今回は作者の俺理論爆発です、苦手な方がいたら注意して下さい
そして多少のツッコミ所はスルーしてやって下さい
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「どういう事よアレは!!!」
ありとあらゆる負の感情を込め、歪んだ表情
その顔を向けられれば相手が夜叉だろうが悪魔だろうが、裸足で逃げ出す程の迫力と威圧感があった。
そのプレシアの先には、一人の男
現在のプレシアの全ての怒りは、ウルキオラに向けられていた。
「おい、少しは音量を下げろ。耳に障る」
「そんな事を言っているんじゃない!! アレはどういう事! どうしてリニスが!! 死んだ筈の私の使い魔がいるの!!
……いいえ、問題はそこじゃない! 問題なのはフェイト!
フェイトが奪われた!! アリシアの次の肉体が奪われたという事実よ!!!」
「……ああ、してやられたな」
そんな事は解かっている、その言葉を表情で表わしながらウルキオラは溜息を吐くが
その態度は、更にプレシアの怒りを増徴させた。
「サーチャーで全て見ていたわよ!! そして聞いていたわよ! 貴方とリニスの会話を!!」
「……ほう?」
興奮が冷める処か、一層苛烈に燃え上がった様にプレシアは語る
もしも、ウルキオラが自分の願いを叶える為の最重要素の一つでなかったら、とっくに感情に任せて
時の庭園の全ての力を持って、殲滅に掛かっていただろう。
そして、そのプレシアの言葉を聞いてウルキオラの目は僅かに動く
その瞳は、どこか興味の色を帯びていた。
「成る程、それで?」
「貴方が今回の騒動の、全ての元凶だと言う事よ!!! あのリニスは昔使い魔の分際でありながら私に意見し!
あの『人形』を擁護した不良品!! だから私は契約破棄して葬ったのよ!!
なのに、なのになのに!! 貴方が余計な事をした所為で、全てがパアよ!!!!」
「……ああ、成る程。そういう見方も出来るか」
だが、憤怒のプレシアと違ってウルキオラは至って冷静、平常そのままだった
そしてそのウルキオラの態度が、更にプレシアの怒りを燃え上がらせた。
「そういう見方?ですって……それしか無いわよ!!! 死んだ筈のリニスが、ああして私の邪魔をする……それが解かっていたから私はリニスを廃棄したというのに……!!!
この落とし前はどうつけてくれるの!!!!?」
あと一歩の所で、あと一歩の所で、自分の願いは叶っていた筈だった。
だが、それは再び自分の手からすり抜けた
自分の過失ではなく、協力者の余計な行動がこの失敗を招いた。
プレシアの怒りは、その臨界点をとっくに超えていた
そしてそのプレシアの更に苛烈な怒りを帯びた言葉を聞いて、ウルキオラは小さく溜息を吐いた
その顔に、怒りはない。
寧ろ、プレシアに対してどこか落胆する様な色すら帯びていた。
「……お前は、もう少し頭の良い人間だと思っていたのだがな……」
なぜ、気付かない?
どうして自分が言っている言葉の意味に気付かない?
