皆様、どうもどうも私、この物語の作者、荒井スミスと申します。この物語は、それは幻想の物語の外伝にあたる物語です。ですので、まず本編からお読みになることをお勧めします。もちろん、こちらから読んでもらっても私は一向に構いませんが・・・ね?それでは注意へと移らせてもらいます。この物語は、東方Projectの二次創作小説・・・なのはもうご存知ですね。それを知ってるから此処に来たのでしょうから。この物語はカオスな電波その他もろもろで構成されております。ここまで読めばそんなことは分かりきってるでしょうが、念の為の忠告でございます。独自の解釈なども・・・よござんすね?そして、どのような感想も心からお待ちしています。ただし、感想らしい感想でお願いしますよ?それでは始めましょうッ!ようこそ荒井スミス劇場へッ!題名は語られなかった幻想の物語ッ!皆様お楽しみくださいそしてッ!――――――ゆっくりしていってね?
ダン・ヴァルドー。古き時代から生きてきた最強の魔法使いの一人。彼は今、非常に困惑していた。いつものように魔理沙と霊夢に会いに博霊神社を尋ねた時・・・それはいた。目の前に奇妙な生物・・・物体?とにかく、そういうものが彼の目の前に存在しているのは事実だった。今までこんなものは見たことも、ましてや聞いたこともなかった。彼の八百年の年月の中で初め知った存在だった。それはダンをジッと見る。ただただ・・・・・・・・・ジッとだ。ダンの方もその物体をジッと見る。物凄く不思議そうな表情で。そしてついに、その存在はダンに語りかけてきた。「「ゆっくりしていってね!!!」」「・・・・・・なんだ、これは?」博霊神社の縁側で、巫女さん一人と魔法使い二人が茶を啜ってゆっくりする。目の前のゆっくり達を見ながらだ。「つまり・・・これはゆっくりというのか?」「そうだぜ!」「そうよ」「そーなの・・・いや、言うまい」うっかり知り合いの口癖を言いそうになったダンだった。「それで?これは一体何なのだ?・・・・・・ショゴスの新種か何かか?」ダンはそう言って二匹のゆっくりを指差す。二匹のゆっくりはゆっくり霊夢とゆっくり魔理沙。二匹ともゆっくりと昼寝をしている。「饅頭よ」「饅頭だぜ」「・・・饅頭?これは・・・食べ物なのか?」「一応中身は餡子があるわよ?」「で?どうしてお前達にどことなく似ているのだ」「「さあ?」」「・・・・・・・・・ふむ」ダンは首を傾げながらも、ゆっくり魔理沙の方を持ち上げる。まだふてぶてしく寝ている。「どうだダン爺?可愛い「いや」だ・・・そうか」セリフを途中でバッサリと切られた魔理沙はしょぼくれる。そんな魔理沙を無視して、ダンはしげしげとゆっくり魔理沙を見つめる。「一体何で出来ているのだ?・・・金属なのか粘土なのか」「いや、どっちでもないだろ」ゆっくりを伸ばしたり縮めたりしながら言うダンに魔理沙はそんな突っ込みを入れる。「・・・・・・・・・確認してみるか」「確認?一体何をするんだ」ダンはおもむろに――――――ゆっくりを真っ二つに引き千切った。「「「ギャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!?」」」神社中に悲鳴が上がる。一人は霊夢、一人は魔理沙。そして残りは、それを目撃してしまったゆっくり霊夢のものだった。そんな者達を無視して、ダンはまず分かった事を口にする。「漉し餡か」「ダン爺ィィィィィィィッ!?なにやってんだぜぇぇぇぇぇぇぇぇッ!?」魔理沙はダンの服の首元を掴み激しく揺さぶる。「いや、気になってな」「だからって、ちょ、真っ二つって・・・真っ二つってなんだよッ!? しかもどうして私の方なんだよッ!?なんで私だったんだよッ!?」「さあ?」「さあってなにさあってッ!?」「運が悪かったと諦めろ」ダンの両手にはそれぞれ左右に分かれたゆっくり魔理沙の亡骸があった。幸か不幸か、ゆっくり魔理沙は寝たままの表情だった。そんな惨劇を見た霊夢は無意識の内に、震えるゆっくり霊夢を抱き締める。もしかしたら今度はこの子(自分?)が真っ二つにされるのではないかと、そう恐れて。「しかし本当に饅頭だとはな。