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家庭用ゲームソフト受託開発会社の老舗、トーセ・齋藤社長がゲームの30年史を語る
ゲーム●トーセの社歴は、まさに“ゲームの30年史”
2010年11月1日、京都商工会議所にて、“KYOTO CMEX 2010(KYOTO Cross Media Experience 2010)”の一環として“コンテンツビジネスセミナー”が開催。最大手の家庭用ゲームソフト受託開発会社トーセ、代表取締役社長 兼 CEOである齋藤茂氏による講演“ゲームの30年史”が行われた。
“KYOTO CMEX 2010”とは、京都を舞台にコンテンツをクロスメディア展開することで、京都が持つコンテンツのポテンシャルと魅力を広く海外・国内に情報発信し、コンテンツ産業の人材交流などを促すことを目的に実施されている事業で、今年で2回目。マンガ、アニメのイベントや映画の上映会などが行われ、多くの来場者を集めている(→詳細はこちら)。“コンテンツビジネスセミナー”は、そんな“KYOTO CMEX 2010”のイベントのひとつとして実施されているもので、映画やゲーム、アニメなどのコンテンツ産業のキーパーソンが講演し、コンテンツ・クロスメディアの現状についてレクチャーを行うというものだ。“コンテンツビジネスセミナー”自体は、計4回の講演が予定されているのだが、その第2回に登壇したのが、京都に本社を構えるトーセの齋藤氏というわけだ。トーセと言えば、国内外に数多くの拠点を持ち、約1000人のスタッフを抱える家庭用ゲームソフト受託開発会社の老舗的存在。その社長が語る“ゲームの30年史”ということで、極めて興味深い講演となった。
講演は、まずはトーセの歴史が語られるところから始まった。トーセが設立されたのは1979年で、アーケードゲームの生産から業務をスタート。ちょうど前年にタイトーの『インベーダーゲーム』が生まれたばかりで、「画面の中のキャラクターをレバーとボタンで動かせるのが驚きでした。テレビの中のものを動かせるのがカルチャーショックでした」と齋藤氏は語る。当時、あまりに『インベーダーゲーム』をプレイするユーザーが多く、100円玉が払底。造幣局が100円玉を増産する事態までになったという。「国がひとつのゲームのために動くというのはすごいことですね」と齋藤氏は懐かしそうに当時を回想する。そして、1983年に登場したファミコン人気に先駆けて、コンシューマーゲームの企画開発や設計などの業務を展開。以降、携帯電話向けコンテンツやオンラインゲーム、ソーシャルゲームなど、その時々のニーズにあわせて業務を拡大し、現時点での開発タイトル数は、家庭用ゲーム機向けや携帯電話向けコンテンツを含めて、1857本を数えるというから驚きだ。トーセは自社開発タイトルを一切明らかにせず、まさにゲーム業界の“縁の下の力持ち”といったところだ。「企画提案型受託開発では、裏方として世界一の開発実績を誇ります」と齋藤氏は言う。一方で、コラボレーションも積極的に行っているようで、映画やアニメ業界とのつながりも深いためにゲーム業界との仲を取り持つといった“クロスメディア”展開も積極的に進めているとのこと。まさに、“KYOTO CMEX”の理念をしっかりと実現している企業と言えるだろう。
トーセの歴史を辿ったあとは、ゲーム業界の歴史へ。当時のコンピュータであるEDSACで組まれた“世界初のコンピュータゲーム”と言われる三目並べの『○×○』や、1972年に発売された“世界初の家庭用ビデオゲーム機”と言われるオデッセイに始まり、1977年に発売されて一世を風靡したATARI 2600や、現在の家庭用ゲーム機の礎を築いたファミコンなどが紹介された。ファミコンに関しては、「技術的にすばらしかった」と齋藤氏。当時はファミコン以外にも数多くのゲーム機が発売されていたが、「画面で使える色数は、8〜16色がデフォルトだったのが、ファミコンでは52〜56色くらい出せました。価格もほかは30000円〜60000円が標準だったのが、ファミコンは14800円。さらにコンテンツも充実しており……と、ヒットは当然でした」(齋藤)とのこと。ファミコン時代は10数社のタイトルを作ったというトーセだが、講演では、ロムカセットにLEDをつけたという当時の開発話も披露してくれた。ふつう家電商品は電源をつけると、起動したことを明らかにするためにLEDランプが灯るのが当たり前だが、ファミコンではコスト削減のためか、このLEDランプがなく、テストのために100台を超えるファミコンを導入していたトーセでは、どのファミコンの電源が入っているかわからなくて苦慮したという。一方で、当時はカートリッジの設計は各メーカーが自由に行えたために、カセットにLEDをつけることを思いついたのだという。「LEDのメーカーさんにはとても喜ばれました」と齋藤氏は笑う。
そして時代は16ビットのスーパーファミコンやメガドライブから、メディアにディスクが採用されたプレイステーションやプレイステーション2へと。CDやDVDといったディスクになっていちばんのネックは開発費の増大。「(ファミコンなどの)キロバイトといった容量だと4〜5名で2〜3ヵ月、数100万円から数1000万円で済んでいたのが、(プレイステーションなどの)メガバイトだと数1000万円から億単位へ。それが(プレイステーション2以降の)ギガバイトだと億〜10億円かかる。30人のスタッフが3年かけて作るといったタイトルもあります。大きな企業じゃないとやっていけない時代になりました」(齋藤)とのこと。いまや、開発費はファミコン時代に比べ数10倍〜数100倍に増えているが、ゲームの定価はほとんど変わってない。「そういう意味では、いまの時代のゲームユーザーは、割安でゲームができているのでは」と齋藤氏は言う。
講演では、昨今のゲームビジネスを語る上で欠かせない携帯電話の歴史も紹介された。ターニングポイントとなったのは1999年、NTTドコモのiモードが登場したこと。iモードにより“話すから使う”へと変化した携帯電話は機能を拡充。2001年にはより高機能のFOMA 3Gも登場し、「NTTドコモの方と協力して、リッチコンテンツを携帯電話向けに提供しようということで、当時は奔走しました」と齋藤氏。当時、プリインストールアプリの多くをトーセが開発していたとのことで、トーセがいかに携帯電話向けアプリの普及に大きな役割を果たしたかがうかがえるエピソードと言えるだろう。
講演は、最後にゲーム業界の今後へと。円高や新ハードへの転換期、コピー問題、ソーシャルゲームに代表されるフリーゲームの台頭など、「ここ1年半くらいきびしかった」(齋藤)というゲーム業界だが、ここへきて状況が変わりつつあるという。言うまでもなくニンテンドー3DSの登場だ。「ニンテンドー3DSの発表で各社は堰を切ったように開発競走に取り組んでいます。やっと雲の中から脱出したのが現状です」(齋藤)という。
一方で齋藤氏は、来るべき将来のクラウドコンピューティング時代では、「ユーザーはふたつを越える端末は持たない」と予測する。つまり、ユーザーに選ばれるふたつの端末に入るかどうかが勝負の分かれ目というわけだ。それはiPad+携帯になるのか、あるいはニンテンドー3DS+スマートフォンになるのか……。齋藤氏は講演で5つのパターンを挙げてくれたが、いずれにせよ覇権争いは熾烈さを増すことになりそうだ。
最後に齋藤氏は、「今後はそれぞれの業界のことがわかるハイパークリエイターが望まれる。京都にはコンパクトな中にすべてのものが揃っているという地の利があり、たくさんの方が訪れてくれる。京都という地でたくさんの人材が育ってほしいです」とコメントし、講演は幕を閉じた。
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