島問題などと言う厄介な問題に手を出すほど、中国政府は尖閣諸島問題で切羽詰まった意識を持っているわけがない。
この問題に取り組むのなら、もっと用意周到に手の込んだ事をするだろう。
要するに、今回の事は、中国人船長が突発的に「中年暴走族」的な行動を取ったこと、それだけのことである。
それを日本は、取り扱いを間違え、逮捕して裁判にかけると言明していたにも拘わらず、中国政府の恫喝の前に、慌てて中国人船長を釈放してしまった。
これまた、国際的に、ひどく評価を下げた。
中国政府も取り乱した。
日本と中国は、「中年暴走族」の中国人船長に翻弄されたのである。
ここに良い教訓がある。
ヤコヴ・M・ラブキンの書いた「トーラーの名において」という本がある。
ラブキンはこの本の中で、パレスティナの地に「イスラエル」言う国を作る運動を始めたシオニズム・シオニストを、ひいては現在の「イスラエル」を純粋なユダヤ教の立場から批判しているのだが、その中で、紀元一世紀に、ローマ帝国によってエルサレムの第二神殿が破壊され、ユダヤ人がユダヤの地から追放されると言うユダヤ人にとっては最大の悲劇について、その原因は、ローマ帝国に妥協せず、あくまでも戦いを求めたユダヤ人側にあるとして、次のように書いている。
「(中略)つまり、長い目で見て、人間の一挙手一投足から導き出される帰結は予測不可能であるのだから、われわれみずからの行いについてどこまでも慎重であらねばならないことだ。」(菅野賢治訳、平凡社刊)
ユダヤ人にとって最大の悲劇、エルサレムの第二神殿の破壊とは、我々にとって、日本と中国の関係の破壊に他ならない。
「中年暴走族」の中国人船長の取った行為によって、われわれは、無闇に興奮せず、慎重に事を運ぶべきだろう。
日本人も、中国人も、冷静になりましょう。
繰返すが、日本と中国は真の友好関係を築かなければならない。
日本のためにも、中国のためにも。
こんな事で、互いに反目するのは本当にばかばかしい。