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TPP反対一色 道「影響2.1兆円」試算

2010年11月09日

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TPPへの参加反対を訴える道経済連合会の近藤龍夫会長(中央)と道農協中央会の飛田稔章会長(左)ら=札幌市中央区

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道内米の半分を生産する空知地方。「関税が撤廃されて安い外国米が入ると、高級ブランド米しか生き残れない」と道は試算する=9月、美唄市

 オール北海道で反対――。関税の撤廃を進める環太平洋パートナーシップ協定(TPP)をめぐり、道内では8日、農業団体に加え、経済界や道議会などからも反対の意思表示が相次いだ。道は影響額を2兆円超と試算。「関係国と協議を開始する」という方針が9日にも閣議決定される見通しで、今後の行方に道民の不安が募る。

■道「影響2.1兆円」試算
■3.3万戸 経営不能

 道は10月下旬、TPPに参加した場合、道内の農業や関連産業、地域経済に与える影響総額は2兆1千億円にのぼるという試算を出した。

 コメ、小麦、甜菜(てんさい)、でんぷん、酪農、肉用牛、豚の7品目の農業産出額で計5563億円。内訳は酪農で2536億円、次いでコメ1130億円と算出し、両者あわせて6割超を占める。小麦、甜菜、でんぷん、豚の4品目については「生産が壊滅する」と予測、経営不能となる農家は3万3千戸余としている。

 このほか地域経済へは9859億円、関連産業で5215億円の影響が出ると見込んでいる。

 また、出荷実績ベース(2008年)で道内の食品工業は全体の約37%(国平均は約10%)。14振興局中、9振興局で全体の半分以上を占め、根室、宗谷、留萌の3管内では食品工業が9割超を占める。道農政部では「TPPは市や町の存続にかかわる」と危機感を募らせる。

■札幌で共同会見
 ――農協・財界・消費者 連携

 TPPをめぐっては、道内はほぼ反対一色になっている。道農協中央会の飛田稔章会長と道経済連合会の近藤龍夫会長、道消費者協会の橋本智子会長は8日、札幌市内で共同記者会見を開き、「TPP参加で道内農業は壊滅的な影響を受ける」とし、「オール北海道」で反対すると表明した。道議会もこの日、全会派一致で「TPP反対」の意見書を可決した。

 飛田会長は「お金を出しても外国が食料を売ってくれない時代が来る」と、貿易自由化が進む一方で世界の食料需給が逼迫(ひっぱく)している点を指摘。食料の安定生産につながる農業政策の確立を求めた。

 近藤会長は、農業が道内経済の中核を占めている現状を掲げて「食料基地・北海道に配慮した政策を国に求めたい」と強調。TPP参加に積極的な日本経団連などとの立場の違いを示した。橋本会長も「食料の多くを輸入に頼るのは食の安全性の観点からも懸念が残る」とした。

 道議会は「TPP交渉への参加は行わない」ことと、「あらゆる国際交渉でコメや麦、乳製品など重要品目を関税撤廃の対象から除外する」ことを求める意見書を全会一致で採択した。

 また、政権内からも反対の声が上がった。松木謙公農水政務官は8日夜、札幌での自身のパーティーで「補償を含めてやらないと食料自給率は14%に落ちると言われている。(交渉参加を)やっていこうと思うこと自体、おかしいと思う」と話した。

■生産者 
 ――「外国産に勝てぬ」「対策ないと壊滅」

 米どころの空知地方。水稲、麦などをつくる美唄市大富の須藤孝一さん(50)はTPPについて、「現状では反対。自由貿易になれば国内品種に似た『それなり』のものが安く入ってくる。生産コストが削れない我々は太刀打ちできない」と話す。

 ただ、「世界の自由貿易への流れは止められない」と現状も理解する。その上で「貿易で利益が得られるのだから、一部を食糧生産の補助に使っていいという国民合意が形成されれば……。国際競争に勝つビジョンを国が示さないのが残念」。

 農業王国・十勝。十勝総合振興局の試算では地域経済を含めた産業産出額の総消失額は約5千億円にのぼる。

 約80ヘクタールの農地を耕作する豊頃町の男性(62)は「対策なしでは壊滅的な打撃を受ける」と訴える。小麦二十数ヘクタール、ビートを約10ヘクタールに作付けし、大豆や小豆なども生産。小麦やビートなどは安い外国産に押され、「作る人はいなくなるだろう」と予測する。

 毎年のように政策がころころ変わり、「猫の目農政」と言われていたが、政権交代でまた変わった。男性は「日本の農業をどうするのかという展望がない」と嘆く。

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