中国、日本を犬扱い!「対日制裁」判明、標的は前原 

2010.11.08


中国に対しては強硬姿勢をとる前原外相。中国メディアからは敵視報道が相次ぐが、中国政府は着々と追い落としの準備を進めている!?(AP)【拡大】

 日本固有の領土に、中国とロシアが大攻勢を仕掛けるなか、7日から横浜でAPEC(アジア太平洋経済協力会議)が始まった。中国漁船衝突事件の映像流出で統治能力に疑問符が付き、支持率急落中の菅直人首相は、したたかな中露を相手に毅然とした姿勢を貫けるのか。中露両国の政治・外交戦略に精通する大宅賞ジャーナリスト、加藤昭氏が中国による、驚愕すべき対日工作の全貌をすっぱ抜く。

 中国は、9月の尖閣事件以降、外交部や国防部、公安部、中国科学技術院などの代表が集まって「対日工作会議」を何度も招集している。これまで年2回程度の開催だったことを考えると、まさに異常事態というしかない。私(加藤)は事件直後に続き、旧知の中国政府関係者を直撃した。

 ――会議の雰囲気はどうなのか

 「以前も話したが、まさに『対日制裁会議』という雰囲気だ。人民解放軍の将軍などは10月の会議の冒頭、中国の『水に落ちた犬は打て』ということわざを引用し、『参院選で大敗した菅民主党政権は完全に指導力を失い、崩壊寸前の状態にある。(尖閣諸島を強奪する)絶好のチャンスだ。この機会を逃さず、徹底的に犬を撃つべきだ』と強硬に主張している」

 人民解放軍は保守勢力の牙城であり、ある程度の対日強硬論は想定内だが、日本を「犬」呼ばわりするとは驚くばかりだ。日中両国の「戦略的互恵関係」などは、まったくの絵空事というしかない。

 ――具体的な議題は何か

 「民主党への工作活動だ。中連部(中国対外連絡部=他国への諜報・謀略工作の担当機関)代表から、日本の政治現状について、『中国と友好関係にあった鳩山由紀夫前首相と小沢一郎元代表は事実上失脚した。現在、民主党主流派には松下政経塾出身者が多い。彼らの大半は、親米・反中の立場を取る。非常にまずい状況だ』という分析と、『早急に、松下政経塾出身者への懐柔工作を強化する』という提案が出された」

 松下政経塾出身者といえば、対中強硬派の前原誠司外相を筆頭に、野田佳彦財務相や玄葉光一郎国家戦略相、福山哲朗官房副長官などが、菅政権の中枢を占めている。謀略・策謀渦巻く「三国志」の国が、彼らをターゲットにしても不思議ではない。

 中国による工作活動は、自民党時代にも行われていた。やはり、対中強硬派とされた安倍晋三政権の発足時には、「安倍首相本人ではなく、塩崎恭久官房長官や山本一太参院議員らを狙え」という指令が下りていたという。

 ――工作活動の詳細は

 「工作活動には、ハードパワー(=目に見える外交上の圧力や恫喝など)とソフトパワー(=懐柔や籠絡などの謀略活動)の両面があるが、今回は、ソフトパワーが中心だろう。工作対象の経歴や家庭環境、職歴や人脈はもとより、趣味や道楽、保有資産から女性の好みまで、洗いざらい調べ上げ、そのデータを活用して、工作対象をわが陣営に引き込む。これらの総称をソフトパワー戦略と呼ぶ。ちなみに、菅首相のなら、学生時代から最近のものまで、未公表の知られざるデータが山ほどある」

 ≪1972年9月、田中角栄首相が日中国交回復のため、北京・釣魚台迎賓館に入った際、家族しか知らない田中氏の好物だったアンパンが用意してあり、翌朝の朝食のみそ汁には、故郷・新潟のみそが使われていた。『あなたのことは、すべて知っていますよ』という暗黙のメッセージ。情報入手も難しい当時の日中関係を踏まえれば、中国外交の神髄を示す逸話といえる≫

 ――女性スキャンダルも使うのか

 「工作対象者の醜聞を握ることは、女性問題であれ、金銭問題であれ、すべて国益につながると考えている。女性関係でいえば、対象者の妻や女性秘書、親しい女性官僚、関連企業の女性担当者まで徹底的に調べ尽くす。『女性に弱い』となれば、時には女性工作員を使い、ハニートラップを仕掛けることもある」

 ――菅政権のターゲットは誰か

 「最大のターゲットは前原外相だ。彼は、事あるごとに中国の軍備(増強)政策を批判してきた。親米派であるうえ、親台派でもある。これまで、台湾独立派の関係者と何度も食事をしていることを確認している。前原外相については、どんな小さな情報も収集している。最重要の工作対象者といえる」

 ――中国外務省は「(前原外相は)中日間の諸悪の根源、即刻罷免せよ!」という過激な声明を出している。ソフトパワー戦略と矛盾しないか

 「先ほど説明したが、工作活動にはハードとソフトの両面がある。前原外相に対しては、まず、外交的に強烈な圧力を加える。そのうえで、ソフトパワーで懐柔・籠絡する両面作戦だ。工作会議でも、この方針は十分検討され、了承された。中国外務省の声明も計算し尽くしたもの。国益を賭けた国際政治の舞台裏では、驚くほどの話ではない」

 ――すでに、前原外相の弱みを握ったのか

 「…詳しいことは明かせない。スキャンダルがなければ作る手もある」

 不気味な予告というしかない。APECでの華やかな首脳外交の裏側で、中国は今後、巧みな謀略工作を仕掛けてくるのか。「戦略なき日本外交」は、まさしく崖っぷちに立たされている。

 【かとう・あきら】1944年、静岡県生まれ。大宅マスコミ塾で学び、「瀬島龍三・シベリアの真実」「『中川一郎怪死事件』18年目の真実」などのスクープを連発。「闇の男 野坂参三の百年」で94年、第25回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞した。

 

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