きっと、だいじょうぶ。

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きっと、だいじょうぶ。:/13 手出しは無用=西野博之

「こどもゆめ横丁」=川崎市子ども夢パークにて詳細はhttp://www.yumepark.net/
「こどもゆめ横丁」=川崎市子ども夢パークにて詳細はhttp://www.yumepark.net/

 今年も「こどもゆめ横丁」の季節がやってきた。年に1日だけ、子ども夢パークの中に出現する子ども商店街。

 主体は小中学生だが、圧倒的に小学生が多い。まずは廃材と工具を使って、お店づくり。柱を立て、壁や屋根はもちろん、机や椅子まですべて子どもたちの手づくり。フリーマーケットとは違い、ブルーシートを敷いただけでは出店はできないことになっている。自分で工夫したり、手を加えたりしていない既製品を売ることもできない。小屋づくりから商品づくり、販売にいたるまで、すべて子どもの力だけでやりぬく。大人の手出しは無用。

 何を売るかは仲間と相談し、値段も決める。しかもこれは、ごっこ遊びではなく、本物のお金を使う。一品の上限は70円。食べ物、アクセサリー、射的などのゲーム屋さんが軒を並べる。その年の流行もあり、初年度は「マッサージ屋」がはやった。足もみが30円と書かれていたりする。

 珍しいところでは、昨年「落語屋」が登場。着物を着た少年が小屋の床に座布団を敷き、古典落語などを披露。その語り口が実にうまい。店の前はあっという間に黒山の人だかり。お客の大人たちからは投げ銭の100円玉が放り込まれるのだが、上限70円と決まっているので、律義にも少年は投げ銭のおつりを返そうとしている。その姿がまたなんともおかしかった。

 どうしてもポテトチップ屋をといって譲らなかった小学生の男の子たちもいた。夢パークで収穫したジャガイモをスライスして、油で揚げて作ったポテトチップのうまさが忘れられないのだそうだ。少し傾いている机の上に、カセットコンロを置き、そこで揚げ物をするという。

 「危ないからダメ」というのは簡単だが、それは子どもの「やってみたい」をつぶしていくことになる。実現させるための方策を、子どもたちと何度も話し合う。当日、親もスタッフもハラハラドキドキの連続だったが、早々に完売した時の子どもたちの嬉(うれ)しそうな顔といったらなかった。

 今どき、子どもがこれほどまでに目を輝かせ、本気になる姿はめったに見られないように思う。声を張り上げ、必死に客を呼び止める子どもたち。試行錯誤を重ねながら、この遊びを通じて、人に売れるものをつくることの難しさと面白さを知っていく。

 いよいよ建設が始まった。今年の開催は、11月7日。どんな展開が待ち受けているか、今から楽しみだ。(NPO法人フリースペースたまりば理事長)=次回は11月7日

毎日新聞 2010年10月24日 東京朝刊

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