余命3ヵ月のガン患者が「第4の治療」で生還するまで「混合診療」という障壁、高額の医療費…
「矛盾」と戦って勝った女性患者の記録

2010年10月31日(日)
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 曽院長が回想する。

「抗ガン剤を使うにはリンパ球CD4が充分にないとダメなのです。しかし、この時の杉本さんはCD4が正常値の半分にまで落ちており、抗ガン剤治療を行うのは危険でした。

 CD4が不足した状態で抗ガン剤を使うと、抗ガン剤で死ななかったガンが、免疫力が落ちているスキをついて一気に全身に転移してしまうからです。

 しかも、抗ガン剤の影響でCD4自体もやられてしまい、数が減って元に戻らなくなってしまいます」

 退院直後の2月頭から始めたNK細胞療法は4月末に1クール12回が終了した。だが、治療の成果を確認するため5月初めに「PET/CT」で検査をしたところ、予想に反してガンは悪化してしまっていた。

「若いのでガンの勢いが非常に強く、全身のリンパだけでなく、脾臓にまで転移していました。こうなるとNK細胞療法だけではガンを退治できません」(曽院長)

 そこで、曽院長はNK細胞療法に加え、抗ガン剤も使うことを杉本さんに勧めた。当初、正常値の半分にまで落ち込んでいた免疫力(CD4の数値)も正常値に回復し、それを維持できていた。

「免疫力が正常に戻った状態で、NK細胞を大量に体内に送り込んでいれば、抗ガン剤を使ってもCD4は減らず、むしろ増えていく。このため抗ガン剤本来の効果が発揮されるのです」(曽院長)

 曽院長はこのタイミングで抗ガン剤を使えば効果はあると確信していた。しかし、杉本さんのショックは大きかった。

「抗ガン剤と聞いた時『私はもうダメなのか』と思いました」

 迷い、動揺したが、「もう他に選択肢はない」と自分に言い聞かせ、抗ガン剤治療を受けることを決意する。

そして、ガンが消えた

NK細胞は手前の遠心分離器を使って分離し培養する。ガン治療だけでなくアトピー、糖尿病治療などでも効果があるという

 抗ガン剤治療は保険が適用されるが、NK細胞療法は自由診療、つまり全額自己負担である。蔵前内科クリニックの場合、1クール12回で240万~360万円もの費用がかかる。

 しかも、日本の医療制度では、保険診療と自由診療の二つを同時に受ける混合診療を選択すると、自由診療分だけでなく保険が適用されるはずの抗ガン剤治療も原則的に全額が患者の自己負担となってしまう。

 杉本さんが大病院で抗ガン剤を勧められた理由の一つには、この混合診療の問題がある。

「今の保険医療において、杉本さんのような病状で使用できる治療法は抗ガン剤しかありません。保険がきかなくなるので医師は自由診療との併用を患者に勧めることができないのです」(曽院長)

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