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【特報 追う】濃霧に悩む「杜の都」

2008.6.4 02:40

 霧といえばロンドンを思い浮かべる人も多いだろうが、このところ仙台でも霧が多発している。街を幻想的な雰囲気に変える霧だが、交通機能をまひさせ、事故を誘発する怖さもある。なぜ仙台で霧の発生が相次いでいるのか、天気のプロに話を聞いてみた。(山口圭介)

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 5月24日、仙台市中心部がスッポリと霧に包まれた。一時は数十メートル先のビルすら見えなくなる濃い霧。街路樹や公園が点在する仙台の街中を歩くと、森の中で森林浴をしているような錯覚に陥るほどだ。

 「杜の都というよりも霧の都ですね」というのは仙台放送の気象予報士、高沢裕美さん。「政令指定都市の中で、仙台は霧の発生回数が断トツの1位なんです」と教えてくれた。

 あまり知られてはいないが、仙台管区気象台では、年間平均20〜30回も霧の発生が観測されている。発生は5月から8月に集中するという

 そもそも霧とは水蒸気を含んだ大気が、露点温度まで低下した際、含まれていた水蒸気が小さな水粒となって空中に浮かんだものを指す。雲と同じ成分だが、地面に接しているものを霧としている。また気象観測では視程が1キロ未満を霧とし、1キロ以上は靄(もや)という。

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 仙台では、今年特に霧の発生回数が多くなると予想されている。

 5月の発生回数は平年だと平均 3.3回だが、今年は実に8回も霧の発生が観測された。

 高沢さんは「今年は寒流の親潮の影響が強くて、宮城県沖の海水温が平年より3、4度低くなっているのが、5月に多発した原因でしょう。海水と上空の風との温度差が大きいと霧が多くなるんです」と説明する。冷たい海水の上に暖かく湿った風が吹き込み、それが海上で冷やされて霧が発生。太平洋側に開けた仙台市街にまで入り込んで、街が霧に包まれるという仕組みだ。

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 ただ霧というのは、調べてみるとなかなかの曲者のようだ。

 「台風や竜巻などの自然災害に比べるとインパクトは小さいが、米国では霧による経済的損失が年間35億ドルに上るとの試算もあるそうだ」と説明するのは、霧の発生メカニズムを研究してきた地球環境研究センター(茨城県つくば市)の山本哲主幹。

 「霧の発生回数はこの 100年で大きく変動しており、人間活動や温暖化などが影響したのか、都市部での発生は大幅に減少している。ただ理由は不明だが、東北の太平洋側の仙台などでは減少していないはずです」と指摘。

 仙台のような都市部で霧が発生した場合は、被害が拡大する傾向にあるという。「大災害に結びつくことは少ないが、交通機関の遅延や欠航をはじめ、交通事故の発生など、薄く広く被害をもたらすのが霧の特徴」と山本主幹。

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 実際、5月中だけでもかなりの被害が出ている。

 3日には宮城県の牡鹿半島沖で、旅客船と交通船が衝突する船舶事故があり、乗客乗員14人が負傷した。現場海域は濃い霧に覆われていたという。

 県内全域に濃霧注意報が出された24日、仙台空港で発着予定だった40便が欠航。20日にも視程が悪く13便が欠航したばかりだった。24日には、仙台東部道路で速度規制も行われた。また第2管区海上保安本部(塩釜)には、霧で位置が分からなくなったプレジャーボートや小型船計4隻から救助要請が相次ぐなど、週末とあって多くの影響が出た。

 仙台では、6月2日夜から3日未明にかけても霧が発生した。

 高沢さんは「仙台での霧のピークはこれから。6月、7月には蒸気霧も出てくる。霧が発生した場合は、交通事故の危険性も高まるので昼間でも車のライトをつけるなど、対策をしっかりしてほしい」と話している。

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【用語解説】霧

 複数の種類があり、仙台で多いのは、暖かく湿った空気が温度の低い地面や海面を通る際、冷やされて生じる「移流霧」。他に放射冷却で温度が下がって発生する「放射霧」、暖かい水面上に冷たい空気が流れ込んで生じる「蒸気霧」、前線に伴ってできる「前線霧」、山の斜面を上がる上昇気流で発生する「上昇霧」などがある。霧が多い都市としては他に北海道釧路市が有名。6、7、8月には月の半分以上で霧が観測される。

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