2010年11月5日3時4分
2007年に実施された大手スーパー西友(本社・東京都北区)の株式公開買い付け(TOB)をめぐり、西友の社外取締役(当時)がインサイダー取引をしていた疑いがあるとして、証券取引等監視委員会が金融商品取引法違反容疑で強制調査に乗り出したことが分かった。社外取締役側は、小売業世界最大手の米ウォルマート・ストアーズによるTOB公表前に西友株を買い、公表後に売却して1千万円程度の利益を得たという。
社外取締役は、会社の中で不正行為の防止体制をチェックする役割を担っている。内部情報の不正利用が事実だった場合、経済界に与える影響は大きいとみられる。監視委は同法違反容疑での刑事告発を視野に調べを進めている。
証券市場関係者などによると、この元社外取締役は07年、ウォルマートの関連持ち株会社「ワイオミング ホールディング ジーエムビーエイチ」が西友株についてTOBを実施するとの情報を公表日の同年10月22日より前に把握し、家族に伝達。家族が自身の名義で西友株を購入し、TOB公表後に売却した疑いが持たれている。
元社外取締役本人の名義での株取引はなかったが、監視委は元社外取締役が家族と共謀してインサイダー取引をしていた疑いがあると判断。西友側の関係資料を差し押さえるなどの強制調査を始めた。また、元社外取締役と関係のある会社名義でも株が買われた疑いがあるという。
西友の公表資料などによると、ウォルマート側による公開買い付け額は当時の市場価格より6割高い1株140円だった。また、TOB公表によって取引所でも株価が上昇。公表直前に87円だった終値は、公表翌日には約1.3倍の117円となった。元社外取締役側は複数の口座で総額1千万円程度の利益を得たとみられる。