それが、ウルキオラが思っていた事だった
そしてその言葉に対して、プレシアは更に顔を怒りで歪めた。
「……どういう意味かしら? 言っておくけど、今の私は下らない冗談に対して穏便に済ませられる自信はないわよ?」
「言葉通りの意味だ。お前の頭脳は優秀の部類に入るものだと思っていたが、どうやら少し過大評価をしていた様だ」
ギラリと、まるで烈火の如く炎すらも帯びていそうなプレシアの視線を受け止めながらも
ウルキオラは真っ向から言葉を繋げる。
「そもそも、お前は何故そう憤っている? 俺があのリニスに余計な真似をしたからか?」
「そうよ! 自分でも分かっているんじゃない!」
「成る程……俺が、『死んだ筈』のリニスに余計な真似をした事がお前が憤っている原因だと?」
「だからそうだと!! さっきから何度も……!!」
だが不意に
プレシアの言葉は止まった。
今、何かに引っ掛った
プレシアは、今まで自分が発していた言葉の「何か」に引っ掛った
自分の言葉を、何度も何度も頭の中で反芻して
そして、気付いた。
……何故、リニスが……
……「死んだ筈」の使い魔が、存在している?……
その瞬間
プレシアの頭の中に、電撃が流れた。
それは電撃的な閃き、閃光が瞬く様な発見
今まで自分というモノを形成し支えて来た脳に、新たな可能性という名の槍が一気に突き穿たれた。
その考えを持ったまま、プレシアはウルキオラを見る
その視線を受け止めて、ウルキオラは再び小さく息を吐いた
「……やっと気付いたか? 存外鈍感だな」
「……今までの言葉を、一旦取り消すわ。どうやら、貴方から少し聞く事が増えたみたいね……」
脳髄が沸騰しそうな程に茹っていたプレシアの頭の中は、今は嘘の様に落ち着きと冷静さを取り戻していた
猛り狂っていた炎が、そのまま絶対零度の冷気によって凍りついた様な、そんな奇妙な感覚
責任の追及は後でも出来る。
だがどうやら、それ以上にウルキオラの話を一刻も早く聞く必要がある。
プレシアはそう判断し
そしてその様子を見て、ウルキオラは漸くプレシアがまともな会話できる状態になった事を確認できた。
「さて、それでは話してやろう……お前にとっての、『もう一つの可能性』についてな」
第壱拾漆番「決戦への序曲」
「『テスタ』セットアップ、結界をお願い」
『ok,my muster』
そこはとある森の中、そこには三人の人影があった
そしてその人影の一つ、白い上着と袴の様な服に身を包んだ女性、リニスは手に持った黄色の宝玉にそう話しかける。
そして次の瞬間、自分達を包み込む様に小さな結界がそこに形成された。
「……さて、これで少しの間はやり過ごせるでしょう。後は安全な場所に逃げ込むまで、目立たず騒がずに行きましょう」
「……うん、そうだね」
「フェイトの方も、まだ目覚める様子はありませんね……プレシアに少し睡眠効果のある薬を使われたみたいですから、
無理には起こさず、今は寝かせておいた方がいいですね」
「うん、分かった」
そう言って、リニスの隣にいるオレンジ色の明るい髪の色の女性
アルフはリニスの言う事に頷いて、傍にある木を支えに抱えていたフェイトをそっと下ろした
そして、改めてリニスを見た。
「……本当、に……本当に、リニスなんだね?」
「はい。本物の、私です」
アルフの問いに、リニスは迷う事無く答えて
その答えを聞いて、アルフの目からは止め処も無く涙が溢れた。
「リニス……リニスー!!!」
次の瞬間、アルフはリニスに抱きついていた
母に甘える娘の様に、アルフは思いっきりリニスの体を抱きしめて、思いっきり涙を流した。
「……さっきも言いましたが、良く今まで頑張りましたねアルフ」
「リニス、リニス!……あ、たし!!あたし!!!」
何から話して良いのか、何を話して良いのか、アルフには分からなかった。
言いたい事は、たくさんあった筈だった
聞きたい事も、たくさんあった筈だった
でも、言葉に出来なかった。
言いたい事が次から次へと溢れてきて、洪水の様に頭から溢れてきて、
アルフの心はグチャグチャになって、
どうすれば良いのか分からず、どう言葉にして良いのか分からず、
