余命3ヵ月のガン患者が「第4の治療」で生還するまで「混合診療」という障壁、高額の医療費…
「矛盾」と戦って勝った女性患者の記録

2010年10月31日(日)
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PET/CTの断面図。上段が今年5月7日に撮影した画像で下段が8月3日に撮影した画像。上の画像では骨盤内、腹腔大動脈リンパ節、両鼠径部リンパ節にガンが転移(矢印部分)していることが分かる。抗ガン剤治療開始から2ヵ月後(下の画像)には転移したガンが消失している

 杉本さんが訪れたのは、東京・新宿区内にある総合病院だった。検査を終えると、主治医は黙って診察室の裏に入って行った。だがその医師の話し声が筒抜けで、杉本さんは不安が現実となったことを知った。「入院の手配をして」---。

「診察室に戻ってきた先生は、深刻な顔をしていました。コリコリしたものは10cmほどの塊になっていたらしく、『卵巣ガンかもしれない。詳しく検査しましょう』と言われました」(杉本さん)

 精密検査の結果は、やはり卵巣ガンだった。まもなく、腹膜や全身のリンパ節に転移していることが判明した。ガンの進行度は、前述の通りステージⅢc。進行ガンで、余命は3ヵ月だった。

 卵巣ガンは一般的に、ステージⅠ~Ⅱであれば手術で完全に切除できるが、Ⅲ~Ⅳになると手術だけでは完治できないとされている。

インタビューに答える杉本さん。10月末に抗ガン剤治療は終了する

「何を言われているのか分からない感じで、自分がドラマの中にいるようで現実感もありませんでした」(杉本さん)

 主治医は手術で早急にガンを取ることを勧めた。

 しかしその一方、「ガンが膀胱の上の大きな血管の上にベタッと癒着している状態なので、すべては取り切れないかもしれない」と、診察や説明の中で「治る」という一言を口にすることはなかった。

 皮肉なことだが、主治医のあいまいな態度が、結果として杉本さんの命を救うことになる。恐怖心が拭えない杉本さんは、夫が見つけてきた蔵前内科クリニックの門を叩いたのだ。

 この時、曽院長がさも当たり前のことのように言った言葉を記憶している。

「ガンは治せるからね。大丈夫だからね」

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