【10/10/28】鍵の閉め忘れについて
前回の「TV関係」つながりで・・・,例の「ホンマでっか!?TV」 (フジTV系)での私の発言に関して,この場で若干の補足を・・・。
10月20日に放映された当該番組の「芸能人お悩みコーナー」で,和田アキ子さんに「鍵の閉め忘れを何度も確認してますか?」といった質問をしたが,そのことに関して視聴者の方々から「自分はそのようなことをしているので,心配」というコメントが寄せられているようなので・・・。
まず,「鍵の閉め忘れ」を数回確認する程度なら,脳科学的に何の問題もなく,ある性格特性の現れの一つにすぎないことを強調しておきたい。性格特性(personality traits)のBig Five(5大因子)における「神経質性(Neuroticism)」がそれで,遺伝性もあり(40%程度),環境によっても影響を受ける。なので,なんら心配する必要はない。
ただ,「数回」ではなく,数十回とか数百回とかになれば,脳科学的・精神医学的に「強迫神経症」(不安神経症の一種)を疑うことになる--数回であっても,不安感がかなり持続する場合も同様である(脳内機構としては,前頭前野-線条体系とセロトニン系の障害が推定できる)。
強迫神経症は放っておくとうつ病と合併することがあり,うつ病は周知のように自殺や認知症の大きなリスク要因なので,かなり深刻である。
また,脳の急速な老化によって同様の症状--固執傾向--が現れることがある(やはり,前頭前野-線条体系の機能低下が脳内要因)。この症状は認知症の前駆的症状になることがあるので,やはり注意すべきである。
とはいえ,かりに強迫神経症(不安神経症)であっても,薬物療法が効果的で,適切な治療でほぼ完治できる。しかも,その療法でよく使われるSSRI(Selective Serotonin Reuptake Inhibitor;選択的セロトニン再取り込み阻害剤)は抗うつ作用を持つので,うつ病との合併も回避できる。なので,かなり気になる方は精神科医に一度診てもらうことを薦めたい。
ちなみに・・・
「悩み」は,脳の機能や構造と結びついていることが普通で,悩むこと自体が重要な脳機能でもある。そのため,「悩みの根本的解決」には脳科学的なアプローチが不可欠である。ただし,脳レベルではなく心理レベルでのアプローチも有効で,「悩みの解決」において臨床系心理学者(心理療法士)と脳科学者は相補的になり,両者がチームを組むことで根本的な解決法を導ける。