言葉が出てきては浮かんで、そして沈んで
どうすれば良いのか分からなかった。
そして、そんなアルフの背中をリニスはそっと撫でた。
「……大丈夫、私はここにいます。そして何処にもいきません……だから、今は安心して泣いて下さい」
「うん、うん……!!」
「アルフ……本当に、強くなりましたね。ビックリしちゃいましたよ、今まで本当に頑張ってきたんですね?」
「うん、うん!!!」
そんな変わらないリニスの優しさが嬉しくて
そんな変わらないリニスの暖かさが嬉しくて
アルフの涙は、ボロボロと留まる事を知らない様に尚一層流れていた。
今まで、ずっと張り詰めていたモノが
リニスが居なくなってから、ずっとアルフの中で張り詰めていたモノが
一気に解き放たれた様な、そんな感覚だった。
「……アルフ、貴方にお礼を言わなくてはなりません。
ずっとずっと、貴方がフェイトを守っていてくれてたんですね……
ずっとずっと、貴方がフェイトを支えていてくれてたんですね……
不甲斐なく消えてしまった私の代わりに、ずっと貴方が頑張って来たんですね……」
「ち、がぅ……リニ、スは、ふがい、っぅなく、なんか……!!」
涙交じりの声のまま、アルフはリニスの言葉を否定しようとするが
そのまま、リニスはアルフの背中を撫でながら
「本当に、本当にありがとうアルフ。貴方が居てくれたから、フェイトを助ける事ができました」
そう言って、精一杯の感謝の気持ちをアルフに伝えて
その言葉を聞いて、アルフは再びリニスの体をより力強く抱き締めた
そしてアルフの涙が止まるまで、アルフの泣き声が止まるまで、リニスはずっとアルフの背中を撫で続けていた。
「……落ち着きましたか?」
「うん。ごめんリニス……みっともない所を見せちゃって」
そう言ってアルフは僅かに顔を赤らめてリニスに謝るが、リニスは特に気にしてはいなかった。
「いえいえ、そんな事はありませんよ? 寧ろ、昔に戻れた様で少し嬉しかったです」
「はは、そうかい」
そう言って、アルフとリニスは同時に微笑んだ
十分に泣いて落ち着きを取り戻したのか、アルフは再びリニスを見つめて
「……それでさ、リニス。聞きたい事があるんだけどさ?」
「私の、現状についてですね?」
リニスがそう言うと、アルフは「ウン」と小さく言って頷いた
そして、二人はフェイトの近くに腰を下ろした。
「……さて、先ほどのアルフの質問ですが……実は私も詳しい事は分からないんです」
「……そうなのかい?」
アルフは意外そうな顔して言い、リニスも頷いた。
「ただ……私はプレシアに破棄された後も、私の意識は存在していたんです。
酷く虚ろで曖昧なままでしたが、それでも私の意識だけは確かにそこに存在していたんです
私は時の庭園の中に、精神だけがずっと存在していた様な状態だったんです」
「……そう、なのかい?」
「恐らくは、プレシアが原因でしょう。プレシアは現在重度の病に冒されています……それ故に、完璧な形で使い魔の契約が破棄できず
微かな状態で、私というモノが残っていたのだと思います」
リニスは説明する
それを聞いて、アルフもどうやら自分の予想が出来る範疇外の事が起きていた事に、驚きを隠せなかった
そして、アルフは再び思い付いた様に質問をした。
「じゃあさ、ウルキオラのお陰でリニスが助かった……ていうのは?」
「それも、詳しい事は私にも分かりません……ただ、あの人は……あの人だけが、私の声に応えてくれたんです」
「リニスの、声?」
「はい」
再びアルフは不思議そうな表情をして、首を傾げる
そして再び、リニスはアルフに順序を立てて説明した。
時の庭園のとある一室で、フェイトの危機を知った自分はずっと声を上げて自分の存在を知らせていた事
その自分の声に誰も気付かず、誰も応えてくれなかった事
そして、その声に唯一ウルキオラが応えてくれた事
そしてそのウルキオラが、自分に不思議な力をくれた事
そしてその結果、自分はプレシアの魔力なしでもこうして存在できる様になった事
その全てを、リニスはアルフに説明した。
「……と、言う感じですかね?」
「う~ん、確かに……分かんない事だらけだねー」
