2010年11月9日
厚生労働省は2012年度の介護保険制度改正で、要介護度が軽い「要支援」の人に対する掃除などの生活援助サービスを保険から除外できる仕組みを設ける方針を固めた。市区町村が判断し、新設する独自サービスに生活援助を組み込めるようにする。これにより、生活援助にかかる費用を減らす狙いがある。
介護保険財源に限りがあるなか、厚労省はより重度の利用者に対する身体介護などを優先する考え。同省案では、保険の対象から外す自治体には、配食や見守りなどに加え、掃除や調理といった生活援助も含めた総合サービスの導入を義務づける。独自サービスの担い手にはNPOやボランティアの活用を検討し、費用を安く抑える。
だが、ホームヘルパーら専門家が生活援助をする介護保険に比べて、質の低下を招く懸念がある。家族側からは「専門家以外に生活援助を任せると、要介護度が悪化してかえって介護費用は増える」と反対する声が出ている。また、新設する独自サービスの対象は自治体が判断するため、住んでいる自治体によって利用できるサービス量が減ったり、サービスを使えなくなったりする可能性もある。
介護保険を利用する要支援者は約80万人で全体の2割。サービスの5%にあたる約4千億円分を利用している。日常生活の支援が必要で、約40万人が訪問介護を利用し、そのうち生活援助は利用回数の9割程度を占めるとみられる。09年度までの3年間の介護費用の伸びは、要介護者の1.16倍に対し、要支援者は1.44倍と急増。生活援助は「家政婦代わりに利用している」という批判もあり、将来的には対象者の縮小も図る。
ただ、担い手不足から、ただちに保険除外する自治体は限られる見通し。すでに独自サービスを実施している自治体も、どこまで生活援助を引き受けるか未知数だ。
同省は年末までに介護保険制度の改正案をまとめ、来年の通常国会に関連法案を出す方針だ。(中村靖三郎)