驚いた」「バカァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!! ダン爺のバカァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!!」魔理沙は罵倒しながらダンをポカポカ叩く。「一体何をそんなに怒ってるんだ?」「自分の顔が真っ二つにされたんだぞッ!怒って当然だッ!」「ただ似ているだけだろ?・・・・・・さて」ダンは半分になったゆっくりの片方を見る。「嫌な予感が・・・・・・ダン爺、今度はな」ダンはおもむろに――――――ゆっくりの半分を食べ始めた。「「「ギャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!?」」」また神社中に悲鳴が上がる。それを無視してダンは黙々と食べていく。真っ二つになった顔の半分を食べているその光景はあまりに恐ろし過ぎる光景だった。全てを食べ終わって、ダンは結論する。「饅頭だ」「だから言っただろッ!」「・・・不味い」「知るかそんなことッ!」「食べるか?」「いらんわぁぁぁぁッ!」それを聞いてダンは困った表情で残りを見る。これをどう処分しようか思案する。そしてあることを思い出す。「よし・・・来い、フィリップ」「「・・・フィリップ?」」二人は何事かと首を傾げる。そんな二人の目の前に、いきなりあるものが現れる。「――――――テケリ・リ」そんな独特の鳴き声と共に。「「・・・・・・なぁにこれ?」」「ショゴス。かつて古のものどもが使役した種族だ。これで中々役に立つ」そう紹介されたショゴス、フィリップを二人は観察する。スライムの中に目玉のような核が一つだけあるその姿は、とても役に立つとは思えなかった。「「・・・・・・これが?」」「テケリ・リッ!」目の前のフィリップと呼ばれたショゴスは親指を立てたような形の触手を出して返事をする。何気にノリがいいようである。「それで?こいつになにやらせるんだよ?」「なに、見ていろ。――――――おい、フィリップ」「テケリ・リ?」「それ、飯だ」そう言ってダンは残りをフィリップに投げてよこした。投げられたゆっくりの残りはフィリップの体にポチャンと入る。「「エエエエエエエエエエエエエエエエエエッ!?」」それを見て二人は絶叫する。「どうだフィリップ?美味いか?」「テケリ・リッ!テケリ・リッ!」「ほう?そうかそうか。お前は気に入ったか」どうやらゆっくりはフィリップには好評の味だったようだ。半透明の体の中で、ゆっくりと残りがぐずりぐずりと消化されていく。そのあまりに恐ろしい光景に、二人と一匹は思わずお互い抱き締めあっていた。そして、その全てが消化されて無くなった。「テケリ・リッ!テケリ・リッ!」「なんだと?やれやれ、仕方ない奴め・・・・・・よっと」ダンは震える二人と一匹に近付き――――――ゆっくり霊夢を引っ張り出す。「ギャァァァァァァァァァッ!ギャァァァァァァァァァッ!」ゆっくりは命の危険を感じて力の限り叫ぶ。まるでそれは地面から引き抜かれたマンドラゴラのような叫びだった。二人は最初呆気に取られていたが、その叫びを聞いてすぐにゆっくり霊夢を助け出そうとする。だが――――――それは一足遅かった。「それ、おかわりだ」そう言ってダンはゆっくり霊夢をフィリップに向かい投げた。「ギャァァァァァァァァァッ!ギャァァァァァァァァァッ!ギャァァァ「テケリ・リッ!」フィリップの体にゆっくり霊夢がポチャンと納まる。「ぎゃぼぼぼぼぼばあばばばばばばばばばばッ!ごばばばぼぼべぼえばぼばべべばッ!」フィリップの体の中でゆっくり霊夢が暴れに暴れ、溺れながらも悲鳴を上げる。だがその度にゆっくり霊夢の体は少しずつ消化されて崩壊していく。その痛みで更にゆっくり霊夢は悲鳴を上げて叫び続ける。「がばびゃばびゃあばばばばばばッ!ごぼばッ!ばぼッ!ごぼッ!ぼっばぁぁぁぁがぁぁぁッ!」それはまるで、早く殺してくれと懇願する叫びのようだった。その恐怖の光景を霊夢と魔理沙はその場にぺたんと座り込み、ガタガタ震えながら見るしかなかった。「がぼッ!ごぼッ!が・・・・・・ぼッ・・・ぼ・・・べ・・・ぶ・・・・・・・・・」次第に悲鳴を上げなくなっていったゆっくり霊夢。