賢者の知恵
2010年10月31日(日)

余命3ヵ月のガン患者が「第4の治療」で生還するまで

「混合診療」という障壁、高額の医療費…
「矛盾」と戦って勝った女性患者の記録

friday
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正面から撮影したPET/CT(註2)画像。抗ガン剤治療を始める前の今年5月7日に撮影した画像(右)と抗ガン剤治療(5月28日から開始)を2ヵ月続けた後、8月3日に撮影した画像(左)。8月3日の画像では、ほぼ全身にあったガン(矢印部分)は完全に消えていることが分かる

 余命3ヵ月の卵巣ガン患者に免疫療法と抗ガン剤治療を併用して行った結果、2ヵ月でガン細胞が消滅した---。

 ガン治療に関する驚くべき報告がなされたのは、8月22日から6日間、75ヵ国、約6000人の医療関係者・研究者が参加した今年の「第14回国際免疫学会議」でのことだ。

 この治療を施されたのは、45歳の女性、杉本由佳さん(仮名)。杉本さんの病状は、ステージⅢcの卵巣ガンで、腹膜やほぼ全身のリンパ節に転移していた。正常値が35以下の腫瘍マーカー(CA125・註1)の値は911を示した。今年1月、子宮、卵巣などの摘出手術を行ったが、リンパ節などに残るガンを完全に取り除くことはできなかった。

 そんな杉本さんを救ったのが、蔵前内科クリニック(東京都台東区)の曽振武(そしん ぶ)院長に勧められた、NK(ナチュラルキラー)細胞を使った免疫療法と抗ガン剤治療の併用だった。

 曽院長は、この免疫療法と抗ガン剤治療を組み合わせたことで、双方の効用を最大限に引き出し、ガン患者を救うことに成功したのだ。再発の可能性を考慮に入れたとしても、曽院長が行った療法は、末期ガン患者の希望をつなぐものとして、学会でも注目されることになった。

 だが、ガンが消えるまでに杉本さんの前に立ちはだかったのは、教科書通りに抗ガン剤治療だけを勧める大病院の慣例と、後述する混合診療という障壁=高額の医療費負担だったのである---。

 杉本さんが身体に異常を感じたのは、1年ほど前のことだった。

「昨年の9月頃だったと思います。腰のあたりにコリッとしたものを感じたのが始まりでした。それは徐々に大きくなっている感じがして、かかりつけの病院に行くことにしたんです」

*註1 腫瘍マーカーとはガン細胞が作る物質のこと。それを目印(マーカー)にしてガンの有無、増大・縮小などを検査する
*註2 体内においてブドウ糖の代謝が活発な部位を明らかにする撮影法。ガン病変が正常細胞に比べてブドウ糖の代謝が盛んである性質を利用している
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