期待はしてなかったが、やはりアルフには理解が出来なかった
とりあえずリニスの言った事を要約すると
・精神だけの状態のリニスに、ウルキオラが気付く
・ウルキオラがリニスに力をくれる
・リニス、自分の内部の世界(?)でウルキオラ(?)と闘う
・そして復活
「……とまあ、こんな感じかい?」
「はい、大体あっています」
「う~ん、やっぱ解かんない事だらけだねー」
そう言って、アルフは再び首を傾げて考える
だがやはり、分からないモノは分からない。
だから、アルフは思った。
今こうして、リニスが居てくれる
自分達の傍に、大切な人が居てくれる
ならば、それで良いじゃないか。
「……という訳で、この話はここら辺で終わりにしとかない?」
「まあ、概ね同意ですね」
そう言って、二人はこの話題に関して一旦打ち切る。
それに、今はそれ以上に優先させる事がある
二人の視線は、未だ目を覚まさないフェイトに向けられる。
「……これから、どうするかだね」
「そうですね」
それは、自分達のこれからだ。
如何に時の庭園を脱したとは言え、まだプレシアの脅威から逃れられた訳ではない
今こうしている内にも、プレシアの追撃の手は伸びているだろう
今はまだ大丈夫とは言え、それも長い時間は続かないだろう
あのプレシアの技術の高さだけは、アルフもリニスも良く知っているからだ。
そして、もしも自分達の居場所を特定されたら……今度は上手くいくかどうかは分からない
先ほどの様な相手の隙を突いた作戦も、今度は通用しないだろう。
それに、今はアルフも万全ではない
さっきの戦闘の影響で、塞ぎかかっていた傷がまた開いてしまった
やはり、安心して休める拠点も必要だ。
「……う~ん、コイツもちょいとメンドイね」
そう言って、アルフは再び考えるが
「いえ、そうでもないかもしれませんよ」
そのアルフの言葉を、リニスは軽く否定した
そしてアルフの視線は思わずリニスに向く。
「どういう事だい?」
「簡単な事です。確かに、プレシアの追撃はそう簡単に逃れられるモノではありません」
そう言って、リニスはアルフの困惑にも似た視線を正面から受け止めて
「それなら例え居場所が分かっていても、プレシアが追撃できない場所に逃げ込めばいいんですよ」
次元航行艦『アースラ』・戦闘訓練室
その部屋に、二人の少年少女がいた
『どうなのはちゃん、ユーノくん、新しいバリアジャケットの調子は?』
「調子は良いですよ。前のバリアジャケットよりも、何て言うか疲れないです」
「ええ、前のヤツに比べたらかなり扱い易いです」
二人は部屋の中を飛んで、時に砲撃を撃ち、時にバインドを撃ち、その調子を確かめる
白と青を基調にしたバリアジャケットに身を包んだ茶髪の少女は、高町なのは
緑と茶を基調にしたバリアジャケットに身を包んだ金髪の少年は、ユーノ・スクライア
二人は、新調されたバリアジャケットの試運転をする為にこの部屋にいた
そして、そんな二人にエイミィからの通信が入る。
『前のヤツよりも、かなり燃費は良くなったからね。少なくとも魔力の負担は大分軽くなった筈だよ
前のヤツは通常モードと強化モードの二つだったけど、今回は強化モードに少し手を加えて全体的に性能は向上してあるからね。
後は二人に渡したデバイスには、クロノ君考案のラウンドシールドのデータも入れておいたから』
「はい、ありがとうございます」
「何から何までありがとうございます」
そして二人はその後少し訓練をした後着地して、バリアジャケットを解いた
「今日は、この位にしておこうか」
「うん、そうだね」
そして二人は訓練を終えて、その部屋から退室する
そしてその足は、クロノの病室へと向かって動き出した。
「そう言えば、今日は新しく応援の人が来てくれるんだっけ?」
「うん、もう来ている頃だと思うよ。多分リンディさんが今頃出向かえていると思うよ」
近況の確認をしつつ、時に世間話を交えながら二人は足を進めて
そうこうしている内に、二人はクロノの病室の前まで来ていた
そして、なのはは病室のドアを数回ノックして
「失礼しまーす」
「失礼します」
ドアを開けて、二人が病室に入った所
「「……へ?」」