いや、上げなくなったのではない――――――上げられなくなったのだ。声を出す器官が消化されてしまったがためにだ。そしてなにより恐ろしいのは――――――フィリップの中でまだゆっくりは生きていたという事だ。「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」悲鳴にならない悲鳴を上げ続けるゆっくり霊夢。その輪郭もやがてゆっくりと崩れていき――――――そして。綺麗に消え去ってしまった。「うっぷ・・・・・・げぇ・・・」「霊夢ッ!しっかりしろッ!」その場で吐き気に襲われる霊夢を、魔理沙は背中をさすり励ますが、それはなんの役にもならなかった。当然だろう。目の前で自分に似たゆっくりがあんな事になったのだ。これでは真っ二つになった方がまだ救いがあった。「テケリ・リッ!テケリ・リッ!」「はっはっはっ!そうかそうか。満足したようだな」そんな二人を他所に、ダンとフィリップは暢気に楽しそうに会話?を弾ませる。「しかし・・・これで分かった事が、一つある」「・・・・・・・・・なんなんだよ、ダン爺?」魔理沙はダンを恐ろしげに見ながら尋ねた。「ゆっくりとは――――――ショゴスの食物なのだな」「そんなわけあるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!」その後、霊夢はしばらくの間饅頭を見ただけで悲鳴を上げるようになった。あの時のゆっくり霊夢と、同じような叫び声で。そして最後には頭を抱えてブツブツと呟くのだった。まんじゅうこわい・・・まんじゅうこわいと。「まったく・・・今日は散々な一日だったぜ」魔理沙は家に帰ってからドッと疲れが出てきた。あのような惨劇を見てしまえば当然といえば当然だったが。寝室に行ってパジャマに着替え、ベッドに入って休もうとした――――――その時だった。―――――――――ガチャン。「ッ!?なんだぜッ!?」その音を聞いてベッドから飛び起きる魔理沙。あんな惨劇を見てしまった為、小さな物音一つで過敏に反応してしまう。魔理沙は音の方へと目を向ける。闇の中で――――――何かが動いているッ!魔理沙はすぐさま部屋の明かりを付ける。そして――――――そこにいたのは。「ゆっくりするがよい」ダンに似た――――――ゆっくりだった。「ギャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!・・・・・・ハッ!?・・・ゆ・・・め・・・?」叫びと共に起きた魔理沙は、ベッドの中に自身がいることに気付く。それを知って魔理沙は安堵した。あれは夢だったのだと。「・・・・・・いや、待てよ?」そもそも――――――どこからが夢なのだ?ダン爺のゆっくりを見た時から?それともあの惨劇が?魔理沙には――――――分からなかった。それを判断出来るのは、今これを見ているそこの貴方――――――そして。「――――――テケリ・リ」貴方の後ろにいる――――――ショゴスだけだろう。まんじゅうこわいてのはこういう話なのかな?・・・え?違う?んなこtぁ知ってるよ。あ、そうそう。遅れましたが、この話には残酷な表現が含まれています。私・・・思ったんです。SSで残酷な表現がありますって、よく前書きに書いてはありますよね?でも私にとってそのほとんどは残酷でもなんでもない、ただのお遊びがほとんどです。ちっとも残酷じゃないんですよ・・・・・・ぬる過ぎる。これだって一応私なりに残酷にしてみましたが・・・どうだかねぇ・・・あんまり恐くなかったかな?じゃあ何が恐いのかって?・・・・・・そうですねぇ。私は今は・・・・・・熱い御茶が恐いねぇ。
