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TPPに農家反発 コメ関税撤廃なら「壊滅的打撃」

2010年11月10日

 コメなど農産物の関税を原則撤廃する環太平洋パートナーシップ協定(TPP)の協議に入ることを、政府が9日、閣議決定した。米価下落に苦しむコメ大国の新潟の農家からは反発の声があがった。しかし、いずれは関税引き下げはさけられないとの認識も共通している。どのように対応していくか、農家の手探りも続くことになる。

 コメは現在800%近い関税がかけられている。関税が引き下げられた場合、新潟県が受ける打撃は特別大きい。年間約60万トン強のコメを生産し、毎年北海道とトップを競う。産出額は約1700億円(2008年)近い。

 米国や豪州、タイなど海外の農場の視察経験が豊富な南魚沼市京岡の専業農家、勝俣藤彦さん(50)は、それらの国々でコシヒカリが「ジャポニカ米」として作られているのを見てきた。「日本の商社が技術指導し、逆輸入されたら安売り競争では太刀打ちできない」と危機感を持つ。

 上越市で11ヘクタールを耕作する専業農家、杉田藤一さん(58)も「関税が撤廃されたら米国産などがおそらく10キロ千円以下で売られる。4分の1の価格では打つ手がない。当然TPPには反対だ」。新潟市の高橋正さん(55)も「ただでさえ米価が下落している。壊滅的打撃を受ける」。

 ただ、いずれの農家も将来的には高い関税が引き下げられる時代は来るとみている。

 高橋さんは生産量の半分を占める無農薬米を増やして価値を維持し、同時に農薬の使用量を減らすことでコストを削減していきたいという。

 杉田さんは、当面できる策として現在2割程度の消費者への直接販売の比率を高め、利益率を上げたい、と話す。

 村上市の神林カントリー農園代表の忠聡さん(55)は、コスト削減について「人件費に手をつける以外にない。外国人研修生の受け入れなどを考えなくてはいけない」と言う。農業法人は若者らの雇用の受け皿としても期待されているだけに、その役割を果たせるか、懸念が残る。

 忠さんは「市場原理を導入するなら、政府には、他産業の従事者に見劣りしない所得補償を、確実に実施してほしい」と語る。杉田さんは「国内の余剰米を食糧難の国に援助米として出すなどして価格安定を」と話した。

 一方で、TPPを受けれようという農家もいる。新潟市の阿部健太郎さん(24)は「怖いけど農家のためにトヨタ、ソニーが犠牲になるのはよくない」。独自のコメの顧客を持ち、比較的収入が安定している桃の栽培も行っていることが自信の一つという。

    ◇

 山形市で9日あった北海道東北地方知事会議で、泉田裕彦知事は「農業を守るためにTPP反対というのは将来に禍根を残す。もう少し細密な議論が必要」と語った。宮城県の村井嘉浩知事も「農業を守るためだけにTPP反対というのもやや拙速な議論。1〜3次産業を見渡して議論をすべきだ」などと述べた。秋田、山形、北海道の知事はTPPに慎重な姿勢を示した。(遠藤雄二、服部誠一、小山田研慈)

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