日本最南端の沖ノ鳥島周辺の日本の排他的経済水域（ＥＥＺ）周辺で中国が調査活動を再び活発化させようとしている。中国調査船は、昨年十一月に中国海軍の原子力潜水艦が沖縄県石垣島沖の日本の領海を侵犯、海上自衛隊の対潜哨戒機や艦艇に追尾されてから激減していたが、今年五月下旬に沖ノ鳥島周辺のＥＥＺ近くの公海で二隻の調査船が相次いで確認された。
防衛庁関係者によると、沖ノ鳥島の西方、ＥＥＺのわずか数キロ外側の海域で五月二十三日ごろから中国海軍南海艦隊所属の海洋調査船「南調４１１」が調査活動を行っているのが確認された。六月二日ごろまで海中の水温などを計測する海洋調査を実施。さらに、五月二十七日には同島西南西の公海で中国海軍の新型海洋観測艦を海自のＰ３Ｃ哨戒機が確認している。
中国側は、水深約四千メートルと深海の広がる同海域で調査船による水温調査を実施、潜水艦航行に必要な「水温分布」を収集しているとみられる。水温分布は「深度による水温の高低が音の伝わり方を変化させる。潜水艦が隠れる場所、探知可能距離など作戦に必要なデータを入手できる」（軍事専門家）という。
同海域では昨年だけで中国海軍の観測艦や海洋調査船などによる十六件のＥＥＺ内での活動が確認され、「南調４１１」も昨年七月にＥＥＺ内でワイヤを曳航したり、音波を発信しながら航行していた。（一部略）
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石垣島沖の、原子力潜水艦による領海侵犯事件以来おとなしくなっていた中国による日本海域の徹底調査活動が再び活発化しているようです。影に隠れがちなこの問題ですが、これは靖国問題、歴史問題以上に、「今、差し迫った危機」として非常に重要な問題です。
現在中国の海軍力、作戦力は日本、米国よりも劣っておりますが、中国は莫大な軍事投資でその差を埋めつつあります。
海洋調査と言えば聞こえがいいですが、実際にやっていることは、日本周辺海域を制圧し、自由に軍事行動が取れるようにする為の下準備です。
ここで中国の海洋軍事戦略を整理しておきます。中国には、第一、第二列島線と呼ばれる、独自に設定した海洋軍事ラインがあります。
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第一列島線：日本・台湾・フィリピンをつなぐ列島線で国土防衛の内堀として米国の空母機動部隊を阻止する最終ラインです。東シナ海の油田採掘問題は、このラインにあります。また尖閣諸島もこのラインの近海にあります。
第二列島線：小笠原諸島からサイパン・グアムに至るラインで米国の打撃艦隊に攻勢を行う進出線であり、防衛ラインというよりも攻撃用のラインです。沖ノ鳥島はこのラインにあります。
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中国は第一列島線確保への行動を最近加速化させており、艦船の近代化、尖閣諸島沖での無断海洋調査はその典型的な行動です。さらに話題の東シナ海でのガス田開発もこの防衛ライン形成に大きく関わっており、東シナ海のガス田開発問題で日本が弱腰な対応を見せれば、さらに中国はこの海域の軍事的制覇を加速化させる結果となるでしょう。
また、沖ノ鳥島は第二列島線の重要拠点です。中国としては、ここに日本の拠点があると邪魔で仕方がない。その為近年になって、急に沖ノ鳥島は岩であり、日本はEEZを設定できないと主張し出したのです。沖ノ鳥島の海洋調査は、この第二列島線までの確保に中国が着々と準備を進めていることを証明しています。第二列島線まで中国の進出を許せば、シーレーンの防衛もままならなくなり、日本の防衛は深刻な危機に陥ると言えます。
戦火は交えていませんが、水面下では中国の戦争準備が着々と進んでいると言えます。潜水艦の領海侵犯事件など、露骨すぎる「異常事態」です。靖国参拝等の歴史問題と比べると、報道も地味に見え、同時に政府の対応も弱腰に見えるこの問題ですが、本来は最優先課題とすべき事項です。
まずは、政府は尖閣諸島、沖ノ鳥島などの領土権を確固たるものにする必要があります。尖閣諸島には、中国を刺激するという情けない理由で自衛隊の設置を控えてきましたが、そんな理由はもう要りません。自衛隊を置き、監視レーダー群も設置して頂きたい。また沖ノ鳥島も現在は何の活用もされていませんが、積極的な経済活動拠点として中国の岩だなどという主張など二度とできないようにするべきです。
また、EEZを侵犯して無断調査を行う中国の艦船に対しては、今まで中国へ抗議するという何の効果もない対策しかしてこなかった政府ですが、今後はもっと強力な対応策を期待します。
こうした中国の海洋軍事戦略に対して、もっとも敏感に反応し、効果的な対応をしてくれているのは、本来国の安全保障を考えるような立場にないはずの、東京都知事だということに頭が下がります。「東京から日本を変える」との言葉通りです。
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【日本よ】石原慎太郎 沖ノ鳥島の戦略的意味：産経
私の東京知事としての今回の沖ノ鳥島行きをニューズウィークのある記者は中国への挑発を意図した政治的パフォーマンスだなどと書き立てているが、日本をさまざまな不法の言動で挑発し続けているのは中国の方ではないか。こうした手合いには今日の政治情勢におけるこの島の戦略的意味合いが分かっていないようだ。
この島と環礁はアメリカの戦略基地であるグアムと、グアムを凌ぐ重要な基地沖縄を直線で結ぶ中間点に在る。原子力空母を含めてアメリカの艦船が何らかの目的で日本周辺に向かって西進する最短の航路の上に在る沖ノ鳥島周辺の海域は、アメリカに対抗し西太平洋の覇権を狙う中国にとっても戦略的に重要なものだ。中国の調査船がこの水域を日本に無断で調査しまくっていた所以は、深い海溝の在る海域の海底資源の調査などではなしに、いつかの将来、西太平洋の覇権を巡ってアメリカとの衝突も辞さない中国の、潜水艦を中心にした戦略展開のためのものに他ならない。
私のやったことがあたかも中国を刺激、挑発することでのナショナリズムの高揚のようにいう筋もあるが、それは現今の中国の西太平洋における軍事的野心の実態を知らぬ者の能天気ないい分でしかない。あの浅い礁湖は開発すれば簡単に、ＵＳ１のような無類の国産飛行艇の離着陸の水路たり得るし係留基地ともなる。あの島の領土としての確保、そのための島周辺における漁業を中心にした経済活動による水域の実効支配は、日米安保を踏まえた自衛のための我々の責任に繋がるものだ。
小笠原に属する最先端の日本領土について東京都に出来るのは漁礁の造成と漁業活動限りのことで、発電を含めた開発と維持はあくまで国家の責任である。先般の会談で日本の先端技術を駆使しての開発の可能性について報告した際、総理も強い関心を示してくれた。国民の支持と期待があれば、いやその前に中国への経済進出にうつつをぬかしながらも、彼等の軍事的野心について、他ならぬこの我が身のために懸念する冷静な認識があれば、この試みは容易に遂行されるに違いない。そしてそれは、夜間には獣しか通らないような田舎の高速道路を作って増やすよりもはるかに有効な、国家民族の安全のための投資となるはずである。
これほど将来を見越しての、有効で穏やかな自己主張はあるまいに。ことあるごとにいってきたが、まさに「天は自ら助くる者をのみ助く」である。（一部略）
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参考書籍：今回書いた中国の海洋軍事戦略に最も詳しい書籍の一つです。
中国の戦略的海洋進出
平松 茂雄