四国大が論文未完2教授に博士号を授与 文科省「省令に違反」 2010/11/10 10:29
四国大学(徳島市応神町古川)が、学位論文の提出がないまま審査し、同大大学院の経営情報学研究科長を務める男性教授(65)と同研究科の男性教授(74)に博士号を与えていたことが9日、徳島新聞の取材で分かった。博士号取得の際には論文を提出し、審査を受けることが学校教育法に基づく文部科学省令「学位規則」に定められている。2人の論文は学位取得時も完成しておらず、審査に提出されたのは「梗概(こうがい)」と呼ばれる概要版だった。文科省大学振興課は「概要版で博士号を授与することはあり得ず、省令違反に当たる」としている。
四国大によると、研究科長は2007年1月、男性教授は09年3月に博士号を取得した。研究科長は学位取得後に論文を仕上げたが、男性教授は論文をまだ完成させていない。
研究科長は06年7月に約50ページの、男性教授は08年12月に約30ページの概要版をそれぞれ提出した。
博士号の学位授与は本来、3人以上の教員でつくる論文審査委員会が論文を審査し、十数人の研究科の教員からなる研究科委員会が可否を判断して決まるが、論文の代わりに提出された概要版を審査していた。
文科省は「概要版で審査はできないし、学位を認定する段階で論文が完成していないといけない」とする。
また省令では、学位授与から1年以内に論文を印刷・公表しなければならない。研究科長の論文は、国立国会図書館や四国大学付属図書館にはなく、学会誌への掲載や商業出版もされていなかった。
研究科長は論文を公表していないことを認め、「多忙で論文の資料作成ができなかった。現在、製本しており、12月10日ごろには四国大学付属図書館に収めたい」と話す。
男性教授は「数多くの論文を書いてきており、これまでの実績で学位を与えられるものと思った」と釈明する。
福岡登学長は「事実関係を確認し、対処を考える」と話している。
四国大は1999年に同研究科の修士課程、01年に博士後期課程を設けた。研究科長は06年から経営情報学部長、07年からは経営情報学研究科長を兼任。男性教授は1995年から同学部の教授を務めている。