会社更生手続き中の日本航空は9日、パイロットと客室乗務員を対象にした希望退職の募集を締め切った。目標の約270人に対し、応募者は百数十人下回り、一方的に雇用契約を解除する「整理解雇」を実施する方向で最終調整に入った。近く東京地裁と協議し、週内にも正式決定する。
希望退職は、日航の更生計画案に盛り込まれた約1万6000人の人員削減の一環。9月3日から10月22日まで2次にわたり、全職種を対象に1500人を募集した。しかし、応募者が削減目標を下回ったため、パイロット約130人、客室乗務員約140人の計約270人を目標に最終募集に入っていた。
これに対し、一乗務員系の労働組合は態度を硬化。労組の一つ「日本航空乗員組合」に加入するパイロット87人は4日、10月以降の乗務を外されたことが「退職を勧める管理職との面談を強いるための措置」にあたるとして、退職強要の差し止めを求める仮処分を東京地裁に申し立てた。解雇を決めた場合、社内が混乱する可能性もある。
本体の人員削減が足踏みすれば、リストラを前提としている更生計画案の実現に支障が生じかねない。大幅な借金棒引きを引き受ける銀行団が早期のリストラ実現を促しているためだ。管財人である企業再生支援機構の瀬戸英雄委員長は「整理解雇も覚悟していかないといけない」との方針で、解雇に慎重だった稲盛和夫会長も容認姿勢に転じた。国土交通省も経営陣の判断を支持する考えだ。
整理解雇は人選の妥当性など厳しい条件をクリアする必要がある。そのため、日航経営陣は、今週後半までさらに追加の応募がないか見極めた上で、整理解雇を実施するかどうか最終判断する。【寺田剛】
毎日新聞 2010年11月9日 22時09分(最終更新 11月10日 1時05分)