余命3ヵ月のガン患者が「第4の治療」で生還するまで「混合診療」という障壁、高額の医療費…
「矛盾」と戦って勝った女性患者の記録

2010年10月31日(日)
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 杉本さんはNK細胞と抗ガン剤の混合診療を始めることになったのだが、設備がないので蔵前内科クリニックでは抗ガン剤治療を受けることができない。結局、埼玉県所沢市のクリニックで抗ガン剤治療を受けることになり、5月末から治療を開始した。効果はすぐに顕れた。

「腰のあたりにあったコリコリしたものが日に日に小さくなっていくのが分かりました。1ヵ月後、腫瘍マーカー(CA125)を調べたのですが、併用治療前には一時1554にまで上昇した値が173と一桁も減っていたのです」(杉本さん)

 さらに1ヵ月後には、腫瘍マーカーの値は15.5と正常値にまで下がった。「PET/CT」でも、ガンがきれいに消滅していることが確認された。ガン消滅から3ヵ月近く経ったが、今のところ、杉本さんに再発の予兆は現れていない。杉本さんのガンはきれいに消えたのだ。

 NK細胞療法は末期ガン患者の希望となりえるのだ。杉本さんのケースについて、東京女子医科大学先端生命医科学研究所の有賀淳教授はこう分析する。

「抗ガン剤治療とNK細胞療法を併用して効果が高かったという結果が出ることは不思議ではありません。免疫療法の一つである『がんペプチドワクチン療法』(今年5月に厚生労働省が高度医療として承認)の臨床試験でも、抗ガン剤を一緒に使い効果が出たという話も聞いています。

 ただし、抗ガン剤、NK細胞どちらが効いているのか、ということになると分かりませんし、すべての化学療法との併用で効果が出るとも思えません。どういう種類の抗ガン剤との併用が良いのかなど、検証する必要があるでしょう」

 NK細胞療法のような免疫療法は、外科手術、抗ガン剤、放射線に次ぐ「第4のガン治療」として期待されているが、前述の通り制度的に患者はその治療を選択しにくいのが現状なのだ。

 医療とは患者のためのものだ。そう考えた時、結論は自ずと見えてくる。効果が期待できる免疫療法を速やかに保険適用の治療にすれば、患者の負担は減り、ガン治療の選択肢は広がる。有効な免疫療法について、国の予算で検証し、保険適用の道が開けることに期待したい。

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