猛暑:生活困窮者を直撃、冷房代減免を 支援団体求める

2010年9月11日 11時35分 更新:9月11日 11時40分

8月、熱中症で死亡した男性(76)が長男と暮らしていたアパート。生活苦で電気代を払っておらず、エアコンもなかった=さいたま市北区で、飼手勇介撮影
8月、熱中症で死亡した男性(76)が長男と暮らしていたアパート。生活苦で電気代を払っておらず、エアコンもなかった=さいたま市北区で、飼手勇介撮影

 記録的猛暑で熱中症による死者や救急搬送が相次いだ今夏。エアコンがなかったり、電気代を節約せざるを得ない低所得者や独居高齢者といった社会的弱者を直撃した。生活困窮者の支援団体は、今後も起きる可能性のある猛暑に備えて、生活保護費に暖房代などを加算する冬季の制度を夏季にも適用することや、低所得世帯への電気代減免措置を近く国に求める。【市川明代】

 東京都内でも暑さが厳しいと言われる板橋区によると、23区内での熱中症による死者136人(8日現在、都監察医務院調べ)のうち、少なくとも14人は区内在住者だった。

 生活困窮者を支援する「板橋生活と健康を守る会」によると、生活保護を受けていた独居女性(83)が8月中旬、自室から遺体で見つかった。7月末に熱中症で死亡したとみられ、同会は「8月上旬、毎回来る都営住宅の相談会に来ないので心配していた。エアコンはつけていなかったのではないか」と話す。

 埼玉県では、生活苦のため電気代を支払っていなかった無職男性(76)が死亡するなど、8日現在で81人の死者が出ている。

 DV(ドメスティックバイオレンス)被害でうつ病になり、生活保護を受けている上尾市の女性(48)は7月上旬、自室で倒れ、ビタミン欠乏症で2週間入院した。エアコンの電気代との兼ね合いで食費を削り、体が弱っていたという。普段の電気代は月2000円弱だが、7月は2週間入院して留守にしたのに3000円を超えた。「8月分の請求が心配。少しでも補助があれば」と訴える。

 生活保護世帯には冬季(11~3月)、寒さの度合いに応じて都道府県ごとに6段階の「冬季加算」が支給される。暖房用の灯油、電気代などがかさむためで、単身世帯の場合、北海道や青森といった寒冷地は最高額の2万2160円、東京都の場合3090円で、寒さが厳しくないと判断される地域は2810円。原油が高騰した07年には、一部自治体で低所得世帯に灯油代5000~1万円が補助されたこともある。

 今夏と同じような猛暑が近い将来も起きる可能性があると予測する専門家もいる。このため、生活困窮者支援団体のNPO法人「自立生活サポートセンター・もやい」は今月15日、夏季の加算制度適用や、低所得層への電気代減免措置などを国に申し入れる。

 もやいの稲葉剛理事長は「生活保護は生きる上でぎりぎりの生活費しか出しておらず、異常気象は想定していない。何らかの支援があって当然だ」と話している。

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