二人の、そんな間の抜けた声が同時に響いた
二人の視線の先、そこには半裸のクロノに……そのクロノを挟み込むようにして傍にいる二人の女性
「……あれ、お客さん?」
「アレアレ? 片っぽは女の子だよ? ありゃりゃークロスケも隅におけないねー」
「良いから離れてくれ! 着替えくらい一人で出来る!!」
二人の女性……その内の一人は、どうやらクロノの着替えを手伝っている(?)らしい
クロノは顔を赤くしながら、自分の服に手をかける二人の女性に抗議して
そして、そんな光景を見たなのはとユーノは
「「お邪魔しましたー」」
とりあえず、何も見なかった事にした
二人はそう言って、ゆっくりとドアを閉めて
「おい! ちょっと待てー!!! 助けてくれええええええぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」
病室から、そんなクロノの悲痛な叫びが響いた。
「いやー、何やらお見苦しい所を見せちゃったねー」
クロノの服を脱がせようとしていた、黒髪のショートカットの女性はポリポリと頭を掻いて、笑いながらそう言う。
なのはとユーノは、クロノのベッドを挟んで二人の女性と対面していた
この二人の女性は、どうやら普通の人間ではないらしい
黒髪の上には猫の様な耳がちょこんと突き出ているし、腰から黒い尻尾が出ている
それに、この二人の顔は髪型以外見分けがつかない程の瓜二つ
いわゆる、双子というヤツであろう。
「まあ、それじゃあ自己紹介をしましょう。私はリーゼアリア、クロノの魔法を基礎から教えた師匠って所かしら」
「私はリーゼロッテ。クロスケに体術を仕込んだ師匠よ、クロスケの事なら何でも聞いてねー
あんな事やらこんな事まで、もれなくR15的な話も教えてあげるからー」
「は、はあ」
「それは、どうも」
最初のインパクトが強烈だった為か、なのはとユーノも少々ぎこちなく頷いて言葉を返す
そして、クロノは「コホン」と軽く息を整えて
「……と、まあ色々と破天荒な人達だが……このリーゼは、僕の師匠に当たる人達だ
色々と奇天烈な所もあるが、二人とも宜しく」
クロノが未だ唖然とする二人にそう説明して、そのクロノの言葉を聞いて
なのはとユーノも自己紹介をした
「た、高町なのはです。宜しくお願いします」
「ユーノ・スクライアです、よろしく……クロノ、この人たちはもしかして」
「ああ、見ての通りの普通の人間じゃない。この二人はグレアム提督の使い魔だ」
ユーノの問いを聞いて、クロノは尋ねる。
そしてその答えを聞いて、なのはも尋ねる。
「グレアム提督?」
「ギル・グレアム提督。なのは、君と同じ第97管理外世界の……確か、イギリスという国の出身の魔導師だ」
「え、イギリスの!」
その言葉を聞いて、なのはは驚いた様に声を上げた
そう言えば以前、クロノは自分が魔法に関わった事情を知った時も「グレアム提督と同じパターンか」と言っていた様な気がする。
そして、更にクロノが言葉を続ける
「グレアム提督は僕の父の上官に当たる人で、僕の執務官研修の時の担当官でもあった人なんだ
それで、僕と母さんはグレアム提督とは親交が深い間柄なんだ」
「……じゃあ、今回派遣された助っ人と言うのは?」
「私達の事よ」
ユーノの質問に対して、双子の片割れのリーゼアリアが答える。
「私達が抱える筈だった案件が急に予定外の終結を迎えちゃってね、こっちも予定外に手持ち無沙汰になっちゃって」
「そしたらさ、クロスケが任務でヘマして肋骨をへし折られたなんて話を聞いちゃったもんだからさー
ああ、これは私達が出向くしかないって思っちゃった訳よ」
二人はそう言って、自分達がここに来るまでの経緯を語った
そしてその二人の説明を聞いて、今度は再びクロノが尋ねた。
「……だが、良くグレアム提督が許可したな?」
「そりゃ当たり前よ。ああ見えてお父様はクロスケの事を実の孫みたいに思っているんだからね」
「私達の申し出を聞いて、二つ返事でお父様もOKしてくれたわ。後は本局の方に色々と話をつけて本局の許可を貰ってきて、ここまで来たという訳よ」
「……そうか、後でグレアム提督にはお礼を言わないとな」