魔界。魑魅魍魎渦巻く闇の世界。そんな三千世界すら霞む程の数ある魔界の一つで、ある事件が起こった。ある日、一人の魔法使いが一つの魔界に攻め込んだ。暴力によってではなく、自らの鍛え上げた業でその者は攻め込んだのだ。魔界に住む者の大半は魔力を奪われ、動くことすら適わなかった。それでも彼に戦いを挑む者達はいた。その者達は魔界でも屈指の実力者達だった。誰もが魔法使いの死を予想した。だが、結果は違った。逆に挑んだ者達が返り討ちに遭ったのだ。圧倒的だった。皆、なす術すらなくバタバタと倒れていった。出来たのは少しばかり、かの魔法使いを消耗させただけ。それだけだった。その者は真っ直ぐ進んだ。この世界の創造主、魔界神の下へと。その者の名はダン・ヴァルドー。最強と呼ばれる外道の魔法使いの一人だった。ダンはただただ歩き続けた。この世界でもっとも強い力を発する場所いや、者の所へ。そのものと会うのが、今回の彼の目的だった。生命創造という業を、世界の創造という規格外の力を手にせんが為に。そして彼はとうとう辿り着いた。魔界神の下に。「ようこそ我が魔界へ。私は神綺。この世界の創造主よ。歓迎するわ――――――薄汚い俗物」魔界神、神綺。この世界の創造主にして支配者である神。彼女は天空に座し、君臨し、ダンを見下ろし、そして見下す。その表情が語るのは怒り。それだけだった。純粋な憤怒は覇気となって魔界を揺らす。その力はまさに超越者のものだった。「ダン・ヴァルドー。ただの魔法使いだ」魔法使いはそんな神綺を見上げる。彼は地に佇み、冷笑し、神綺を見上げ、そして見下す。その表情が語るのは挑発。それだけだった。傲岸不遜にその場に居座る彼は、神綺の覇気を受け流し構える。その様はまさに侵略者のものだった。「そう、その魔法使いを名乗る塵が一体何の用があって私の魔界を攻めたのかしら? あまつさえ、私の可愛い子達へのあの仕打ち――――――覚悟は出来ているだろうな?」「可愛い子達?・・・ああ、あの木偶のことか」「――――――なんだと?」神綺の顔から怒りの表情が消える。消えたその怒りは覇気となり、また世界が震撼する。表情が無くなった神綺の顔にはゾッとするものが存在していた。普段の彼女を知る者が見たら皆こう言うだろう。神綺とは思えないほどに、冷た過ぎる顔だと。そんな彼女の顔を見てもダンはまったく動じなかった。ダンは神綺の問いに答える。「言葉通りの意味だ。木偶、そのままの意味だよ。 私に挑んで来たが、なんのことはない。弱かったよ。まったく、話にならなかったな」「訂正しろ。私の子供達を侮辱することは――――――許さん」「子供・・・か。なら教育が悪かったのかな?なるほど、それは哀れだ。悲し過ぎてあくびが出る」「訂正しろと言っている――――――無残な最後がお望みかしら?」「そうだな、訂正させてもらう。――――――お前に創られたのは実に哀れだ。 創造物には創造した者の実力が現れるからな。奴等が弱いのはお前の所為だ――――――魔界神」「・・・・・・・・・くぅ」ダン言葉を発する度に、神綺は苛立ちを募らせる。挑発なのは分かっている。分かっているが・・・腹を立てずにはいられなかった。自身の子供達を侮辱されたのだ、当然だろう。だがダンの次の言葉は、神綺のその怒りを一瞬忘れさせた。「だが――――――それでもお前はあの者達に愛されているのだな」「・・・・・・なに、を?」予想外の言葉に神綺の思考は若干混乱する。だが、次の言葉でその混乱は治まる。「私に敗れた者達はなんと言ったと思う?「神綺様には手を出さないでくれ」そう嘆願してきたのだよ」「ッ!?・・・・・・なんですって?」怒りという思考へと。「みっともなく涙を流し懇願した者もいた。 情けなく這い蹲ってもまだ邪魔をしようとした者もいた。 皆、お前のことを大事に想っていたぞ?お前を傷付ける訳にはいかないと皆必死だったよ」「みん、な」その言葉を聞いて神綺は、皆がどれだけ自分を想っていてくれたのか分かる。自分の為に、頑張って戦ったのがよく分かる。此処は彼女の創った魔界だ。ある程度なら、全体を把握出来る。だから、ダンの言葉が真実であることも分かったのだ。「ああ、そうだ。感動的だったよ。思わず涙が出たよ。退屈過ぎてあくびが出たついでにな」「・・・貴様ぁ」だからこそ神綺は怒る。自分の為に戦った子達を侮辱するこの魔法使い。この目の前の下種が許せなかった、許せるはずがなかった。そんな神綺に、ダンは最後の挑発を始める。「そうそう、最後に立ちはだかったのは確か・・・夢子、とかいったか?」「夢子ちゃんになにをッ!?」神綺は夢子の名前を聞いて動揺する。ダンにはその動揺から、夢子が神綺のお気に入りである事を察する。「うん?