ミャンマーで20年ぶりに実施された総選挙は、軍の支配を正当化するための茶番の要素が色濃い。
民主化運動指導者、アウン・サン・スー・チー氏は自宅軟禁中で参加できなかった。軍事政権は外国の選挙監視団やメディアを拒み、干渉を繰り広げた。邦人ジャーナリストが拘束されたのも遺憾だ。軍の御用政党である連邦団結発展党(USDP)の勝利は確実とみられている。
そもそも、1990年の前回選挙でスー・チー氏の率いる国民民主連盟(NLD)が圧勝したのに、軍事政権は認めてこなかった。そして今回の選挙の根拠となった現行憲法は軍の特権的な地位を定めている。
オバマ米大統領や英国のヘイグ外相が「自由でも公正でもない」と批判したのは当然だ。問題はどうしたら統治の中身を変えられるかだ。
年内にも新しい国会が招集され、新政府の発足を経て「民政移管」の形が整う。軍事政権の最高指導者、タン・シュエ国家平和発展評議会(SPDC)議長をはじめ軍人が実権を握り続けるにしても、統治のあり方が違ってくるのは間違いない。
それをミャンマー、ひいてはアジアの安定と発展にどうつなげていくか。焦点となるのは、スー・チー氏ら民主化勢力への対応が変わるか、周辺諸国に難民問題をもたらしている少数民族政策を改めるかだ。タン・シュエ議長の言動からみて楽観はできない。
ただ、総選挙が終わったのを受け軍事政権は13日にもスー・チー氏の自宅軟禁を解除する見通しだ。国際社会はこの機を生かして、民主化勢力や少数民族勢力との国民和解を粘り強く促していく必要があろう。
米欧諸国とは対照的に中国やインド、タイなどアジア近隣諸国は総選挙の正当性を認め、経済を軸にミャンマーとの関係を一層深めていく公算が大きい。特に中国は、マラッカ海峡と並ぶ戦略物資の補給路と位置付け、関係強化を進めつつある。
自由と民主、人権の擁護を掲げる国として、日本は今回の選挙を正当と認めるべきではない。半面、中国の影響力拡大を踏まえ、米欧諸国やインド、タイなどと連携してミャンマーへの働き掛けを強める。そんな戦略的な外交が求められる。
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