そう言って、クロノは申し訳なさそうに、でもどこか嬉しそうな表情で呟いた
言葉にすれば簡単な様に思えるが、その作業と手間も決して簡単な物では無かった筈
そして、そこまでの手間暇を掛けて自分に助力してくれたグレアムに、クロノは感謝の意を抱いていた
そしてそんなクロノの表情を見て、二人はクロノに尋ねる。
「それで、どの程度の相手だった訳クロスケ?」
ロッテが、僅かに視線を鋭くして尋ねる
その顔には、今までのお気楽的な色は消えている
そしてそのロッテの言葉を受け止めて、クロノも答える。
「……強敵だ。単純な戦闘力はSSクラスと見て間違いないと思う」
「SSっ!」
「……冗談、じゃあ無いみたいね」
ロッテは驚愕の声を上げて、アリアもクロノの現状を見据えてそう答える。
クロノはAAA+ランクの高位魔導師だ
そしてそんなクロノのバリアジャケットの防護を突破して、ここまでのダメージを与えられるとすれば
単純に考えてAAAを超えた、Sランクオーバーの攻撃だと言う事だ
そして聞けば、件の魔導師は単体で武装隊を二部隊潰しているという話だ
武装隊は最前線での戦いを潜り抜けていた、言わば戦闘のエキスパートだ
ランク一つや二つ程度の差なら簡単に覆せる程の技術と経験、そして実力を持っている
故にクロノの評価も、決して過大評価ではないだろう。
「多分、後で艦長からもっと正確な戦闘データが渡されると思う。
今は件の魔導師は派手な動きこそは見せていないが、二人共気をつけて……わぷ!!」
しかし、クロノの言葉は不意に途切れた。
なぜなら双子の片割れのリーゼロッテが、そのクロノを抱き締めてその顔を胸に埋めさせていたからだ。
「ああもう、弟子の分際で師匠の心配をするなんざ十年早いのよークロスケー!」
「ちょ!! 分かったから! 分かったから離してくれー!!!」
そう言って、クロノは顔を赤くしながら叫んで
もがいている内に怪我が痛んだのか、呻き声を上げながらそこから解放された。
「ありゃ? ダウンしちゃった」
「ロッテ、調子に乗りすぎ」
「だ、だだ大丈夫クロノくん!」
頭を軽く叩かれて、ロッテは「ぎゃ」と軽く声を上げる。
そしてなのはは心配げな表情をして、クロノの容態を見るが
「……だ、大丈夫。少し大人しくしてれば落ち着く……」
「そう、良かったー」
そして、クロノはベッドに横たわる
横たわったまま、改めてその二人を見る。
(……確かに、助っ人としてはこの二人以上に心強い魔導師なんてそうはいない……)
クロノは、改めてそう考えていた。
リーゼアリアとリーゼロッテは、クロノの師に当たる人物故にその実力も良く知っている
魔法戦闘及び近接格闘において、この二人を上回る人物は本局でもそうはいない。
更にこの二人は、使い魔でありながら来期武装隊の新人教育の担当まで任されている
恐らく、使い魔というカテゴリの中で言えばこの二人は時空管理局でも最強の部類に入るだろう。
(……確かに、現状からすればこの二人の加入は心強い……)
そうクロノが頭の中で意見を纏めていると、不意に病室のドアが開かれた。
「クロノくん、ユーノくん、なのはちゃん、ここに居る!?」
「……エイミィ?」
「どうしたんですか?」
クロノとなのはが不思議そうな表情をしてエイミィに尋ねて、エイミィは切らした息を整えて
「実はね、さっきって言うか今なんだけど……すこーし、予想外な事が起きてさー」
「予想外?」
「一体、どうしたんですか?」
ユーノとクロノが再びエイミィに尋ねて、
「なんかフェイト・テスタロッサとその使い魔が、自ら投降してきたらしいんだよ」
「「「……え?」」」
そこにいるなのは、クロノ、ユーノの三人は、心の底から驚かされた。
「……と言うのが、今回の大まかな内容だ」
「……そう」
時の庭園の玉座の間にて、ウルキオラはその全ての説明を終えていた。
自分がリニスに行った事の、その経緯とその結果について
そしてその全てを話を終えて、そして聞き終えたプレシアは再び何か考え込んだ。
「……一つ尋ねるわ、どうして今まで黙っていたの?」
「今日まで結果が出ていなかったからだ。そしてその結果も俺は予想が出来なかったからだ」