お前のお気に入りだったか?あの者は面白かったよ。 今までの奴等のやったことを全てやってな。それで最後にあいつはなんと言ったと思う? あいつはこう言ったんだよ。「私を好きにしてくれていいから神綺様には、お母さんには手を出さないで」だと。 だから、ああしてやったよ。動けなくして、私がお前の所へ行く様を見せ付けてやった。 何度も何度も叫んだよ。「止めてくれ、行かないでくれ」と叫び続けたよ。――――――笑いを堪えるのが大変だったな」火薬庫に火が投げ入れられた。「キサマァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!!」神綺が叫ぶと同時に三対六枚の黒き羽が現れる。我慢の限界、堪忍袋は弾け飛び、魔界全土が怒りに震える。その怒りの震えは、神綺の怒りそのものを表していた。「ただでは殺さんッ!絶望をッ!貴様の魂を絶望で染め上げてやるッ!」「来るがいい魔界の神よ。我が魔道の業で、貴様を降してくれるわッ!」天空が輝く。次の瞬間、ダンに向かい雷の雨が降り注ぐ。「鋼よッ!」ダンのその掛け声と共に、鋼の柱が大地から無数に現れる。雷の雨は標的をダンから鋼の柱に変えて柱を穿つ。雷はダンに当たることなく、全て鋼の柱に命中してしまう。「大地よッ!喰らえッ!」神綺の言霊に従い、ダンの足元がパックリと割れる。ダンはすぐさま飛行し回避。ダンはその穴を見る。その穴には、牙があった。無数の牙が脈動して動いていた。まるでそれは不気味な生物の口内そのものだった。「逃がすなッ!」神綺の命令を受けて、その大地の怪物がその口を伸ばしてくる。ダンは急上昇してまた回避する。そして自分を喰らおうと追って来た怪物を見る。目の前には、大地から生えた胴の長い虫のような怪物がいた。「さあ、喰らうがいい――――――お前達ッ!」その言葉を受け、大地から無数の怪物が生まれ、辺りを埋め尽くす。醜悪でおぞましい光景がそこにはあった。「ふん、美的センスを疑うな」「そんなの気にしなくていいわ。――――――体が散り散りバラバラに噛み砕かれるんだからねッ!」神の号令により、大地の怪物達はその醜いアギトを広げて魔法使いを喰らわんと進撃する。「ふん、くだらん」ダンは手にした魔杖を振りかざす。「暗き穴よ黒き穴よ。その深遠に我が敵を飲み込め」ダンの周囲に暗黒の穴が多数出現する。するとその穴は自身の周りの怪物達を飲み込み始める。怪物達は土で出来たその体をみるみるうちにその穴に削り喰らわれていった。「ならば、逆に喰らってしまえッ!」神綺の命令を受けた怪物達がその穴を喰らう。だが、飲み込んだその瞬間、怪物はその身の内側から喰らわれ消滅した。気が付けば、怪物の全てがその黒い穴に飲み込まれ消滅していた。ダンは穴を消して神綺を挑発する。「どうした?これで終わりか?」「まぁだよッ!まだ、これからよッ!」神綺は腕を振り上げる。すると、天にあるものが生まれた。海が、生まれたのだ。「飲み込めッ!押し潰せッ!殺し尽くせッ!」その言葉を受けて天に生まれし海が濁流となってダンに襲い掛かる。ダンはすぐさま詠唱を詠う。「万物の罪を焼きし地獄の業火よッ!我が眼前の脅威を焼き尽くせッ!―――ゲヘナ―――」ダンのその言葉によって大地にあるものが創られた。火の海が、創られたのだ。二つの海がぶつかり合う。天の海は地獄の業火を飲み込んだ。火の海は大海の荒波を焼き尽くす。そしするうちに二つの海は対消滅した。「終わりだッ!」「なんだとッ!?」ダンは神綺のその声を聞き振り向く。すると目の前には軽く万を超える光の光弾、光線が迫っていた。「ぬうッ!ヌオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!」光に飲み込まれ、ダンは姿を消した。「・・・・・・残念だったわね。確かにその力は認めるわ。でも駄目よ。 唯人が私に、この魔界神である神綺に勝てるはずがないのよ。 身の程を知りなさい。――――――屑が」神綺はそう言い捨ててその場を去ろうとする。夢子達がどうなったのかすぐに確認をしなければならなかった。生きているのは分かる。だがどのような状態でかは分からなかった。