≪ 注 ≫ このインタビューは1999年11月26日の朝日新聞(夕刊)に掲載されたものです。



――「マンガ家になる」と決めたのは四歳の時だった、というのは本当ですか?
その年じゃ、まだマンガ読めないですよね。でも絵かくのが大好きで、ドラえもんや仮面ライダーをまねしてかいたりすると、みんな「うまい」と言ってくれた。で、四歳の時、親から「マンガ家」という人たちがいると聞かされて、「絵をかくのがシゴト?遊んでお金がもらえるのか!」と。
自分のマンガがアニメになる、というのも子供のころからの「野望」。だから「ONE PIECE」がアニメ化されて、もう最高です。


――「ONE PIECE」の物語の骨格は、まさに少年マンガの王道ですね。
そう、王道です。少年マンガは冒険なんだ、旅だ、仲間なんだ、と。友情とか愛とか、書く方は恥ずかしいと思うけど、子供たちはストレートに受け取ってくれる。だから王道から逃げちゃいけない。僕らは子供の時からそういうものを読んできたし、結局それが一番面白いのに、なんで最近ないんだろう、と思っていた。僕は、奇をてらうより「ど真ん中」をかいてワクワクさせたい。
絵も、昔ながらのマンガらしさを生かしたい。例えば、うまそうな食べ物を前にした時ぺろっと舌を出すような。そんな表現、安易に使えば古いと言われるけど、すごく分かりやすくて正しいんですよ。


――主人公のルフィたちはさばさばしていて潔い。敵を殺すこともない。「スカッとさわやか」なマンガですね。
最近見ない男気、心意気を持った少年を描いたつもり。真正面からぶつかって、真剣なことを言い切る心意気。「心意気」は「ONE PIECE」のカッコよさです。
苦しい闘いが「終わったぁー」という時、だれか死んでいるのがイヤなので、基本的には人は殺さない。絶対の決め事じゃないけど、後味のよさを大切にしたいから。
連載が長くなると、どうしても闘いがだんだん激しくなっていき、流れる血の量も増えてしまう。読者の要求にストレートにこたえるなら、その方向にどんどん進むしかない。でも、エスカレートさせるのとは違ういろいろな面白さも見せなければ、と思う。
ルフィは、ゴムのように手足が伸びる能力を使って闘いますよね。激しい闘いでも面白く描くために考えた設定です。真剣に闘っていても何だかふざけているように見える。
ルフィの仲間は今四人ですが、もっと増やす予定。さらい先の話をすると、実は、最終回の構想もラストカットも決まっています。主人公の周りだけで小さく話が収まるんじゃなく、あの世界すべてが動き出す展開になるはず。問題は、いつそこにたどりつけるか。何年かかるのかな。


――どんな小さな人物も、アシスタントに任せず、すべてペン入れまでするとか。すごいですね。
それが絵かきの心意気ですから。