「……そう」
とりあえず、プレシアはその答えを聞いて一先ずの納得をした
そして、その頭の中には目まぐるしい勢いで何かが構築されていった。
……イケる……
……これは、使える……
それは、己の脳に新しく差し込まれた可能性という名の光
それは閃光に目まぐるしく点滅して、自分の脳髄の中を駆け巡る
電撃の様に頭の中に新たな可能性が差し込まれて、自分の中で新しい理論と演算が形成されていく
想像と創造
理論と理屈
演算と計算
経験と体験
希望と可能性
形成されていく
構築されていく
今まで自分を、プレシア・テスタロッサを形造ってきた物の全てが収縮され凝縮されて
ソレを目まぐるしい勢いで組み立てていく。
……確かに、これはいける……
……この「考え」は、使える……
それは、絶望を希望に変える究極の一手
だが
「……ダメ、足りない……!!」
……足りない……
……圧倒的に、絶望的に……
「……時間が、足りない!!」
心の底から口惜しい様に、プレシアは呟く
ここに来て、フェイト達を取り逃した事が響いてくる。
リニスは決して馬鹿ではない
恐らく自分の追撃から逃れるためには、自分が追撃できない場所を逃亡先に選ぶ筈
そう、法と秩序の力で守られた……絶対の安全圏へと逃げる筈
恐らく、そう遅くない内に自分への捜査の手は伸びるだろう
リニス達からの情報を元に、それらからの捜査からの手は絶対にここまで伸びてくるだろう。
時の庭園の居住転移は、一度で莫大な魔力を消費する。
ジュエルシードの魔力も無限ではない……無闇やたらに転移を繰り返せば、あっと言う間にその魔力は枯渇するだろう
そして、いずれ逃げ切れなくなり……追い詰められれば、そこでアウトだ
少なくとも、ジュエルシードは没収される。
そして自分の協力者のウルキオラ
ウルキオラも嘗ては武装隊と抗争し、戦果を上げている。
ウルキオラもあちらに確保されれば、あちらの監視下に下るだろう
それでは、ダメだ
今自分の中で構築されつつあるソレを実行するには、ウルキオラとジュエルシードの存在は必要不可欠だ。
更に、フェイトの今までの虐待もある
それにプロジェクトFATEは、違法魔導技術に認定されている。
更に今回自分がフェイトに行おうとしたモノも、決して知られて良いものではない
自分が管理局の手に落ちれば、恐らく自分はあちらの監視下に下る
少なくともアリシアの蘇生は、夢のまた夢になるだろう。
アリシアの魂の存在の証明……それが出来れば話は別だが、それでは大凡碌な事にはならない。
それは、プレシアの過去の経験から明らかだ
新技術は大凡二つの分類に分けられる
一つは、人々の役に立つ素晴らしい理論として
もう一つは、多くの災厄を招く忌むべき禁術として
死者の魂、そしてその蘇生……これは、後者に入るだろう。
人の願いは、決して純粋なモノだけではない
もしも死者をこの世に再び生き返らせる……そんな技術が広まれば、相当良からぬ事が出来るだろう。
そして、そういう事を実行しようとする者も溢れるだろう
過去の経験で、世の中とそして「人間」の汚さと言うのを嫌という程プレシアは知っている。
そして、そんな状況下で自分がもしアリシアの蘇生を成功させたとしても……決してアリシアは幸せにはなれないだろう。
少なくとも、自分が望む……人間の幸せとは、程遠い人生を歩む事になるだろう
ならば、最初からアリシアの魂の存在は無かったことにした方がマシだ。
だが、それではアリシアは生き返れない。
(……仮にリニスがアリシアの魂の存在を管理局に教えた所で、アリシアを知覚できる人間は恐らくいない……)
現に、自分はそうだった
プレシアは考える。
(……それなら、リニスさえどうにかしてしまえば……いいえ、いっそ隠れ家の一つにアリシアを予め避難さえておけばいい……)
アリシアは、ここにはいない
後はあちらが何と言っても、シラを切れば良い。
居ないから、最初から存在しない
それを実行すればいい。
(……少なくとも、それでアリシアの安全は一先ず確保できる……)
そうだ、落ち着いて考えれば……アリシアは通常の魔導師では知覚できないのだ