皆の下に行こうとした――――――その時だった。「・・・・・・ふふふふふふ、ふはははははははは」哄笑が――――――響き渡る。「ッ!?まさかッ!」神綺はその声を聞き急ぎ振り返る。そこには、愉悦をありったけ顔に浮かび上がらせた魔法使いが不敵に笑っていた。「ふははははははッ!ハハハハハハハッ!ハァァァハハハハハハハハッ!――――――素晴しいぞッ!」「ッ!?」ダンのその圧倒的に狂気的な気迫に、神綺は思わず身震いする。そんな魔界神に魔法使いは更に彼女を称える言葉を送る。狂気の笑顔を、満面に浮かべて。「少し訂正をさせてもらおう魔界神よ。お前のその力は実に素晴しいッ!ああ、最高だよッ! まさにその力は神そのものだッ!それも相当なものだッ! 今まで私が相手をしてきた神の中でも、最高クラスの力を持っているよッ!」ダンの狂気が神綺に襲い掛かる。神綺はその狂気に背筋をゾッとさせ堪らずに自身の腕で体を抱き締める。恐ろしかったのだ。目の前のこの男が。あまりにも不気味な眼光を発するこの男が、怖くて堪らなかった。「ああ、そうだ。だからこそ私は――――――お前を倒したいッ! 私の業でッ!力でッ!全てでッ!全力をもって倒し、お前を超えたいッ! そしてお前の力を、我が物としてくれるわッ!」魔法使いから恐ろしい魔力の圧力が解き放たれる。それはまさに嵐そのものだった。「さあ行くぞ神綺ッ!宣言しよう。私はお前を打倒し、超えてみせるとッ!」「――――――フザケルナァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!!」神綺は先ほどと同じように光弾の軍勢を進軍させる。違うのはその量だった。先ほど万だったその量は億を超え、兆を超えていた。ダンは右手で空中に五芒星を描き、そして唱える。「―――エルダーサイン―――」中心に燃える柱をもった五芒星の魔方陣が神綺の光の軍勢を防ぎ、そして消滅させる。エルダーサイン。外なる神々とその眷属に対抗する為の守護の印。神綺の光軍はこれによって防がれたのだ。「先の攻撃はそれで防いだのかッ!?」「その通りだッ!そして、次はお前が防ぐ番だッ!」ダンは魔杖に自らの猛り狂ったの魔力を注ぐ。すると魔杖から巨大な黒き魔力の刃が現れ構築される。その全長は――――――推定一キロメートルを超えていた。「何なの?それは一体――――――何なのよッ!?そんなものがどうしてッ!?」「これが歩み続けた私の力だ。――――――受け取れぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッ!」ダンは掲げた黒き刃の塔を、神綺に向かい振り下ろす。神綺は全ての力を魔方陣の防御に回し展開し、その刃を受け止める。「ハァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!!」「クゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥアアアアアアアアアアアッ!!!!」二人は自らの全てをぶつけた。負けてなるかという意地と意地のぶつけ合い。神綺はこんな奴に倒されてなるかという想いを。ダンはこいつを倒し超えてみせるという想いを。自らの全身全霊を、自らの全存在をぶつけた。神綺は苦しんだ。この男がここまで出来るとは思わなかった。神綺はそう思いダンを見て――――――驚愕する。全身から血が滲み出ていたのだ。魔力の行使に体を酷使しているのは明白だった。だがそれ以上に驚いたのは――――――彼が笑っていたことだ。体がそこまでボロボロに傷付いているのに何故笑うのか、神綺には分からなかった。だがそれは、ダンのその狂気的な笑みから伝わってきた。あと少しだッ!あと少しだあと少しだあと少しだあと少しだあと少しだあと少しだあと少しだッ!あと少しでこいつを倒すことが出来るッ!もう少しだッ!もう少しでもう少しでもう少しでもう少しでもう少しでもう少しでもう少しでッ!もう少しでこいつを超えることが出来るッ!必ず、必ずお前を打倒してみせるッ!お前を超えてみせるぞッ!「神綺ィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィッ!!!!」