余命3ヵ月のガン患者が「第4の治療」で生還するまで「混合診療」という障壁、高額の医療費…
「矛盾」と戦って勝った女性患者の記録

2010年10月31日(日)
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 否定的なニュアンスの言葉を総合病院で聞き続けた杉本さんは、「精神的にすごく楽になれた」という。杉本さんは総合病院での手術後に、蔵前内科クリニックで治療を受けることを決めた。

「抗ガン剤には賭けられない」

 杉本さんが受けることを決めたNK細胞療法とは免疫療法の一つで、人間が本来持っている免疫力を回復あるいは増強することでガンに打ち勝つという治療だ。患者から30~50cc程度の血液を採取し、リンパ球の一種であるNK細胞を抽出する。

 これを無菌状態で約2週間増殖させ、再び体内に戻す方法である。培養によって増殖させるNK細胞の数は30億~50億個。健康な人の場合、血液中のNK細胞は5億~10億個なので、最大10倍のNK細胞が注入される計算になる。

「ガンを退治できる最大のポイントは、NK細胞を増やすとCD4と呼ばれるリンパ球が増えることにあります。CD4はガンを倒す司令塔のようなもので、CD4が増えればガンに対する免疫力が向上するのです」(曽院長)

蔵前内科クリニックの曽振武院長。アメリカの病院や中国の大学病院と提携しており、免疫療法の共同研究も行っている

 蔵前内科クリニックは '98 年からNK細胞療法を取り入れており、日本におけるNK細胞療法の草分けだ。

 訪れる患者の多くは他の病院でさじを投げられた進行ガンか末期ガン患者が多い。NK細胞療法だけでなく他の病院で抗ガン剤や放射線治療などを並行して受ける患者も多いが、5年生存率は2割弱あるという。

 日本においては、ガンが発生部位から離れた臓器に転移している末期ガン患者の5年生存率は8.7%なので、蔵前内科クリニックの実績がいかに突出しているかが分かるだろう。

 1月末、杉本さんは総合病院で子宮摘出手術を受けたが、やはりガンは取り切れなかった。

 手術前に担当医からは「ガンが取り切れなかった場合、抗ガン剤治療をしましょう」と簡単な説明はされていたが、手術後改めて抗ガン剤治療を勧められた。しかし、杉本さんには抗ガン剤に対する不安があった。

「抗ガン剤治療で身体がボロボロになった友人が身近にいたからです。自分の子供がまだ小さいのに、身体がどうなるか保証のない抗ガン剤治療に賭けるわけにはいかない、と思いました」

 そんな杉本さんの心配をよそに、担当医は『治療法は抗ガン剤しかない』と言うばかり。

 普通の人なら大病院の医師の勧めをなかなか断れないものだが、杉本さんは、「免疫療法をやってみたい」と医師に告げ、2月初めに総合病院を退院し、NK細胞療法を受け始めた。

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