ここに設置した全ての装置を取り外して、その上でアリシアを他の隠れ家に避難させればそれでアリシアは安全だ。
ならば、やはり問題は自分の安全
そして、こちらにジュエルシードがある限りあちらは自分達を追ってくる
これは確定事項
ウルキオラ……これは心配するだけ無駄だろう。
だが
「……ダメ、ね……こっちがジュエルシードを持っている限り、少なくともあっちは追い続けてくる」
自分は捕まらない
アリシアの存在を隠し通す
ジュエルシードもウルキオラも、管理局には渡さない
そしてその上で、管理局に自分達の追撃を止めさせる
それで、この一件を終結させる。
「……く! そんな都合の良い方法、ある訳!!!」
ない
そうプレシアが口走ろうとした、その瞬間だった
「…………待って…………」
それは、正に天啓
それは正に、悪魔的な閃きだった。
「……どうした?」
「……待って、話しかけないで……」
自分に話しかけたウルキオラの言葉を切って、プレシアはソレに集中する
……今、私の手札としてあるもの……
構築していく
……今、私が扱えるもの……
形成されていく
……今、私が利用できるもの……
それは形作っていく
……そして、私がしたい事……
乱雑な閃光が、収束されていく
激しい電撃は、鎮静されていく
そして、それらは一つになる。
頭脳という器の中で、技術と理論は新たな可能性という名の結果を形作っていく。
「……不可能、じゃないわね」
追い詰められた魔女は、
その人生において最高の閃きと技術を得た
理論は成った
可能性は掴んだ
後は、自分の運次第
「……少し、時間が必要ね……」
プレシアは改めて現状を確認する。
とにかく、今は時間を稼いで……準備を行う必要がある。
「……考えは纏まったか?」
「ええ、お陰さまで」
迷い無く断言したプレシアの顔に、もはや絶望は無かった
その顔は歪な笑みを浮べて、そしてプレシアは呟いた。
「……少おぉし、乱暴な手段を取る事になりそうね……」
魔女は笑う
魔女は語る
魔女は知っている
魔女だけは知っている
その計画を、魔女だけが知っている
魔女と死神は、新たな可能性を手に入れた
法と秩序は、新たな力を手に入れた
今日のこの出来事は、決戦への序曲
それは、始まり
それは闘いの始まり
そしてそれは、決戦の始まり。
続く
あとがき
ああ、何だかんだで無印編もまとめに入りつつあります……
さて、それでは本編の話をしたいと思います。とりあえずプレシアさんの勝利条件としては
・ 自分が捕まらない事
・ ウルキオラとジュエルシードが管理局の手に渡らない事
・ アリシアの存在を隠し通す事
・ 上記三つを果たした上で、管理局に自分達の追撃を止めさせる事
プレシアさんは、『ヒュードラ』の一件で、「世の中」と「大人」の汚さを知っている為にアリシア(魂)の存在を出来るだけ知らせたくありません
そして、管理局に捕まれば今のプレシアは虐待・ウルキオラの共犯等で、少なくとも管理局の監視下に入ります
それでは、少なくとも今までの様な研究はできません。少なくとも、アリシアの魂の存在を隠すのが難しくなります
それ故にプレシアは管理局に捕まりたくありません……究極的な自分理論です! 解かり難くてスイマセン!!!
さて、管理局サイドはアリアとロッテ参戦です。
実はこの二人の参戦は、大分前から決めていました。自分の今後のプランだと、ここで出して置いて方が後々都合が良いので参戦させました
ちなみに、最近A’sを見ていない方は見直した方が良いかもです
この二人、マジで強いです(汗)
ちなみにウルキオラはプレシアに結局謝っていません、プレシアに謝るウルキオラの構図が想像できなかったので描けませんでした(笑)
段々と物語も収束していきそうです、それでは次回に続きます。
追伸 とある友人達との会話
・お題「リリカルなのはで一番美人だと思うのは?」
作者「リィンフォース(Ⅰ)」
友人1「シグナム」
友人2「フェイト(大人ver)」
友人3「ギン姉」
・ お題「BLEACHで一番美人だと思うのは?」
全員「「「「ハリベル」」」」
余談ですが、友人1~3と作者は幼稚園からの付き合いです。