【コラム】出合うべき「相手」に出合った日本
クリル列島の四つの島は、日本が支配する尖閣諸島(中国名:釣魚島)とは異なり、ロシアが支配している。日本は北方領土に関しては「うるさく」、尖閣諸島に関しては「静かに」との原則に従って対応してきた。相手が支配する領土は紛争地域とし、自国が支配する領土は既成事実に仕立てるという戦術だ。独島の場合、韓国を巧妙に刺激することを通じ、韓国が自ら騒ぎ立てるよう誘導する戦術で対応してきた。それは、北方領土と独島では事情が異なるとの判断からではない。韓国が、日本の安全保障を担う米国と同盟関係にあるため、安全保障の力学という観点から、紛争の順序を後回しにしているだけだ。
日本がこれらの地域で、一貫して適用している原則がある。「歴史問題は存在しない」という原則だ。簡単に言えば、かつて日本が強さを誇っていた時代に、相手国の意思に反して支配した領土ではない、との主張だ。もちろん、中国とロシアはこれを歴史問題として認識している。中国は尖閣諸島について、「中国が混乱状態にあった19世紀後半、日本が中国の同意なしに占領した」と見ており、一方のロシアは、クリル列島の四つの島について、「ロシアが劣勢だった時代に譲り渡した領土を、第2次世界大戦の勝利によって取り戻した」と認識している。
尖閣諸島やクリル列島を独島と同一視することはできない。しかし、これらの紛争で共通して浮かび上がる問題がある。歴史に対し、日本が意図的に目をそらしているということだ。日本は中国で発生している反日デモを、貧富の格差や青年の失業、政治的な混乱など中国内部の問題が原因と分析している。政治後進国に対するあざけりにも近いとさえ感じる。中国の反日感情が何に起因しているのか、その根源を探る努力は見られない。韓国に対する見方も同じだ。日本が2008年、教科書の指導要領解説書で独島に関する教育を明記したことをきっかけに韓国で反日感情が高まると、「牛肉問題で分裂した国論を統合するためのもの」との分析が相次いだ。折しも世界的な金融危機が始まり、「近いうちに日本に助けを求める国が…」といった、あざけるような新聞のコラムも掲載された。
1日、ロシアの大統領がクリル列島を訪問した。日本が南方で中国との領土紛争に揺れる中、今度は日本列島の北方に火を付けた格好だ。四面楚歌(そか)に陥った日本は、覇権主義の復活だと批判している。競争力を高めてきた中国とロシアが、日本を相手に大国の力を見せつけているとの主張だ。
だが、中国とロシアの覇権主義に負けず劣らず、歴史から目をそらす日本の態度もたちが悪い。尖閣諸島やクリル列島に対する中国とロシアの挑戦が、国民的な反日感情を背負っている点を考えてもそうだ。現在の中国とロシアは、日々の暮らしに精いっぱいで行動を起こせなかった、かつての古い大国ではない。日本が歴史から目をそらせばそらすほど、日本はより大きな挑戦に直面し、北東アジアの安定も揺らぐことになるだろう。日本は、宿命の相手に出合うべくして出合ったのだ。
鮮于鉦(ソンウ・ジョン)東京特派員