女性の車に乗り込んで連れ回し、現金などを奪ったとして強盗強姦(ごうかん)未遂や監禁罪などに問われた住所不定、無職、北山強志被告(44)の裁判員裁判で、甲府地裁(深沢茂之裁判長)は16日、「被害者の苦痛は計り知れない」として北山被告に懲役12年(求刑・懲役13年)の実刑を言い渡した。甲府地裁初の性犯罪の裁判員裁判。【水脇友輔】
判決によると、北山被告は1月18日午後9時20分ごろ、甲斐市志田のショッピングセンター駐車場で、同市の女性(当時26歳)の乗用車に乗り込み、包丁を突き付けるなどして女性を連れ回し、性的暴行を加えようとした上、財布から現金5万8000円を奪った。同28日にも甲府市で同様の事件を起こした。
判決は、仕事に就かなかった北山被告が生活に窮し、現金を得るために強盗を考えたと認定し「身勝手かつ短絡的で酌量の余地はない」と指摘。また「無差別に女性を狙った計画的な犯行は悪質というほかない」とした。
最後に深沢裁判長は「最後に裁判員から伝えておくことがあります」と前置きして「これまでの生活を見つめ直して今度こそ更生してください」と告げた。
公判後、北山被告の弁護人は「厳しく重い判決」と語った。
判決後、甲府地裁で開かれた記者会見には裁判員6人(男性3人、女性3人)と補充裁判員2人(いずれも女性)全員が出席した。
同地裁初の性犯罪の裁判員裁判となったが、女性裁判員の一人は「強盗よりも強姦未遂のほうを重視した」と話した。別の女性裁判員も「被害者にかなり感情移入して、被害者の立場でしか考えられなかった」と語った。
男性裁判員の一人は「(証拠類が)読むに堪えないものだったので、裁判官に任せてしまいたい気持ちもあったが、最終的には加わった方がいいのかなとも思った」と揺れた心情を明かした。
別の裁判員は「食事が取れなくなるほど悩んだ。(性犯罪の場合は)裁判員がかかわることで量刑が変わることはあるかもしれない」と振り返った。
今回の公判では、被害者の調書のうち、性的暴行の詳細部分は朗読されず、文書で裁判員と補充裁判員に配布された。
これについて、裁判員や補充裁判員は「ショッキングな内容だった」「背筋が寒くなった」と感想を語った。
また、裁判員の一人は「(起訴罪名は)強姦未遂だが、調書を読んで強姦そのものという印象を受けた」と、この部分が量刑判断に与えた影響が大きかったことを明かした。また、性的暴行の詳細を知らされたことについては、8人全員が「判断のために必要だった」と述べた。
「女性として法律を知れば知るほど、そもそも強姦や強姦未遂の刑罰が軽すぎるのではないかと思った」と話す裁判員もいた。【春増翔太】
毎日新聞 2010年7月17日 地方版