中国漁船衝突:乗員帰国を「外交勝利」…中国が宣言

2010年9月13日 23時8分 更新:9月14日 0時51分

 沖縄県・尖閣諸島(中国名・釣魚島)付近で海上保安庁の巡視船と中国漁船が衝突して船長が逮捕された事件で、中国の強硬姿勢が際立っている。中国は今月中旬に予定されていた東シナ海ガス田開発の条約交渉を延期。12日未明に戴秉国(たい・へいこく)国務委員(副首相級)が丹羽宇一郎中国大使を呼び出し、漁船と乗組員を直ちに引き渡すよう要求した。丹羽大使への抗議は4回目、未明の呼び出しは極めて異例だ。一方、法律に基づいて処理を進めるとする日本側は同日、漁船の検証と中国人船員14人の参考人聴取を終了。14人は13日に石垣空港からチャーター機で帰国し、漁船も返還された。【野口武則、石原聖、北京・浦松丈二】

 中国外務省の姜瑜(きょう・ゆ)副報道局長は13日午後に談話を発表し、船員14人の帰国について「中国側は日本側と厳しい交渉をし、領土と主権を守る断固とした決意を示した」と中国外交の勝利を宣言。船長についても即時釈放を要求した。

 「無事に帰ることができ、共産党と政府の配慮と祖国人民の関心に感謝しています」。中国国営・新華社通信は13日午後、チャーター機で福建省福州の空港に到着した乗組員、王国華さんの感謝の言葉を伝えた。中国メディアの報道ぶりは「釈放」を中国側が主導したことを印象づけようとしているようだ。

 一方、中国政府は、船員を帰国させるチャーター機運航や、漁船を別の船員に回送させるための事前調整を日本側と進めており、落としどころを探ろうという姿勢もうかがえる。強硬姿勢のアピールには、国内の反日世論への配慮という側面もありそうだ。

 ただ、香港メディアによると、中国福建省アモイで尖閣諸島の領有権を訴える民間団体メンバーは「船長は拘置されたままで、事件は解決していない」と主張している。この団体は尖閣諸島への渡航を希望しているが、中国当局は許可するかどうか決めていないという。逮捕された船長の処遇次第では、緊張がさらにエスカレートする可能性がある。

 ◇大使呼び出し…日本、対抗措置否定

 一方、武正公一副外相は13日の定例会見で、中国側が何回も丹羽大使を呼び出し、しかも12日の呼び出しは午前0時から1時間におよんだ点に対して「遺憾」だと表明した。

 ただ、同時に「わが国としては冷静に対応していく」と強調。程永華駐日大使を深夜に呼び出すような対抗措置を考えているのかという質問には「にわかに大使を呼び出すという対応はない」と否定的な考えを示した。

 海保によると、逮捕された船長の容疑を裏付けるデータは漁船から取得済み。「船長以外の捜査は終わった」として、船員14人の任意捜査終了と同時に漁船を返還した。

 この場合、船員の帰国には漁船を使うのが一般的だが、中国政府は今回、別の船員をチャーター機で来日させて船員14人を空路帰国させた。ある海保幹部は「中国国民の身柄保護に力を尽くしたという姿勢を示すため、航空機で早期帰国させる方法を選んだのかもしれない」とみている。

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