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独り暮らしの低所得高齢者…NPOが家族的な支援
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金銭管理や保証人引き受け
介護が必要な低所得高齢者の独り暮らしをどう支えるか――。施設不足が深刻な都市部の高齢化対策として、路上生活者を支援する東京都内のNPO法人の活動が注目されている。身内のように寄り添うのが特徴だ。(小山孝、写真も)
「山奥の老人ホームは自由がないのでつらい。知り合いが多いこのあたりで一生暮らしたい」と静かに語るのは、元とび職の杉浦東七さん(67)だ。
独身で長く簡易宿泊所に寝泊まりしてきたが、病気をきっかけに仕事を離れた。2004年から台東区のNPO法人「自立支援センターふるさとの会」の支援を受けながら、同区の古い木造アパートの一室で暮らしている。
ふるさとの会が路上生活者への炊き出しを始めたのは1990年。それ以来、就労支援や生活支援付き住宅の提供などに活動範囲を広げてきた。今はアパートで暮らす生活困窮者651人の日常を支えており、うち400人が60歳以上だ。
杉浦さんの場合、会が金銭管理やアパートの保証人を引き受けたうえ、月に数回、職員が訪問して安否を確認する。酒好きの杉浦さんは、体調を心配する職員らの勧めで週に3度ずつデイサービスにも通っている。
中古冷蔵庫を買い替えたり地デジを申し込んだり、介護保険では認められない支援は同会職員が受け持つ。職員の石田美枝さん(47)は「家族的な支援によって地域生活が続けられています」と説明する。
エアコン故障も対応
介護保険は家族がいることを前提に運営される面を持ち、単身世帯では、介護サービスだけで在宅生活を支えきれないこともある。反面、日常生活への支援を加えれば、手厚い医療や介護が必要な単身者でも自宅で暮らせることもある。
肺気腫を患う元会社員の男性(65)はこの夏、半年ぶりに退院した。入院中に療養型医療施設への転院を勧められたものの、自ら望んで墨田区のアパートへ。歩行が不自由で息切れも激しく、常時、チューブで鼻に酸素を送っている。
ほぼ毎日、訪問看護や介護こそ入るが、滞在時間は短く、エアコンが故障した時などは、支援する同会の職員が対応する。男性は「これだけの生活ができることに感謝したい」と話す。
しかし、これらの支援を受けられる人は限られる。在宅生活の難しい低所得の要介護高齢者には特別養護老人ホームが受け皿に用意されているが、数に制限がある。このため、地方の無届け老人ホームへの入所や病院での長期入院を強いられる人も多い。
東京都内の生活保護受給者ら10人が死亡した昨年の群馬県の無届け老人施設の火災惨事で、都も対策に本腰を入れ、低所得者向け福祉施設「都型ケアハウス」を今年から3年間で2400人分建設する予定だ。
在宅方策官民で模索
国立社会保障・人口問題研究所の推計では、05年に387万世帯だった高齢者の単身世帯は、30年に717万世帯まで増える。地価の高い都市部での増加が目立ち、施設を増やすだけでは対応しきれない。
在宅生活を支える方策は官民で模索が続くが、見えにくい支援でもあり、公費の投入が乏しい。同会では、支援対象者から月1000円の利用料を受け取っているが、採算は取れず、生活保護の扶助の一つに日常生活支援を加えることを提言している。
滝脇憲理事は「日常生活支援に対価が出れば、地域の見守り役という雇用も生まれる。家族介護にも限界が見えており、今のうちに仕組みを作ることが急務では」と指摘している。
◆NPO法人「自立支援センターふるさとの会」 (電)03・3876・8150 http://www.d5.dion.ne.jp/~hurusato/
(2010年11月9日 読売新聞)
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