「く・・・来るなァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!!」神綺はその狂気を浴びて、堪らず刃を受け流す。受け流された刃が魔界の大地に突き刺さる。爆発と共に、大地が砕けていく。目に見える先までの大地全てが隆起して砕け、混沌とした光景を造りだす。その光景に、神綺は唖然とするしかなかった。「あれが・・・あんなものが私に、振り下ろされようとしていたの?」もしこれを自身の身に受けたら。そう考えただけで神綺の体が恐怖を支配する。もし受け流さなかったら自分がこうなっていた。そう思っただけで全身が震えた。次の瞬間、神綺はハッとする。「あいつはッ!?」そう思い神綺はダンの姿を探す。「ハァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!!」「ッ!」神綺はその声の方を急ぎ見る。「我は破壊獣ッ!全てを砕く権化也ッ!我が魂よ燃え上がれッ! 燃やせ燃やせ燃やせ燃やせ燃やせ燃やせッ!全てを燃やせッ!」ダンは自らの体に炎を纏っていた。それもただの炎ではない。見たことも聞いたこともない、名状し難い白い炎だった。「我が歩む世界を、汝妨害すること適わずッ! 迷うことなく、虚無へと還るがいいッ!」異界の業火が、全てを燃やす。「紅蓮昇華ッ!フォーマルハウト・ストライクッ!」白き炎の弾丸と化し、ダンは神綺に突撃する。「こ、来ないでぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッ!!!!」神綺は咄嗟に障壁を何千、何万、何億と展開する。ダンは最初の障壁に接近すると、蹴りを突き出しそのまま障壁をぶち破り、突き進む。「ウォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!!!!」障壁はなんの意味もなさずに次々と突破されていく。何千もの壁を破って突き進む。何万もの守りを砕いて向かってくる。何億もの盾を焼き尽くして飛翔してくる。「ありえない・・・こんなッ!こんなことがあって――――――たまるかぁぁぁぁぁぁぁッ!!!!」神綺がそう叫ぶと同時に最後の障壁が破壊され、ダンがあらん限りに叫ぶ。「私の・・・・・・勝ちだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!!」魔界が――――――燃える。「という感じで負けたのよ~」「何で生きてるのよお母さんッ!?」ダンとの最初の戦いをそうあっけらかんと話す母に、思わずアリスは突っ込みを入れる。かつて行われた二人の戦いを神綺から聞いたアリスは突っ込まずにはいられなかったのだ。「いや、目的である私を殺したら本末転倒じゃない?」「手加減一切無しだったように聞こえましたが?」「いえね?「あれくらいで死ぬようだったら用は無い」とか言ったのよ」「は、はあ」相手も相手だ。そこまでやって、よくそんなことが言えたものだ。下手をしたらそれまでの苦労が台無しであるはずなのに。「それに彼も相当ボロボロだったのよね。私と大差無かったわ」「そこまでしますか?」「したのよね~」そんな風に昔を懐かしく語る魔界神であったとさ。めでたしめでたし。何処かで一人の魔法使いが盛大なクシャミをしたのは――――――言うまでもない。最後で台無しにしてやってぜッ!メルツェェェェェェェェルッ!どうも荒井スミスです。戦ってる時の爺さんの様子。きっとオリジナル笑顔(ガン×ソードの方)で駆け抜けて行ったんですよ。書いてる時はデモベのEvilShineを聞いて書いてたんだ。ぶっちゃっけ、フォーマルハウト・ストライクは、アトランティス・ストライクの魔改造なんだ。クトゥグアの加護を受けたライダーキックみたいなものなんだ。そしてこれは当たり前の事ですが。ぶっちゃけダンは今の方が強いです。神綺様も更に強くなってます。そして夢子さんは更に強いです。お母さんより強いです。お母さんを今度はちゃんと守りたいが為に頑張りました。この世界の夢子さんはお母さん思いです。お母さん大好きです。それでは!